摘んで、握って、枯れて。

朱雨

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告白

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ああ、最悪だ。
朝倉はそう思った。


「これって……花……?」


息も上手にできない。
頭も回らない。
花を吐かないようにすることだけに集中する。


「って、そんなことはどうでもいいんだよ! どうすればこれ治まるわけ?!」
「ぇ……?」
「早くしろって! あ、でも喋れないか?」


朝倉は驚く。
正直、期待をしていなかった。
花を吐く友人を前にして、気味悪がるに決まってると決めつけていた。


「み……ず……」
「水? 飲むってこと?」
「たけ……だぁ……」
「武田? 武田が何?」
「プール……」
「……ああ。そういうことね。しっかり掴まっててな、朝倉」


鞄や上着を脱ぎ捨てる。
田中は朝倉を抱き上げ、プールに走って向かう。
走っている揺れで口内に花が溢れてきたが、頑張って抑える。


「着いた……っ。本当に入るぞ?」


朝倉は無言のまま首を縦に振る。
それを確認した田中は朝倉を抱えたままゆっくりと足先からプールに入る。

夜になると、気温が下がり、水が冷たく感じられる。
互いの体温だけが温かいため、縋り付くように強く抱きしめ合う。


「ゲホゲホッ!」
「大丈夫か、朝倉?」
「う……ん……。ふぅ……っ、ふぅ……っ」


まだ朝倉は息苦しそうである。


「言わなかったこと?」
「ん……?」
「この前からの隠し事だよ」


また朝倉は咳き込む。
田中の後ろのワイシャツを握りしめる手がより強く握られる。


「はぁ……はぁ……」
「落ち着いた?」
「うん……」
「で、さっきの答えは?」


田中はまだ動こうとしない。


「水から出してから言う」
「いや、今このままで」
「な、なんでそんな意地悪なことするんだよ……っ」
「違……! そういうわけじゃねーよ」


田中は自分の腕の中で小刻みに震える細い身体を強く抱きしめる。
朝倉はうっ、と小さく声を上げる。


「離したらまた誤魔化されそうで……」


朝倉は腹を括る。
深呼吸をして、田中の首に自分の頬を擦り付けるようにくっつく。


「そうだよ。このこと。ごめん、隠してて。でも、はっきり言って、田中に言うつもりもなかった」
「なん……っ!」
「そりゃそうだろ! 未知すぎて怖いだろ! 気持ち悪いだろ!言ったって信じてもらえるか分かんないし、今までの関係壊れたら嫌だし……、それから……っ!」


朝倉の口は塞がれる。


「大丈夫だって。俺は朝倉のこと信じるよ。俺らの仲だろ?」


朝倉の口元から田中の肩が離れる。
田中に頭を押さえられて、肩に顔が埋もれていたのだ。


「はは……。そうだよな……」
「そうだよ」


暫く2人はプールに入ったまま、抱きしめ合っていた。
その沈黙を破ったのが、田中だった。


「何で水に入らなきゃいけないん?」
「緊急処置的な感じ」
「そっか。じゃあ、俺に言えよ」
「何を?」
「やばい時だよ」
「大丈夫だよ」
「武田がいるか?」


朝倉は黙り込む。


「……まぁ、無理にとは言わないよ。そっちにも事情があんだろ。俺にも頼ってくれよって話」
「ありがとう、田中」


田中はやはり兄気質なところがある。


「水、怖いだろ」
「うん。すごく怖い。でも、田中がいるから」
「ははっ。そうかよ。で、このこと、佐藤には?」
「まだ」
「そっか」
「佐藤にも言わなきゃなぁ。キスするって言ってたし」


朝倉は笑いながら言う。


「俺より佐藤の方がいい?」


田中は朝倉に質問した。
朝倉にはあまりこの意味が分からなかった。


「どっちとか無いけど」
「じゃあ、俺が先でも文句は無いよな?」
「は?」


朝倉の視界が田中でいっぱいになる。
思考が止まる。
朝倉に分かるのは田中の唇は少しだけ乾燥していたということだけ。


「文句は無いんだろ?」
「ありありだわ! 馬鹿! ファーストキスだぞ! 返せ!」
「減るもんじゃねーだろ」
「減るわ! ファーストキスは1回しか無いからな! ばーか!」
「でも返せねーよ」
「野郎のキスは初めてに入らないから。うん」


鼻息を荒くして、朝倉は自分に言い聞かせる。
田中はガキかよ、と笑う。


「へくしゅんっ!」
「上がるかぁ」
「うん。流石に寒いな」
「だから上着脱がせたろ。ズボンとパンツは我慢しろよ。後、靴持ち帰ろうな」
「面倒いなぁ……」


朝倉は田中に陸地に押し上げてもらう。
濡れたワイシャツを脱ぎ、パーカーを着る。

今夜は雲1つ無いため、三日月が綺麗に輝いている。
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