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聖女の力
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私とユリウスは義母の部屋へと走って、向かっていた。扉の前には治療する神官と義父、そして不安そうに立ち尽くすユリウスの姿があった。
私を見るなり、ユリウスの顔は緊張していた様子だった。
部屋の中からは、浅く苦しそうな呼吸音に、まだ子供であるユリウスは目の前で苦しむ母親の姿を見て、少しだけ震えていた。いつもクールだけど‥‥
私はぎゅっと彼の手を握りしめる。
「そんなに不安な顔をしたら、お義母様はもっと不安になるわ」
「……はい」
神官たちの声が、重なって響いていた。
「……奥様の意識が!」
「呼吸が浅い、これは……!」
「神に祈りを――!」
慌ただしく動く足音。義父へ義母の名を呼ぶが、返事はない。ベッドの上で、義母は静かに目を閉じていた。
まるで――眠っているみたいに。
胸の奥が、冷たくなる。神官たちは必死だったけれど、
彼らのあの聖力と祈りでは、足りない。
私は、その場から一歩も動けずにいた。
――助けられる。今の私は、知っている。
一度目の人生で、聖女として最盛期だった頃と、同じ量の聖力があることを。前は違った。
制御もできず、弱くて、祈ることしかできなかったのだから。
でも、今は……
……助けられる。
ただし、その代償も、わかっている。
ここには神官達がいる。この場で力を使えば、絶対に隠せない。黒く、制御された、強大な聖力だもの。
――目立つわね。
教会に元々知られてはいるけど、管理されるし、自由はなくなる。
「……」
私は、唇を噛んだ。タダで助ける義理は、あるだろうか。
この世界は、優しさを差し出せば、必ず搾取してくる。
いや、どの世界でもだわ。
一度目も、二度目も、嫌というほど学んだ。
――それでも……。視線が、義母へと戻る。
私の手を、温かく包んでくれた人だった。
「あなたは、うちの娘よ」と、迷いなく言ってくれた人。
ビールの話をしたら、本気で叱ってくれた人。
「……ユリウス、大丈夫よ」
「…姉上?」
気づけば、そう呟きながら義母の方へとゆっくり近付く。
神官の一人が、はっとしてこちらを見る。
「く、黒髪!?君は確か噂のーー」
「シャーロット?君はいいから、ユリウスと一緒にーー」
義父の声を無視して、私は神官達を見て話す。
「そんなに、ちんたら祈るだけなんて助からないわ」
私は、この力が嫌いだ。だけど、この人を見捨てる理由には、ならない。
私は一歩踏み出し、ベッドの傍へと近づく。義母の顔色は蒼白で、呼吸はかすかだわ。でも……まだ、間に合う。
私は深く息を吸い、心を静める。
目を閉じてなど、祈らない。
そっと、手を伸ばした。
次の瞬間――ぶわり、と光でも闇でもない、静かな聖なる気配が、波紋のように広がった。
「……神なんて、本当に、糞くらえよ」
低く、はっきりと――声に出して言った。
その瞬間、神官たちが凍りついた。
「な――」
「い、今……」
構わない。神なんて、今まで何をしてくれた?
