元黒聖女シャーロットはもう祈らない

くま

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ユリウスとの距離感

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屋敷の廊下を、二人分の足音が静かに響いていた。

「……はあー、本当に、風邪だけでよかった」

ソラが小さく言う、東の塔の一件から数日、シャーロットは高熱こそ出さなかったものの、珍しく寝込んでしまっていた。

「……色々と病院の設立でのこともあるし、教会からまた連絡があり、疲れてるんだ」

ユリウスは短く答え、手に持った籠を少し持ち直す。中には温かい薬草茶とお菓子と果物だった。しばらく沈黙が続いたあと、ソラがふっと笑った。

「でもさ……仲いいな。シャーロットと、ユリウス様」

「……?」

ユリウスは一瞬、言葉に詰まり、固まる。

「いや、だって塔のときも、迷いなく背負ってたし。シャーロットも、全然嫌がってなかっただろ?頼られてるじゃん」

「……あれは、状況が状況だっただけだ」

ソラは気づかないふりをして続けて話す。

「でも、わかるよ。シャーロット、ユリウス様のこと……ちゃんと信頼してるんだなあと改めて感じた」

その言葉に、ユリウスは足を止めた。

「……どうして、そう思う」

「え??だって、、んー、、」

ソラは少し考えてから、静かに言った。

「……怖いとき、人は本当に信じてる人の名前しか呼ばない。あの時、シャーロット、無意識にユリウス様しか呼んでなかったぞ」

それでも、ユリウスは少し曇った顔をする。

「……私は、、、お前が羨ましいな」

思わず、そう呟くユリウスにソラは少し驚いた。

「え?」

「お前は、、、ソラは……最初から、、姉上に信じてもらえてるだろ。お前と出会って嬉しそうだった‥‥つい最近までは姉上とこんなに話すことなどなかったから‥‥最初から姉上と仲良くしているのは羨ましい」

「えー、そうか?シャーロットは、ちゃんとユリウス様を見てるけどな

「……そうか、、、ありがとう、ソラ」

「…ユリウス様、結構、お喋りだな」

「うるさい」

「へいへい。あ、今度、親父にも会いにきてくれよ。親父、ユリウス様の事、気に入っててさ!」

そう話すソラに、コクンと頷くユリウスだった。
扉の向こうから、かすかな咳の音が聞こえ、ユリウスは籠を持つ手に、少しだけ力を込める。ソラは「俺はもうこのへんで、他人があまり入ったりするのは辞めとく」といい、その場から去っていった。










目を覚ましたとき、最初に感じたのは、部屋の静けさだった。

喉が少し痛くて、身体は重たいけれど、熱はもう下がっているらしい。寝すぎたかしら?

そう思って身じろぎした瞬間――ぎゅ、と。
誰かの手が、私の手を包んでいる感触があった。

「……?」

ゆっくりと視線を落とす。そこにあったのは、ユリウスの手だった。
小さい手なのに、少しだけごつごつしている。剣を握る人の手だわ。

でも――驚くほど、温かい。

「あったか……」

熱のせいか、頭がぼんやりしていて、すぐに手を引くことができなかった。
ユリウスは椅子に座ったまま、眠っているようだった。

眉間にはいつものように力が入っていて、真剣な顔……

彼と過ごしていて、薄々感じていたこと。ユリウス……もしかして前世ではいつも私を影で見守っててくれてたのかしら?

私は怖かった。ユリウスが。

だけど、、昨日の、、あの時、手を差し伸べるユリウスしか頭になかった。

前のユリウスと今のユリウスが、、あまりにも、、違う関係性だ。

だからこそ、この距離が時々わからなくなる。

けれど――
この手は、東の塔で私を背負って走った手なのよね。
怖くて、腰が抜けて、何も考えられなくなった私を、迷わず掴んでくれた。

私は、そっと指を動かすとユリウスの指が、ぴくりと動く。まつ毛が長いわね、人形みたい、そう少し見惚れているとゆっくりと、彼が目を開いた。

「……起きましたか。大丈夫ですか?」

「え、ええ……ごめんなさい。心配かけて」


そう私が言うとユリウスはただ微笑むだけだった。
なんだか、、、ドキッとしてしまった。

うん、これは風邪のせい。
きっと、風邪のせい!子供に不覚にもドキドキするなんておかしい!!
そう思いながら、私はもう一度眠る。
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