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恋する乙女と企み
しおりを挟むオフィーリアの屋敷の奥深い部屋から、バチン!と鞭に叩かれる音がする。
「ねえ、、なんで外に行ったの?」
「…っ!ごめん、オフィーリア‥…、僕、少しだけ、、
外が気になって」
「悪い子よ、アルタス。お母様達が悲しむわ」
「ご、ごめ……っなさい」
鞭をたたき、無表情のオフィーリアに近くにいたガイア王子が止める。
「おい、オフィーリア。やめとけ、忌子だろうが、君の双子の弟だろう?」
「……ガイア王子、私は心配をしてるの」
「君の綺麗な手が汚れる。よこせ」
そうガイア王子はオフィーリアが持っていた鞭を取り出し、アルタスの方へ振り向く。
「最近、イラついてるんだ。俺がすることを兄上達は影で邪魔してくる。宝石事業にも失敗した、くそ」
ビュン!!とアルタスを何度も何度も叩いて笑っていたガイア王子に、鞭を叩かれて泣いている双子の弟アルタスにオフィーリアはそっと優しく頬を撫でる。
「ねえ、お願いがあるの。頼みを聞いてちょうだい」
「…ゲホゲホ!!た、頼み?」
「……上手く貴族達を転がしてたけど、ウィリアム殿下の戴冠式になったら、私達は粛正されるのが見える。ねえ、貴方しかできない事よ。神も貴方を祝福してくれるはずよ」
「……な、何をすればよいの?」
「そうね、、、まずはーー」
学園の正門をくぐると、朝の空気に混じってざわめきが広がっていた。
「あ、おはようございます、シャーロット様」
「きょ、今日も病院へ行かれるんですか?」
声をかけてくるのは、病院関係や商会で顔見知りになった家の子達だけ。
深く踏み込むことはなく、あくまで挨拶程度の距離感。
それ以外の生徒たちは――私の前を通る時、ほんの一瞬、足を止める。そして、目を逸らすか、睨むかね。
「……もう何年も経つのに」
私は小さく息を吐いた。
「やっぱり、まだ避けられるわね」
話しかけてもサーと逃げていくのよ。
仕方ない、とでも言うように淡々と呟くと、隣を歩くソラが露骨に呆れた顔をした。
「……なあ、シャーロット」
「なに?」
「いつも思うけど、それ勘違いだからな?」
足を止めて振り返ると、ソラは顎で周囲を示した。
「確かに、黒髪を怖がってるやつもいる。でも、見てみろよ」
私は、言われるままに視線を巡らせる。すれ違う生徒たちと遠巻きにこちらを見る視線ね。
小声で囁かれる声では、
「……黒の聖女様」
「近寄りがたいけど……綺麗よね」
「肌、白すぎない?」
恐れと、警戒とそして――隠しきれない関心だった。
黒髪に、透けるほど白い肌に目立たないはずがなかった。
「避けてるんじゃない」
ソラは肩をすくめながら、話しを続ける。
「近づけないだけ。シャーロットさ自覚なさすぎ」
「……?」
私が首を傾げると、ソラは深くため息をついた。
「なんというか、、“怖がられてる”って思ってるけど、実際は“どう接したらいいかわからない”が正解なんだよ。あの阿保女は馬鹿だから、話しやすいけど、シャーロットは違う」
「聖女で、王族で、黒髪、そりゃ距離もできるだろ」
「……でも、話しかけても誰も話さないわね」
「当たり前だろ。話しかけたら、人生変わりそうだもん」
「……ん?それ、褒めてるの?」
「半分な」
ソラは歩き出しながら、ぼそりと付け加える。
「それにさ。避けてるなら、あんな目で見ない、、、特に男子生徒。ユリウス様がいたら、あいつらーーあー!恐ろしいや!」
なんだかよくわからないけど、病院ばかり行き来してるだけじゃ、確かに駄目よね。
それにしても、あのピンク色の髪をした子、、ちゃんとご飯を食べてるのかしら。オフィーリアに似てるけど、私は会った事もないし、そもそもあの子は一人っ子のはずよね?
ただ似てる、だけなのか気になりつつ、私とソラは教室へ向かうと、ミーアさんが腕を組みをして立っていた。
……健気にソラを待っているのね。
「っ、な、なによ!その目!」
ミーアさん、は腕を組み、ぷいっと顔を背けて教室へ向かうミーアさん。
「ソラは鈍い子ね」
「は?いや、シャーロットには言われたくない」
そうソラに呆れた顔をされてしまった。
ミーアは人の少ない場所の廊下でしゃがみこむ。
「……嫉妬だなんて、見苦しいわ…はあ…」
そう落ち込んでるミーアに、ピンク色の髪を靡かせながら、話しかけてきたのはオフィーリアだった。
「あら、ミーア様、どうしたの?」
「…オフィーリア様……なにかよう??」
キッと睨むミーアに笑顔のままのオフィーリアは、取り巻き達に「二人にして」と言い、取り巻き達は少し離れた場所へと移動する。
「…可哀想なミーア様、、好きな人はあの、シャーロットを好いているんですもの」
「…な、なに。べべつに、私はあの平民を好きじゃないわ!」
「どんなに見つめても、想ってても、彼は振り向いてくれないわ」
「な、なにがいいたいの……」
「私が神に祈り、貴女の恋を成就してあげるわっ」
オフィーリアはそっとミーアに小さな小瓶を渡す。
「邪魔者はね、私がきちんと消してあげるわ」
そうニッコリと笑う。
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