一度目の人生でも、二度目でも、祈った先にあったのは搾取と失望だけだ。これは、信仰じゃない。奇跡でもない。
私が、救うと決めた結果だ。
私は迷いなく、義母へと手を伸ばした。
次の瞬間――
ぶわり、と。
光でも闇でもない、黒く、静かな聖なる気配が、部屋いっぱいに広がる。
「……っ!?」
「神への冒涜……なのに……聖力が……!」
動揺する神官たちの声を背に、私は力を制御し、選び取り、義母の身体へと流し込む。命を繋ぎ、呼吸を整え、弱った箇所を支える。
「……戻ってきてください。成人したら、ビールを飲みましょう。あと、これ貸しですからね」
それは祈りではなく、命への命令だった。
義母の指が、微かに動く。
「……シャーロット……ちゃん……」
……よし!私は、力の流れを整えながら、心の中で呟く。
「……っ!?」
「これは……!」
神官たちが、言葉を失う。私は、意識を集中させ、必要な分だけを選び取る。
神官たちの視線が、はっきりと私に集まるのを感じる。
恐怖と欲と困惑を孕んで、私に突き刺さっていた。
それでも、私は、彼女の手を離さなかった。
私を見るなり、ユリウスの顔は緊張していた様子だった。
部屋の中からは、浅く苦しそうな呼吸音に、まだ子供であるユリウスは目の前で苦しむ母親の姿を見て、少しだけ震えていた。いつもクールだけど‥‥
私はぎゅっと彼の手を握りしめる。
「そんなに不安な顔をしたら、お義母様はもっと不安になるわ」
「……はい」
神官たちの声が、重なって響いていた。
「……奥様の意識が!」
「呼吸が浅い、これは……!」
「神に祈りを――!」
慌ただしく動く足音。義父へ義母の名を呼ぶが、返事はない。ベッドの上で、義母は静かに目を閉じていた。
まるで――眠っているみたいに。
胸の奥が、冷たくなる。神官たちは必死だったけれど、
彼らのあの聖力と祈りでは、足りない。
私は、その場から一歩も動けずにいた。
――助けられる。今の私は、知っている。
一度目の人生で、聖女として最盛期だった頃と、同じ量の聖力があることを。前は違った。
制御もできず、弱くて、祈ることしかできなかったのだから。
でも、今は……
……助けられる。
ただし、その代償も、わかっている。
ここには神官達がいる。この場で力を使えば、絶対に隠せない。黒く、制御された、強大な聖力だもの。
――目立つわね。
教会に元々知られてはいるけど、管理されるし、自由はなくなる。
「……」
私は、唇を噛んだ。タダで助ける義理は、あるだろうか。
この世界は、優しさを差し出せば、必ず搾取してくる。
いや、どの世界でもだわ。
一度目も、二度目も、嫌というほど学んだ。
――それでも……。視線が、義母へと戻る。
私の手を、温かく包んでくれた人だった。
「あなたは、うちの娘よ」と、迷いなく言ってくれた人。
ビールの話をしたら、本気で叱ってくれた人。
「……ユリウス、大丈夫よ」
「…姉上?」
気づけば、そう呟きながら義母の方へとゆっくり近付く。
神官の一人が、はっとしてこちらを見る。
「く、黒髪!?君は確か噂のーー」
「シャーロット?君はいいから、ユリウスと一緒にーー」
義父の声を無視して、私は神官達を見て話す。
「そんなに、ちんたら祈るだけなんて助からないわ」
私は、この力が嫌いだ。だけど、この人を見捨てる理由には、ならない。
私は一歩踏み出し、ベッドの傍へと近づく。義母の顔色は蒼白で、呼吸はかすかだわ。でも……まだ、間に合う。
私は深く息を吸い、心を静める。
目を閉じてなど、祈らない。
そっと、手を伸ばした。
次の瞬間――ぶわり、と光でも闇でもない、静かな聖なる気配が、波紋のように広がった。
「……神なんて、本当に、糞くらえよ」
低く、はっきりと――声に出して言った。
その瞬間、神官たちが凍りついた。
「な――」
「い、今……」
構わない。神なんて、今まで何をしてくれた?
一度目の人生でも、二度目でも、祈った先にあったのは搾取と失望だけだ。これは、信仰じゃない。奇跡でもない。
私が、救うと決めた結果だ。
私は迷いなく、義母へと手を伸ばした。
次の瞬間――
ぶわり、と。
光でも闇でもない、黒く、静かな聖なる気配が、部屋いっぱいに広がる。
「……っ!?」
「神への冒涜……なのに……聖力が……!」
動揺する神官たちの声を背に、私は力を制御し、選び取り、義母の身体へと流し込む。命を繋ぎ、呼吸を整え、弱った箇所を支える。
「……戻ってきてください。成人したら、ビールを飲みましょう。あと、これ貸しですからね」
それは祈りではなく、命への命令だった。
義母の指が、微かに動く。
「……シャーロット……ちゃん……」
……よし!私は、力の流れを整えながら、心の中で呟く。
「……っ!?」
「これは……!」
神官たちが、言葉を失う。私は、意識を集中させ、必要な分だけを選び取る。
神官たちの視線が、はっきりと私に集まるのを感じる。
恐怖と欲と困惑を孕んで、私に突き刺さっていた。
それでも、私は、彼女の手を離さなかった。
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