摘んで、握って、枯れて。

朱雨

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代償

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「まあ、振られたからってそんな落ち込むなよ。お前はフツメンだからチャンスはあるって」
「田中の言う通りだよ。元気出しなよ、朝倉」


明らかに何かあったかのように帰ってきた朝倉は否定する気にもならず、ぼんやりおにぎりを食べていた。
その様子に心配になった佐藤は朝倉の目の前で手を振って見せる。しかし、反応を見せない。


「こーれはだめだ。まじで振られたわけ?」
「でも朝倉は告白する柄じゃないよなあ」
「……ず……た……」
「何?もう1回言って」
「傷つけた……」


ようやく反応を見せる朝倉だが、まだどこか上の空である。


「南雲さんのこと傷つけちゃったよ」
「うわ。最低じゃん」
「うわああああああああああ! 自分でも分かってるよ!」
「一体何したんだよ」


佐藤は眉間にシワを寄せ、田中は腹を抱えながら朝倉の背中を強く叩き続ける。


「痛ぇよ! ……まぁ、デリカシーの無いことしちゃったな、って」
「へーぇ。やらかすなんて珍しいね」
「確かに。朝倉はそーゆーの上手なのにな」
「傷口を抉らないでくれ……。余裕がなかったんだ……」


そう。余裕がなかった。
正体不明の奇病にかかり不安に思っている中、同じ奇病にかかっている人物との突然の出会い。
落ち着いていられるわけがない。落ち着いていられるほど大人じゃなかったかもしれない。


「南雲は優しいから、お菓子でもあげたら許してくれるよ」
「あー。南雲さんって甘いやつずっと食ってるで有名だよな~」
「どんなの食べてる? 種類分かったらそれ買ってくるわ」
「今CMで新しい味出たってやってるグミだった気がする。ピーチ味かな、あれ」
「ありがと~。明日買ってくるわ」


最後の1口を頬張り、明日の朝にコンビニに寄るという予定を立てた。



「はぁ……」


翌日、朝倉はしっかり南雲にグミを届ける。
南雲は少し驚いた表情を見せる。


「……なんでこれ選んだの?」
「え、あ、いや、佐藤がこれ好きだって教えてくれたから。あ、佐藤って分かるよな? 南雲さんと同じクラスの……」
「流石に分かるよ。ありがとうね。気遣わせちゃってごめん」
「全然だよ。俺こそデリカシー無いこと言っちゃってごめんね」
「大丈夫だよ」


南雲の笑顔はどこか乾いていて、悲しそうであった。
朝倉はその表情から心情を読み取ることはできなかった。


「俺にできることあったら言ってね」
「ありがとう」
「じゃあ、教室戻るね。またね」


朝倉は南雲の前から去ろうとすると、袖口を掴まれる。


「朝倉君。貴方に1つ忠告しておくね」
「うん」


袖口を掴む力が弱まり、南雲の腕は力無く振り下ろされる。そして真剣な表情で口を開く。


「この学校にはあと数名、奇病を患ってしまった生徒がいるの。その人たちをあまり詮索しないであげてほしい」
「他にもいるのか?!」
「いる。いるけどそっとしておいてあげて」
「なんでだよ……。俺だけ何も知らないのかよ……」
「じゃあもう1つ。『処置する=完治』じゃないってこと覚えといてよ」
「お、おう……」


朝倉はまだ南雲の言葉の意味を理解していなかった。
自分のように副作用が残ることや奇病の併発のことだと考えていた。
まだ奇病の怖さを知らないのだ。


「以上だよ。グミありがとうね」
「どういたしまして」
「ばいばい」


朝倉と南雲は別れた。
南雲は悲しそうにも困ったようにも笑って朝倉を送り出した。
そして教室に帰ると、佐藤と田中がニヤニヤしながらこちらを見ている。
朝倉は深く溜め息をして、頭を抱える。


「なんだよお前ら……」
「南雲とは仲直りできたのかよ?」
「そんなんじゃねーって」
「急に南雲のこと気にかけるからてっきりそーゆー関係なのかと思ったよ」
「いや、ワンチャンこれからっしょ?」
「ふぅ~! 俺らの先を越していくんだな!」


朝倉も佐藤も田中も彼女がいない。
3人は色恋沙汰が1つもない高校生活を送っているのだ。


「だからちげーって!」


昼休み、理系クラスの教室は賑やかだった。
その中に3人の声が混じっていた。
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