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僕は傷つかないから
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今日のカニちゃんと同じ方角からやってきたタマさん。持ってきたのは色んな種類の生クリーム。お店じゃ見ない物もあるから今買って来たんじゃない。良かった、食べ比べをしようとしてたのは本当なんだ。
生クリームを味わっているカニちゃんの顔を幸せそうに見つめるタマさん。
「辛い物が好きなのに、甘い物を食べてる時の方が幸せそうだよね」
おいしいからか甘いものも好きだという肯定なのか笑顔で見つめ返すカニちゃん。
二人の世界になっては僕に話を振るっていうのを繰り返すカニちゃん。はやく自分たちの家に帰れるように、不自然にならない範囲で食事を早めに終わらせた。
ずっと僕といてくれる人なんていないのかな。
家にいてもつまんないけど、一人でいるとチラチラ見られるか声を掛けられる。
こういう時は散歩がいい。用事や目的地があるっぽく歩いてこよう。
歩いていたら公園で写真を撮るヨコさんを見つけた。写真を撮っては画像を確認するというのを繰り返している。
ちょうど一段落した感じで振り向いて僕に気付いた。
「おお!びっくりした。いつからいたの?」
「今です」
「どこ行くの?」
「いえ。散歩してただけです」
ヨコさんは僕の足から頭まで視線を動かす。
「さすがイケメン。散歩のファッションもオシャレだね」
「いえ。『あの人一人で何してるの?』みたいに見られるのが苦手なんで出かける風にしてるだけです」
「そうなの?時間あるなら写真撮っていい?」
ヨコさんは凄く真面目。画像を細かくチェックしたり、モデルの立場からの意見を聞いたり。
終わったらお茶をご馳走してくれると言うから家に誘った。
ヨコさんが胸の前で両手を振る。
「そんな、休みに約束も無くお邪魔したらご両親困るでしょ」
「めったに帰って来ないので大丈夫です。
それにさっきまでカニちゃんとタマさんがいたんですよ。タコ焼き器でパンケーキ作ったんです。余り物で申し訳ないですけど」
「……じゃあ、お邪魔しちゃおうかな」
パンケーキとコーヒーをテーブルに置くと、ヨコさんの表情が微妙だった。
「すみません。余り物で」
「いや、ぜんぜん。僕もこれよくやるよ。タコ焼き器洗うの面倒だからまとめて作る。
こちらこそゴメンね。モデルしてもらった上にごちそうまでしてもらって」
僕は笑顔で首を振ったけど、じゃあ曇った表情はなんだったんだろう?
「嫌だったら答えなくていいんだけどさ、ご両親はどれくらい帰ってこないの?」
どうしたんだろう急に。
「一人暮らしじゃない家にお邪魔するの好きなんだよ。ここはお父さんの場所なんだなとか、これはお母さんの物なんだなとか、賑やかな生活感があって。
でもここにはそいういうの無いなって。ごめん、変なこと言って」
「両親は本当に必要な時しか帰って来ません。コウちゃんがよく来てくれるけど、コウちゃんの物はキッチンにあるから」
ヨコさんはほっとしたような笑顔になった。
「晃輝さんが来てくれてるんだ」
「今日はパンケーキ作る約束してたのにドタキャンされましたけどね」
「そうなの?」
あ、また心配そうな顔になっちゃった。僕の話はもういいにしよう。
「でも賑やかな家が好きって、なんか自分の家はそうじゃなかったみたいな言い方ですね」
「それ以前の話だね。無いんだよ。施設で育ったから」
どうしよう。謝るのもなんか違うし。
ヨコさんの顔はいつもの明るさに戻ってる。
「15でスタジオに弟子入りしてその時から桜製菓を担当してるからね。実は僕、あの現場では一番の古株だよ」
ドヤ顔の横さんに、僕は両手をテーブルについて頭を下げた。
