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義弟の嫉妬
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義父が城へ向かったのは、その翌日だった。
「王への打診は、私がする」
そう言い残し、馬車に乗り込む背中は、いつもより少しだけ重たそうだった。義母はまだ、完全に回復したわけではないけれど、意識ははっきりしており、神官の診立てでも「峠は越えた」とされている。
今日は天気もよく、ほんの短い時間だけど、ユリウスと庭先へと歩くことになった。
「……姉上は、、その体調は大丈夫なんですか」
ユリウスが、いつもより少し神経質な声で私に質問をしてきた。
「大丈夫よ。ほら、こんなに暖かい」
「いや、暖かいは関係ないかと‥‥」
芝生に落ちる木漏れ日に、鳥の声。あぁ、焼き鳥とビールが飲みたいわ。
春より夏が来て欲しい。クソ暑い中、ギンギンに冷えた生ビールは最高ね!
その時、ふわりと、甘い香りが鼻をくすぐった。
「……あ」
私は足を止めて甘い香りがする方へと歩く。
「どうしました?」
「キンモクセイ……」
庭の隅に、小さな木があった。
オレンジ色の花が、控えめに咲いている。
――この香り。胸の奥が、きゅっと掴まれた。
『デートしてください』
そう笑っていた、木下君。
……結局、約束は果たせなかったな。彼は今どうしてるのかしら。
私みたいな歳上にデートしてくださいなんて、、。
「……姉上?」
心配そうな声で、現実に引き戻された私はユリウスの方を見て話す。
「あ、ごめん。ちょっと……懐かしくて」
「……?」
不思議そうに首を傾げるユリウスに、私は軽く笑って誤魔化した。
「ううん、何でもないわ」
屋敷内で変化は、はっきりしてきた。
「シャーロット様、おはようございます」
メイドが、深く頭を下げる。
「……おはよう」
以前は、視線すら合わせなかった人たちだ。食事も、明らかに豪華になっている。
その様子を見て、ユリウスは不機嫌そうに眉をひそめた。
「……気に入りません」
「え?」
「今まで、姉上を避けていたくせに」
紫の瞳が、鋭く細められる。
「……あの者達をクビにしましょう」
「面倒だからそういうの。私は気にならないわよ」
そう言うと、彼は納得出来ないような顔で、メイド達を睨むと、メイド達は用を済ませると逃げていった。
庭のベンチに腰掛けているうちに、日差しが心地よくなってきた。風が、髪を揺らす。うん、気持ちいい。
緊張が抜けたせいか、私はいつの間にか、うとうとと寝てしまっていた。
「……すー……」
ユリウスは、はっとしてこちらを見るが、ユリウスの肩にもたれかけ、静かに眠るシャーロットを見て、ユリウスの口元は少しだけ緩んでいた。
だかその時ーー
「……木下君と……デート……」
「……‥‥‥……‥‥‥……‥‥‥は?」
空気が、一気に凍りついた。
「……キノシタ?木?」
「……キンモクセイ……咲いてて……ふふ」
寝言だった。だが、ユリウスの表情は、みるみる険しくなっていく。
「……姉上、誰ですか、それ」
答えが返ってくるはずもない。
「……屋敷の人間? 貴族? それとも……他国?まさか、孤児院で一緒だった人ですか?」
無意識に、ぎゅ、と小さな拳を握りしめる。
「……警戒が必要ですね。キノシタ、、」
紫の瞳に、子供らしくない警戒心が宿る。暖かな日差しの中、何も知らずに眠るシャーロットと、静かに“知らない男”を敵視し始めた義弟ユリウス。
屋敷の庭には、平和で、少しだけ危うい、そんな時間が流れていた。
「……ん……?」
まぶたを開くと、最初に見えたのは、見慣れた銀色だった。
「……あれ?私寝てしまった?」
どうやら私は、ユリウスの肩にもたれかかって眠っていたらしい。まさか、あのユリウスのそばで寝れるだなんて、歳がとったものだわ。姿勢を正そうと身じろぎすると――
「……動かないでください」
低く、ぶっきらぼうな声。
「え?」
顔を上げると、ユリウスは明らかに機嫌が悪そうだった。
眉間にしわ、頬を少し膨らませていてリスみたいだわ。
「えーと、、どのくらい寝てたかな」
「……1時間」
「え!?起こしてくれてもよかったのに」
「起こしません」
即答だった。というより、何故かユリウスは不機嫌??私は首を傾げた。
まあ、あれだけ、苦手だった義弟だったけれど、なんだか本当に慣れたものだわ。まだ幼い私だったら、怖がっていたかもしれないわね。
「んー、なんか怒ってる?」
「……怒ってません」
ぷい、とそっぽを向くユリウス‥‥
これは早い反抗期決定ね。お義母様に知らせときましょう。
「王への打診は、私がする」
そう言い残し、馬車に乗り込む背中は、いつもより少しだけ重たそうだった。義母はまだ、完全に回復したわけではないけれど、意識ははっきりしており、神官の診立てでも「峠は越えた」とされている。
今日は天気もよく、ほんの短い時間だけど、ユリウスと庭先へと歩くことになった。
「……姉上は、、その体調は大丈夫なんですか」
ユリウスが、いつもより少し神経質な声で私に質問をしてきた。
「大丈夫よ。ほら、こんなに暖かい」
「いや、暖かいは関係ないかと‥‥」
芝生に落ちる木漏れ日に、鳥の声。あぁ、焼き鳥とビールが飲みたいわ。
春より夏が来て欲しい。クソ暑い中、ギンギンに冷えた生ビールは最高ね!
