元黒聖女シャーロットはもう祈らない

くま

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隣にいるのに遠い君 ※ソラ目線

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漆黒の髪色に赤い瞳色のシャーロット。
俺は、シャーロットに救われた……それは大袈裟な言い方じゃない。
親父や俺だけではなく、かつて貧民街だった者達も彼女に救われた。

聖女だろうが、黒の一族だろうが、王族の血も流れていて、本来身分は高いのに、仲良くしてくれていた。

だから、密かに想いを寄せるなんて、、、最初から分かりきっていた結末だったと思う。

でも、それを口に出すつもりはなかった、彼女の隣にいられるなら、それでいい。
役に立てるならとそう思ってた。
――ユリウス様が、聖域へ行くと言った時は、胸の奥で、チクリと何かが刺さった。

……ああ、俺にもあるんだな、こんな黒い感情があるんだなあと実感する。

シャーロットの隣にずっといるのは俺かもしれないと。

一緒に病院を回って、薬草を集めて、夜遅くまで書類を整理して、彼女が弱音を吐きたいとき、頼ってくれる時、
その笑顔を向けるのは――俺だったらどんなに良かったか。だけど、彼女は一度も弱音を吐くことはなかった。


彼女はいつも、遠くを見ていた。教会の白い壁を見るたび、ほんの一瞬、怯えたみたいな顔をして。それでも、何も言わず、前を向いて歩く。

……無理してるんだろうな。

少しでも、楽になってほしかった。
少しでも、俺を頼ってほしかった。

「ソラがいてくれて助かるわ」

その一言で、俺は、何度でも立ち上がれた。だから、勘違いしてたんだと思う。

――ユリウス様が、帰ってくるまで。


彼女が、彼を見た瞬間ーーああ……って、思った。
あれは、俺が何年も見てきた“シャーロット”じゃない。
ほんの一瞬、頬が熱を帯びて、視線が揺れて、言葉に詰まる。

いつもは、病院の訪問も、学業も、仕事も、全部きびきびこなす人なのに、あの時の彼女は、ただの――少女みたいだった。

隣に、俺はずっといたのに、彼女を守る盾にも、心を揺らす存在にも、結局なれなかった。

俺は、支えることはできても、

“選ばれる側”には、なれないんだと、そう、思い知らされた。
悔しくて、情けなくて、


「…ソラ、苺を一杯どうだ?」

頬を赤らめつつ、苺ジュースのボトルとワイングラスを二つ用意するユリウス様は俺の部屋へやってきた。

「……ユリウス様、いや、何、酒みたいなノリできてんだ?」

「飲まないのか?」

「いや、飲むよ。そのジュース何?」

「…聖域で取れた苺から作ったものだ。……絶対、帰ってきたら友であるお前と飲もうと決めていたんだ」

無表情のまま、恥ずかしげもなくそう言う、お前が
嫌いになれないな。いいやつだ。

「……いやー、シャーロットじゃなく、誘うの俺かい。乙女なユリウス様だな」

「いつも思うが、その様付けやめてくれ」

「……はいはい、まあ、二人きりのときだけね。あ、なんか恋人同士みたいだなー!?」

「…やめてくれ」

そう俺達は男同士なのに、甘い苺ジュースを乾杯して飲んだ。
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