BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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淫らな青年は一人の観客に向けて己を甘く慰める

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名前すらも知らない。それどころか、会話らしい会話も交わした記憶さえ無い。そんな隣人とこんな関係になってから、もう何年だろうか。
そうぼんやりと考えを巡らせつつ、青年は今夜も隣家に面したカーテンと窓を開けた。
まだ、そこには何も無い。青年側と同じように窓とカーテンが開けられた部屋が見えるのみで、特段変わった物は何も存在していない。
今日はいつもより少し早く準備を整えたから、まだシャワーでも浴びているのだろう。これから始まる爛れた娯楽に期待を寄せつつ推測した青年の考えに答えを示すかのように、眺めている部屋の扉が開き隣人である全裸の青年が現れた。
普通であれば、ここは驚きの反応を表わす場面であろう。そして、裸体を隠すなり、鑑賞している側の青年に向かって抗議を放つなりといった展開があってしかるべき状況であろう。
だが、遅れて自室へと戻った全裸の青年はそれらとは全く違う申し訳なさを伝えるかのような表情を浮かべると慌てて使いかけのバスタオルを一番近くにあったハンガーに吊るしまだ湯に濡れている身体を迷い無く窓辺に置かれたベッドの上に乗せ、たった一人の観客に向かってさらけ出した男根の硬度を高めつつ、見られながらの自慰に耽り始めた。

「ふ、んぅ、あぁ」

真っ赤に充血しぷっくりと尖った左の乳首を指で弄り、早くも腸液が淫らに滲み出している尻穴を右手の人差し指と中指でにちゅにちゅと掻き回しながら、青年が隣家から観客として自分を見ている青年に視線を返しつつ己に快楽を注いでいく。
この異常な関係の始まりとなったあの夜と同じ自慰をその時とは比べ物にもならないくらい過敏に育った自らの肉体に加えながら、青年が触られてもいない男根の体積を更に増し透明な淫蜜の分泌量を引き上げていく。
その実に見応えのある淫靡な光景を独占しながら、青年はこれが狂っていると自覚しつつもその自覚を興奮に塗り潰していく。カーテンが閉じられた自分の部屋に裸体を晒して自らを一生懸命に慰めていた隣家の青年の秘密を夜中に目が覚めふとした気まぐれでカーテンを開け放ったあの日に知った青年は、自分の存在を欲情の材料にして快楽を貪る淫乱を堪能する愉悦に酔いしれる思考から常識をじょじょに排除していき、腰掛けていた椅子から無自覚に腰を浮かせ上体を前に乗り出した体勢へと今日も移行していく。
その移行は、自分を食い入るように観察する青年という情報は、自慰を行う青年を一層火照らせ滾らせるには十分すぎる追加の刺激で。自分を見て愉しんで貰えている事実を把握し全身の感度をより加速させた青年は左の乳首を捏ね回す左手と尻穴を撹拌する右手の勢いを強めつつ、直接の責めが無くとも絶頂に至れる器官に育った男根から精液を迸らせた。

「ふぁっ、あ、んあぁ……っ!」

幾度と無く経験した他の家の人間に悟られないよう声を抑えつつ行う射精の様を一人の観客に捧げながら、青年がベッドの上で膝立ちとなっていた裸体を心地良さげに痙攣させる。腰を前後に情けなく揺らして精液を漏らしている男根を上下左右に踊らせながら、淫らな青年が甘い至福に心から溺れる。
だが、この見世物はまだ終わりではない。観客が期待に染まった瞳をこちらに向けて次の痴態を要求してくれている以上、まだ勝手に終わらせる訳にはいかない。
そんな義務の感情を蕩けた思考に浮かべ、求められるがままに無様な姿を提供する己という設定を作り出して被虐の恍惚をも生成しながら、青年は達した直後の裸体に休憩を挟むこと無く次の快感を注ぎ再び乳首と尻穴での絶頂を、自分の主となり自慰を鑑賞してくれる隣人に感謝を込めて贈るのだった。
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