「そうだったんですか?失礼しました先輩!」
「ウソウソ!嘘じゃないけどそういうのはヤダ!」
そう言うと思った僕は笑顔で頭を上げた。
生クリームを味わっているカニちゃんの顔を幸せそうに見つめるタマさん。
「辛い物が好きなのに、甘い物を食べてる時の方が幸せそうだよね」
おいしいからか甘いものも好きだという肯定なのか笑顔で見つめ返すカニちゃん。
二人の世界になっては僕に話を振るっていうのを繰り返すカニちゃん。はやく自分たちの家に帰れるように、不自然にならない範囲で食事を早めに終わらせた。
ずっと僕といてくれる人なんていないのかな。
家にいてもつまんないけど、一人でいるとチラチラ見られるか声を掛けられる。
こういう時は散歩がいい。用事や目的地があるっぽく歩いてこよう。
歩いていたら公園で写真を撮るヨコさんを見つけた。写真を撮っては画像を確認するというのを繰り返している。
ちょうど一段落した感じで振り向いて僕に気付いた。
「おお!びっくりした。いつからいたの?」
「今です」
「どこ行くの?」
「いえ。散歩してただけです」
ヨコさんは僕の足から頭まで視線を動かす。
「さすがイケメン。散歩のファッションもオシャレだね」
「いえ。『あの人一人で何してるの?』みたいに見られるのが苦手なんで出かける風にしてるだけです」
「そうなの?時間あるなら写真撮っていい?」
ヨコさんは凄く真面目。画像を細かくチェックしたり、モデルの立場からの意見を聞いたり。
終わったらお茶をご馳走してくれると言うから家に誘った。
ヨコさんが胸の前で両手を振る。
「そんな、休みに約束も無くお邪魔したらご両親困るでしょ」
「めったに帰って来ないので大丈夫です。
それにさっきまでカニちゃんとタマさんがいたんですよ。タコ焼き器でパンケーキ作ったんです。余り物で申し訳ないですけど」
「……じゃあ、お邪魔しちゃおうかな」
パンケーキとコーヒーをテーブルに置くと、ヨコさんの表情が微妙だった。
「すみません。余り物で」
「いや、ぜんぜん。僕もこれよくやるよ。タコ焼き器洗うの面倒だからまとめて作る。
こちらこそゴメンね。モデルしてもらった上にごちそうまでしてもらって」
僕は笑顔で首を振ったけど、じゃあ曇った表情はなんだったんだろう?
「嫌だったら答えなくていいんだけどさ、ご両親はどれくらい帰ってこないの?」
どうしたんだろう急に。
「一人暮らしじゃない家にお邪魔するの好きなんだよ。ここはお父さんの場所なんだなとか、これはお母さんの物なんだなとか、賑やかな生活感があって。
でもここにはそいういうの無いなって。ごめん、変なこと言って」
「両親は本当に必要な時しか帰って来ません。コウちゃんがよく来てくれるけど、コウちゃんの物はキッチンにあるから」
ヨコさんはほっとしたような笑顔になった。
「晃輝さんが来てくれてるんだ」
「今日はパンケーキ作る約束してたのにドタキャンされましたけどね」
「そうなの?」
あ、また心配そうな顔になっちゃった。僕の話はもういいにしよう。
「でも賑やかな家が好きって、なんか自分の家はそうじゃなかったみたいな言い方ですね」
「それ以前の話だね。無いんだよ。施設で育ったから」
どうしよう。謝るのもなんか違うし。
ヨコさんの顔はいつもの明るさに戻ってる。
「15でスタジオに弟子入りしてその時から桜製菓を担当してるからね。実は僕、あの現場では一番の古株だよ」
ドヤ顔の横さんに、僕は両手をテーブルについて頭を下げた。
「そうだったんですか?失礼しました先輩!」
「ウソウソ!嘘じゃないけどそういうのはヤダ!」
そう言うと思った僕は笑顔で頭を上げた。
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