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Chapter.5 嫌いにならないで
Act.2-03
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「――私、付き合う気は全くないですけど?」
我ながら非常に冷たい対応だと思った。でも、これぐらい言わないと相手には全く伝わらない気がする。
なのに、相手は全く懲りない。それどころか、「どうせフリーだろ?」となおも迫ってくる。
「あの時のことは謝る。だからあんたも水に流して、な?」
最低だ。本気で悪いと思っているのなら、そもそもこんな汚い手を使ってまで逢おうなどと考えないはず。それとも、私の考え方が変なのか。
ここははっきりさせた方がいい。私は意を決し、おもむろに口を開いた。
「私、フリーじゃないです」
里衣さんと相手が、あからさまにギョッとなった。
私はふたりの反応に構わず続けた。
「私にはもったいないぐらいのとてもいい人です。優しいし大人だし、とても私を大切にしてくれてます。だからあの人以外の男の人とは付き合えません」
自分でも驚くほど堂々と言いきってしまった。でも、ちゃんと告白出来たことで清々しい気分になれた。
「――彼氏、いたんだ……?」
おずおずと訊ねる里衣さんに、私は大きく頷いた。
「ごめん……。黒川ちゃん、男っ気を感じなかったから……」
里衣さんがそう思うのも無理はないな、と思った。現に高遠さんに出逢うまでは、異性と付き合うなんて考えたこともなかったのだから。
「どんな奴?」
反省モードに入った里衣さんとは対照的に、相手はなおも探りを入れてくる。
里衣さんもさすがに、「やめな」と制止してくれたのに、相手は全く聞く耳を持とうとしない。
「俺ばっかり恥をかかされていい気分しねえんだけど? 俺には知る権利ってのがあるんじゃね?」
恥をかかされたとか、知る権利とか、本当に意味が分からない。むしろ、私は騙された立場だというのに。
ただ、もう里衣さんにも相手にも何も言うつもりはなかった。いい加減、この場から解放してほしい。それだけだった。
「――帰っていいですか?」
私が言うと、里衣さんはゆっくりと首を縦に動かす。
「ごめんね、黒川ちゃん……」
謝ってくる里衣さんに、私は辛うじて小さく笑顔を見せた。私の精いっぱいの対応だった。
里衣さんが一度立ち、私の通路を確保してくれた。
でも、帰ろうとする私の手首を相手は強く掴んでくる。あの時と同じだった。
「まさか、あの時いたオッサン?」
しつこいにもほどがある。本当は答えるのもうんざりしていたけれど、ちゃんと言わないと納得してくれなさそうだ。
「そうです」
私は望み通り答え、何とか相手の手を振り払った。そして、再び里衣さんに向き直る。
「すみません、里衣さん。また誘って下さい」
私は頭を軽く下げ、ふたりが残っている個室を離れた。
我ながら非常に冷たい対応だと思った。でも、これぐらい言わないと相手には全く伝わらない気がする。
なのに、相手は全く懲りない。それどころか、「どうせフリーだろ?」となおも迫ってくる。
「あの時のことは謝る。だからあんたも水に流して、な?」
最低だ。本気で悪いと思っているのなら、そもそもこんな汚い手を使ってまで逢おうなどと考えないはず。それとも、私の考え方が変なのか。
ここははっきりさせた方がいい。私は意を決し、おもむろに口を開いた。
「私、フリーじゃないです」
里衣さんと相手が、あからさまにギョッとなった。
私はふたりの反応に構わず続けた。
「私にはもったいないぐらいのとてもいい人です。優しいし大人だし、とても私を大切にしてくれてます。だからあの人以外の男の人とは付き合えません」
自分でも驚くほど堂々と言いきってしまった。でも、ちゃんと告白出来たことで清々しい気分になれた。
「――彼氏、いたんだ……?」
おずおずと訊ねる里衣さんに、私は大きく頷いた。
「ごめん……。黒川ちゃん、男っ気を感じなかったから……」
里衣さんがそう思うのも無理はないな、と思った。現に高遠さんに出逢うまでは、異性と付き合うなんて考えたこともなかったのだから。
「どんな奴?」
反省モードに入った里衣さんとは対照的に、相手はなおも探りを入れてくる。
里衣さんもさすがに、「やめな」と制止してくれたのに、相手は全く聞く耳を持とうとしない。
「俺ばっかり恥をかかされていい気分しねえんだけど? 俺には知る権利ってのがあるんじゃね?」
恥をかかされたとか、知る権利とか、本当に意味が分からない。むしろ、私は騙された立場だというのに。
ただ、もう里衣さんにも相手にも何も言うつもりはなかった。いい加減、この場から解放してほしい。それだけだった。
「――帰っていいですか?」
私が言うと、里衣さんはゆっくりと首を縦に動かす。
「ごめんね、黒川ちゃん……」
謝ってくる里衣さんに、私は辛うじて小さく笑顔を見せた。私の精いっぱいの対応だった。
里衣さんが一度立ち、私の通路を確保してくれた。
でも、帰ろうとする私の手首を相手は強く掴んでくる。あの時と同じだった。
「まさか、あの時いたオッサン?」
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「そうです」
私は望み通り答え、何とか相手の手を振り払った。そして、再び里衣さんに向き直る。
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私は頭を軽く下げ、ふたりが残っている個室を離れた。
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