その時、ふわりと、甘い香りが鼻をくすぐった。
「……あ」
私は足を止めて甘い香りがする方へと歩く。
「どうしました?」
「キンモクセイ……」
庭の隅に、小さな木があった。
オレンジ色の花が、控えめに咲いている。
――この香り。胸の奥が、きゅっと掴まれた。
『デートしてください』
そう笑っていた、木下君。
……結局、約束は果たせなかったな。彼は今どうしてるのかしら。
私みたいな歳上にデートしてくださいなんて、、。
「……姉上?」
心配そうな声で、現実に引き戻された私はユリウスの方を見て話す。
「あ、ごめん。ちょっと……懐かしくて」
「……?」
不思議そうに首を傾げるユリウスに、私は軽く笑って誤魔化した。
「ううん、何でもないわ」
屋敷内で変化は、はっきりしてきた。
「シャーロット様、おはようございます」
メイドが、深く頭を下げる。
「……おはよう」
以前は、視線すら合わせなかった人たちだ。食事も、明らかに豪華になっている。
その様子を見て、ユリウスは不機嫌そうに眉をひそめた。
「……気に入りません」
「え?」
「今まで、姉上を避けていたくせに」
紫の瞳が、鋭く細められる。
「……あの者達をクビにしましょう」
「面倒だからそういうの。私は気にならないわよ」
そう言うと、彼は納得出来ないような顔で、メイド達を睨むと、メイド達は用を済ませると逃げていった。
庭のベンチに腰掛けているうちに、日差しが心地よくなってきた。風が、髪を揺らす。うん、気持ちいい。
緊張が抜けたせいか、私はいつの間にか、うとうとと寝てしまっていた。
「……すー……」
ユリウスは、はっとしてこちらを見るが、ユリウスの肩にもたれかけ、静かに眠るシャーロットを見て、ユリウスの口元は少しだけ緩んでいた。
だかその時ーー
「……木下君と……デート……」
「……‥‥‥……‥‥‥……‥‥‥は?」
空気が、一気に凍りついた。
「……キノシタ?木?」
「……キンモクセイ……咲いてて……ふふ」
寝言だった。だが、ユリウスの表情は、みるみる険しくなっていく。
「……姉上、誰ですか、それ」
答えが返ってくるはずもない。
「……屋敷の人間? 貴族? それとも……他国?まさか、孤児院で一緒だった人ですか?」
無意識に、ぎゅ、と小さな拳を握りしめる。
「……警戒が必要ですね。キノシタ、、」
紫の瞳に、子供らしくない警戒心が宿る。暖かな日差しの中、何も知らずに眠るシャーロットと、静かに“知らない男”を敵視し始めた義弟ユリウス。
屋敷の庭には、平和で、少しだけ危うい、そんな時間が流れていた。
「……ん……?」
まぶたを開くと、最初に見えたのは、見慣れた銀色だった。
「……あれ?私寝てしまった?」
どうやら私は、ユリウスの肩にもたれかかって眠っていたらしい。まさか、あのユリウスのそばで寝れるだなんて、歳がとったものだわ。姿勢を正そうと身じろぎすると――
「……動かないでください」
低く、ぶっきらぼうな声。
「え?」
顔を上げると、ユリウスは明らかに機嫌が悪そうだった。
眉間にしわ、頬を少し膨らませていてリスみたいだわ。
「えーと、、どのくらい寝てたかな」
「……1時間」
「え!?起こしてくれてもよかったのに」
「起こしません」
即答だった。というより、何故かユリウスは不機嫌??私は首を傾げた。
まあ、あれだけ、苦手だった義弟だったけれど、なんだか本当に慣れたものだわ。まだ幼い私だったら、怖がっていたかもしれないわね。
「んー、なんか怒ってる?」
「……怒ってません」
ぷい、とそっぽを向くユリウス‥‥
これは早い反抗期決定ね。お義母様に知らせときましょう。
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