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僕は知らないことばかり
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あれから僕たちは新婚夫婦のようでもあり定年後の夫婦のようでもある空気に満たされている。
もちろん今までのような情熱的なやり方も嫌になったわけじゃない。
二日にコウちゃんのお母さんから電話が来て、親戚が集まってるから顔を出せ、今アパートの前にいるけど留守なのどこにいるのって声が聞こえても慌てなかった。
「ちょっと顔出して適当なとこで帰ってくるから」
「うん。いってらっしゃい」
午後に帰ってきたコウちゃんはクリスマスによく見るお菓子の入ったブーツを持っていた。
「どうしたの?」
「クリスマスに余ったから持ってけって言われた。
バラシてくればよかったよ。すれ違う人たちにチラチラ見られた」
「そうなの?
いっそ神社とかに行けば目立たないんじゃない?着物の人に混ざれば真っ赤なブーツも目立たないよ。初詣に持ってってみる?」
そう言った後で何か違和感というか、モヤっとした。
僕の言葉に笑ってたコウちゃんも心配する。
「どうした?」
「うん……今、なにか引っ掛かったような」
「え、ふざけたこと言ったからバチでも当たった?」
「こんな速攻で?」
今度は僕がコウちゃんの言葉に笑って引っ掛かった感覚はどうでもよくなった。
ブーツの中身でお茶をしてから、大晦日からの約束通り姫始めをする。
その間もずっと、コウちゃんから母親と会わない僕への同情とかは感じなかったし、僕にもコウちゃんはお母さんに何を言われたんだろうっていう不安は無かった。
終わって少し眠って起きてから、見上げるって言うのかな?腕枕をしてくれているコウちゃんの顔を見た。
「愚痴りたかったら言ってね。完全に放っておかれるのも所有物だと思われるのも、どっちの方が不幸とか思ってないから」
コウちゃんは少し驚いてから腕枕をしてない右腕で僕の頭を撫でた。
「そうだな。ちょうどいい距離って難しいよな」
言いながら僕の右半分に乗るように抱きしめてくる。
「愚痴りたいことなんて無かったよ。むしろ勉強になった」
「勉強?」
「父さんが反面教師ってやつになってくれたよ。
甘やかしたい頼られたいって気持ち、俺は何十年たっても忘れない」
誓いのように言った後でちょっと声を小さくして付け足した。
「でも『気付けよ!』って時があったらゴメン、ちゃんと言って?」
付け足された言葉こそが最高に頼もしい甘やかしだよって思ったら腕が自然とコウちゃんの背中に回った。
「僕もコウちゃんにかわいいって思ってもらえるワガママを失くさないようにするね」
もちろん今までのような情熱的なやり方も嫌になったわけじゃない。
二日にコウちゃんのお母さんから電話が来て、親戚が集まってるから顔を出せ、今アパートの前にいるけど留守なのどこにいるのって声が聞こえても慌てなかった。
「ちょっと顔出して適当なとこで帰ってくるから」
「うん。いってらっしゃい」
午後に帰ってきたコウちゃんはクリスマスによく見るお菓子の入ったブーツを持っていた。
「どうしたの?」
「クリスマスに余ったから持ってけって言われた。
バラシてくればよかったよ。すれ違う人たちにチラチラ見られた」
「そうなの?
いっそ神社とかに行けば目立たないんじゃない?着物の人に混ざれば真っ赤なブーツも目立たないよ。初詣に持ってってみる?」
そう言った後で何か違和感というか、モヤっとした。
僕の言葉に笑ってたコウちゃんも心配する。
「どうした?」
「うん……今、なにか引っ掛かったような」
「え、ふざけたこと言ったからバチでも当たった?」
「こんな速攻で?」
今度は僕がコウちゃんの言葉に笑って引っ掛かった感覚はどうでもよくなった。
ブーツの中身でお茶をしてから、大晦日からの約束通り姫始めをする。
その間もずっと、コウちゃんから母親と会わない僕への同情とかは感じなかったし、僕にもコウちゃんはお母さんに何を言われたんだろうっていう不安は無かった。
終わって少し眠って起きてから、見上げるって言うのかな?腕枕をしてくれているコウちゃんの顔を見た。
「愚痴りたかったら言ってね。完全に放っておかれるのも所有物だと思われるのも、どっちの方が不幸とか思ってないから」
コウちゃんは少し驚いてから腕枕をしてない右腕で僕の頭を撫でた。
「そうだな。ちょうどいい距離って難しいよな」
言いながら僕の右半分に乗るように抱きしめてくる。
「愚痴りたいことなんて無かったよ。むしろ勉強になった」
「勉強?」
「父さんが反面教師ってやつになってくれたよ。
甘やかしたい頼られたいって気持ち、俺は何十年たっても忘れない」
誓いのように言った後でちょっと声を小さくして付け足した。
「でも『気付けよ!』って時があったらゴメン、ちゃんと言って?」
付け足された言葉こそが最高に頼もしい甘やかしだよって思ったら腕が自然とコウちゃんの背中に回った。
「僕もコウちゃんにかわいいって思ってもらえるワガママを失くさないようにするね」
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