摘んで、握って、枯れて。

朱雨

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秘密

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「武田、何してんの?」
「いや別に何でもねーよ?」
「何でもねーくせにプールから出てくる奴がいるか」


口調はいつも通りのはずなのに、田中の声はいつもより冷たく、どこか怖いと感じられた。


「武田は朝倉のこと、どのくらい知ってんの?」
「いやいいよ、田中。武田も分かってる。これは色々な意味で緊急事態だったわけで……」
「この前言ってたやつ?」


また核心をつかれる。
花吐き病のことはまだ田中に言えずにいる。
良いタイミングは分からないが、この前や今ではないと朝倉は思っている。
だから今回も深く訊かれたくなかった。


「ああ……」
「……ふーん。なるほどね。まあ、朝倉にも色々あるよな。じゃあ、武田、朝倉のことよろしくな」


そう言って、田中は教室へ帰っていった。


「はぁ……。もうやだよ……」


親友に秘密を話せずにいる罪悪感。
隠したくて隠しているわけではない。
奇病のせいで出来てしまった溝。
いつどうなるか分からない現状。
それらが朝倉を心身ともに攻めてくる。


「田中……」


朝倉は思わず泣きそうになってしまう。
そんな朝倉を見て武田は再び抱え、場所を移した。


「言うタイミングなんて分かるわけない……」
「おう。でも朝倉が言いたい時に言えばいいさ」
「だよな……。武田はさ、誰かに言ったか?」
「いーや。朝倉が初めてだよ」
「だよな」


武田は自身のタオルを朝倉に貸す。どうやらもう1枚持っているらしい。

朝倉はもう1度教室に戻る。
驚いたことに自分の机の上に体育着が乗っていた。
誰のだろうと名前を見ると、佐藤のものだった。
それと、佐藤の字でメモも置いてあった。

《田中がお前のこと心配してるから
    ちゃんと話しなよーん                        愛しの佐藤より♡》

とのことだ。
朝倉はさっさとそれに着替え、武田と途中まで一緒に帰る。
その途中、朝倉は武田に廊下でのことを話す。


「他の奇病患者の匂いで花を吐きそうになったことはないな」
「だよなぁ。でも、特有の香りがしたんだよ」
「女子の香水の匂いもしたわけだから女子なんだろうな。この学校に女子何人いると思ってんだ」


結局何にも解決策を考えることもできず、各自解散した。


「ただいま~」
「おかえり。あら、今日体育あったの?」
「友達と遊んでて濡れたから体育着借りた」
「洗濯しなきゃね。ほら、着替えなさい」
「ほーい」


田中にプールから上がってくる現場を見られてから朝倉は妙に元気がない。ソワソワしてしまう。
今日は金曜日なので明日は学校がない。課外は月曜日からである。


「やっぱ怒ってんのかな……」


朝倉は中学の時には田中と喧嘩はしていたが、こうも落ち着かないのは初めてだ。
誰にだって内緒にしていることはあるし、喋る必要性の有無だってある。
だからこそ、隠し事がバレた時、気まずくなる。
居心地が悪いだけで、別に不思議なことは無い。

着替え終え、リビングに行く。
リビングにはエアコンがつけられていて、涼しかった。汗が引っ込む。


「あれ。まだ食ってないの?」
「そうよ。あんたのこと待ってたわよ」
「そりゃすまんすまん」
「全く……」


朝倉は母にふざけて返事をする。
それから朝倉と朝倉の母は食卓を囲み、テレビを見ながら話す。
この芸能人の人が、今流行ってるやつは、とかテレビ番組の話題にそって話をする。
昼食を食べ終わると、眠くなってきたので昼寝をすることにした。
運が良く、部屋にもエアコンがついているので、部屋に戻る。


「田中と佐藤、今頃何してっかな」


涼しくなってきた部屋はだんだん居心地が良くなってきて、意識を手放さざるを得なかった。
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