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第495話 奴隷オークション8
しおりを挟む「私も手伝います」
「いいよ。アダマンタイトの錠も壊せないんじゃ、効率が良くなるワケでも無いしな」
「普通の奴隷にアダマンタイトの錠は使われていません。スリアさんが特別だったのです。私でも普通の錠ぐらいなら壊すことができる。お願いします。私にも奴隷の解放を手伝わせてください」
「その身体でか? 意識を保つのもやっとだろう?」
「……っ──それでも私は行かずには要られません。私の罪滅ぼしにはならないでしょうが……」
「はぁ、勝手にしろ。後、少しデコ貸しな」
「で、デコですか!?」
デコを貸すという単語に慣れてないのか、トランプは困惑した表情を見せる。困惑した顔を無視して俺はトランプの額に手を当てボワァと回復魔法を使う。
「──ッ!? 遠かった意識が──」
「ハッキリしたか? 回復魔法だ。自分で傷つけた奴を自分で治す羽目になるとは思わなかったけどな」
ハハッと笑う俺にトランプは──
「貴方は何者ですか?」
そう尋ねて来る。
「知らない方が身の為だ」
それにしても、意外とバレない物だな。
俺普通に手配書と同じ顔で顔出し状態なのに。人質として捕まってたスリアは勿論、トランプや桜が新聞を読まないだけか。
この世界にはテレビも無いんだ。新聞を読む習慣が無い奴は情弱でも何ら不思議は無い。
変装してたらもっとバレなさそうだ。
「スリアと言ったな。あと桜、お前たちには悪いが奴隷解放が終わるまで一緒に待っててもらうぞ。拒否権は無しだ、身の安全上な」
「分かりました。本当にありがとうございます」
「私も了解です!」
「そういや、スリア、お前は奴隷紋は無いのか? あるなら消してやるぞ?」
「私には奴隷紋はありません」
「そうか、ならいい」
「奴隷紋を消せるのですか!?」
「普通はどうかは知らないが、俺の回復魔法なら可能だ。扱い的には呪いとか状態異常になるのかね?」
その問いの返事は誰からも来なかった。代わりと言っては何だが三者ともポカーンと口を空けていた。
*
奴隷は沢山いた。これどれぐらいで終わるかな?
ざっと100人はいる。どれもこれも酷い有り様だ。
檻の前に立つと半分ぐらいは俺を睨み付けてきた。奴隷を買いに来たゴミとでも思われたのだろう。
もう半分は下を向き、うつ向いたままだ。もう全てを諦めてしまったかのように。
日本なら当たり前にある、人権や一定の自由が、この異世界では存在しないんだな。
〝元いた世界〟よりも、良いことも悪いこともある。それがこの異世界なんだな。
〝エルフの国〟でも学んだ筈だったんだがな。
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