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第496話 奴隷オークション9
しおりを挟む「俺はお前たちの敵じゃない、飼い主でもない──味方だ。この腐った檻の中から、今すぐ俺たちと出よう。なあに手間は取らせねぇよ。直ぐ終わる」
意気揚々と言った俺だが、奴隷たちの反応は薄い。
「私のせいでしょうか、奴隷商の犬でしたから。私が一緒だと信憑性も薄れますでしょう。すいません」
トランプが申し訳なさそうに言う。
「あー、まあ、論より証拠だ。鎖を外せ──」
俺とトランプが手錠と足枷を外し、俺は奴隷紋も消していく。手間は取らせねぇとは言ったが、この人数じゃ数時間単位で時間がかかりそうだな。
「あんた、殺されるぞ……」
獅子族の男の奴隷が、奴隷紋を消した俺に神妙な声で告げてくる。俺の身を心配してくれてる感じだ。
「そんなヘマはやらかさねぇよ。まあ見知らぬ誰かに命を狙われてるのは否定はしねぇが」
何たって俺を殺せば10億だからな。賞金稼ぎ辺りが俺の首を狙ってるだろう。
普通に贅沢して一生遊んで暮らせる額だからな10億って。
「信じられねぇ、奴隷紋も刻まれた時に俺は人生を諦めたんだぜ」
「私なんて舌を噛んで死んでしまおうと何度も考えたわ」
「俺もだ、早く死にたい、早く死にたい。とばかり考えていた。脱走だって奴隷紋があれば意味ないしな」
回復魔法で、奴隷紋は消せるので、怪我を治しながらの一石二鳥でことが運ぶのはラッキーな誤算だ。
「耳が、拷問で斬られた耳がある……」
「舌が……生え……てきた……どういう理屈だ……」
「儂の腕もだ。こんなすげぇ回復魔法何て見たことねぇ。しかもそれを奴隷の儂らに使ってくれるなんて」
耳や舌、手足や、後の残る切り傷を治していくと、奴隷たちの警戒心がみるみる溶けていく。
勿論欠損の無い綺麗な奴隷もいた。
そいつらは奴隷紋だけ消して処置を終える。
「い、いつもの、ど、奴隷商の方は来ないのでしょうか? 一体何故?」
幼い〝猫人族〟の女の子が小さな声で問いかけてきた。
「さっき、追っ払っといたからな。この国の性根の腐った王族と手を組んで軍を引っ張ってくるとしても、まだまだ時間はかかる」
軍、と言う単語が出ると、目に見えてこの幼い少女が恐怖するのが分かる。そりゃ怖いよな、何も戦い方も知らず、平和に生きていたいだけの、小さな女の子に向かって『軍を引っ張ってくるとしても、まだ時間はかかる』何て言っても気休めどころか、恐怖の火に油を注いだようなもんだ。反省、反省。
そんなこんなのやり取りを繰り返すこと数時間。
奴隷たち約100人の解放が完了した。
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