Blissful Kiss

雪原歌乃

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Chapter.4 触れて、側にいて

Act.1-01

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 私と高遠さんの関係は何と言うのだろう、と不意に思う。初めて出逢った日にパフェとコーヒーをご馳走になり、二度目に逢った時は、お酒を飲んでご飯を食べた。しかも、その時も高遠さんが全額出してくれた。私も出すと言っても頑なに拒み、その代わり、筑前煮を作ってもらうのだから、と無理矢理納得させられた。
 高遠さんの住まいに誘われたのは、酔った勢いもあったのだと思う。だから、落ち着いた翌日、メールでそのことを改めて訊ねてみたら、『昨日は悪かった』と返事がきた。でも、君さえ良ければ、ほんとに俺のアパートに来てほしい、とも。
 拒否するつもりは全くなかった。酔っていたとはいえ、約束は約束だ。それに、ほんの少しだけでも、高遠さんがどんな所に住んでいるのか気になっていたのも本心だ。
 私が『いいですよ』と返信をすると、高遠さんからは、『ありがとう』と返ってきた。そして、改めて逢う日と時間を約束し、その日はメールを切り上げた。

 ◆◇◆◇

 高遠さんのアパートへ行く当日となった。その日は前日から妙に落ち着かず、結局ほとんど眠れなかった。
 現在時刻は午前六時。暖かい時期ならとっくに明るくなっているけれど、冬の今はまだ真っ暗。しかも、冬だけあって寒さが半端じゃない。
 日曜日の早朝は家の中はシンと静まり返っている。仕事も学校も休みだから、当然、お父さんもお母さんも弟もまだ起きてくる気配はない。
 私は自らの身体を両腕で抱き締める格好でリビングに入る。まず、室内の電気を点け、ファンヒーターを稼働させる。部屋全体が暖まるまでにはまだ時間がかかる。
 それから私はキッチンスペースに入り、ガステーブルに置かれた大鍋に火をかけた。中には、前日から仕込んでいた筑前煮が入っている。筑前煮はそれなりに手間がかかるから、前日に作った方が楽だし味も良く染みる。改めて蓋を開けて確認すると、我ながら美味しそうに出来たと感心してしまった。
 ちなみに昨日、バイト終わりにスーパーに寄って筑前煮の材料を買ってきた。調味料は家に一通り揃っているものの、メインの材料はないものもあったから、思い付く限りで買い込んだ。
 結構な重さになった。でも、高遠さんが喜んで食べてくれるかもしれないと考えると、そんな重みもさほど苦にはならなかった。
 家に帰ってから軽くご飯を済ませ、いそいそと筑前煮を仕込んでいる私を、家族全員訝しく思っていたらしい。確かに、普通に考えたら私の行動はおかしく映るかもしれない。
 でも、誰も特に深く追求してはこなかった。七緒と佳奈子とお泊まり女子会をよくするから、またそんなところなのだろうと思われたのかもしれない。
 何にしても、あまり過保護じゃないのはありがたい。もちろん、連絡なしに急に外泊することはさすがに認めてもらえないけれど、前もって報告しておけば特に何も言われない。いや、『よそ様にご迷惑はかけないように』という釘はしっかり刺される。
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