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Chapter.5 嫌いにならないで
Act.3
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外に出ると、チラチラと空から落ちてくるものが目に飛び込んだ。雪だった。そういえば、今日は夜から雪が降るでしょう、と天気予報で告げていたなと想い出す。
それほど長い時間じゃなかったはずなのに、一気に疲れが出た。仕事をしたあととは違う、とても嫌な感じの疲れ方だった。
私は駅に向かって歩こうとした。でも、何故か足取りが重い。
さっきのことを後悔しているわけじゃない。なのに、この空虚感は何なのか。
不意に脳裏に高遠さんの面影が浮かぶ。いつも私に優しく向けられる笑顔。無邪気で、けれどもたまに淋しそうだったり。
我慢しなくてはならないと思った。高遠さんは疲れているのだから、無駄に心配をさせてはならない。
私は携帯電話をバッグから取り出し、リダイヤル画面を開く。高遠さんの名前にカーソルを合わせ、通話ボタンを押そうとしては躊躇うの繰り返しをする。
――逢いたい。逢いたい逢いたい……
呪文のように心の中で唱え、とうとう通話ボタンを押してしまった。
コール音が鳴る。すぐに切りたい衝動に駆られるも、高遠さんの声が聴きたいという想いが強過ぎて、その場に立ち止まったまま音が途切れるのを待った。
『もしもし?』
携帯の向こうから、待ち望んでいた声が聴こえてきた。
私の中で緊張の糸が切れた。高遠さんの声にまともに応えることが出来ず、代わりに嗚咽が漏れ出た。
『絢、どうした?』
心配そうに訊ねてくる高遠さん。その声がまた優し過ぎて、よけいに胸が締め付けられた。
『今、どこにいるの?』
何かを察してくれたのか、高遠さんが優しく訊いてきた。
私は鼻を啜り、何とか泣くのを抑えた。
「――駅に向かってる、トコです……」
『駅? 帰る途中?』
「――はい……」
『じゃあ、駅に着いたら待ってて? すぐ向かうから』
本当に勘が鋭過ぎる。逢いたい、と言わなかったのに私の想いを汲んでくれた。
でも、やっぱり悪いと思ってしまう。
「大丈夫です……」
つい、強がりを言ってしまった。
そんな私に、高遠さんは、『大丈夫じゃないだろ』と少し強い口調で返してきた。
『泣きながら電話してきたんだからよっぽどのことがあったんだろ?』
「でも……」
『いいから。俺が向かうまで待ってること。いいね?』
そこまで言うと、私の返事も待たずに切られてしまった。
私は携帯を耳から離し、手に持ったまま駅に向かった。逢いたいくせに、大丈夫などと言ってしまったことを少し後悔する。
高遠さんはどんな顔をして私の所へ来てくれるのか。今の私は期待より、不安の方が大きかった。
それほど長い時間じゃなかったはずなのに、一気に疲れが出た。仕事をしたあととは違う、とても嫌な感じの疲れ方だった。
私は駅に向かって歩こうとした。でも、何故か足取りが重い。
さっきのことを後悔しているわけじゃない。なのに、この空虚感は何なのか。
不意に脳裏に高遠さんの面影が浮かぶ。いつも私に優しく向けられる笑顔。無邪気で、けれどもたまに淋しそうだったり。
我慢しなくてはならないと思った。高遠さんは疲れているのだから、無駄に心配をさせてはならない。
私は携帯電話をバッグから取り出し、リダイヤル画面を開く。高遠さんの名前にカーソルを合わせ、通話ボタンを押そうとしては躊躇うの繰り返しをする。
――逢いたい。逢いたい逢いたい……
呪文のように心の中で唱え、とうとう通話ボタンを押してしまった。
コール音が鳴る。すぐに切りたい衝動に駆られるも、高遠さんの声が聴きたいという想いが強過ぎて、その場に立ち止まったまま音が途切れるのを待った。
『もしもし?』
携帯の向こうから、待ち望んでいた声が聴こえてきた。
私の中で緊張の糸が切れた。高遠さんの声にまともに応えることが出来ず、代わりに嗚咽が漏れ出た。
『絢、どうした?』
心配そうに訊ねてくる高遠さん。その声がまた優し過ぎて、よけいに胸が締め付けられた。
『今、どこにいるの?』
何かを察してくれたのか、高遠さんが優しく訊いてきた。
私は鼻を啜り、何とか泣くのを抑えた。
「――駅に向かってる、トコです……」
『駅? 帰る途中?』
「――はい……」
『じゃあ、駅に着いたら待ってて? すぐ向かうから』
本当に勘が鋭過ぎる。逢いたい、と言わなかったのに私の想いを汲んでくれた。
でも、やっぱり悪いと思ってしまう。
「大丈夫です……」
つい、強がりを言ってしまった。
そんな私に、高遠さんは、『大丈夫じゃないだろ』と少し強い口調で返してきた。
『泣きながら電話してきたんだからよっぽどのことがあったんだろ?』
「でも……」
『いいから。俺が向かうまで待ってること。いいね?』
そこまで言うと、私の返事も待たずに切られてしまった。
私は携帯を耳から離し、手に持ったまま駅に向かった。逢いたいくせに、大丈夫などと言ってしまったことを少し後悔する。
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