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我が家に着きました

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如月紫苑17歳。日本という国に生まれ育ち、この国でもこの体の持ち主さんは、それなりの令嬢みたいだわ。なんでも病院やホテル経営をしている優秀な家の子らしい。それにしても…

「……髪が黒い…」

鏡を何度見ても慣れないわね。髪が黒く、鼻は低い。あまり美人ではないようだけど、健康的なら問題はないわね。あと、この病室にある奇妙な物は一体何かしら?薄い黒い板のものやら、私の腕にチクリと変な物を刺したり…ベッドが勝手に起き上がるという…ここは、絶対魔法使い達の住処だわ。逃げられないし…。

それに、あれから毎日、この紫苑という女の子の母はお花を持ってきてくれているし、父は仕事終わりに必ず会いにきてくれている。

……この紫苑ってこはとても、愛されていたのね。

以前の私の家、シルベリア家は冷え切っていたし、夫婦仲は冷めていて厳しく育てられていた。勉強できて当たり前、令嬢として当たり前。全てはシルベリア家の為に!でしたからね。…だから、なんだか恥ずかしいのよね、こんなにも無償で可愛がってくれるのって…。

「紫苑!これシフォンケーキだ!買ってきたぞ!一緒に食べようでないか」

「紫苑ちゃん!この服紫苑ちゃんに似合うと思って買ってきたの。有名ブランドの物よー!どうかしら?」

……この二人はかなり甘いですわね。

「あの……ありがとうございます。お父様、お母様」

そうお礼を言うと、何故か、二人は驚いた顔をしたと思ってたら急に泣き出した。

「わわわたしのことをお母様と!はじめて言ってくれたわ!」

「ぼぼぼ、僕のこと、パパと!」

「パパじゃないじゃない!お父様と呼んだのよ!あ、でも私はママと呼ばれても嬉しいわよう!」

どうやら如月紫苑さんの実の父親は、育児放棄をし本当の母は亡くなったらしい。母と父の友人だった如月家が私(紫苑)を引き取っていたわけね。なるほど…。とても良い方達だというのはすぐにわかるわ。

それにしても、どうもこの以前の紫苑さんは、この家族と上手くいってなかったのかしら?…人の事はとやかく言えないわね。

あれから一週間ほど、病院にお世話になり、退院した日父と母が迎えにきてくれた。


黒い箱が目の前に止まっている。
中に人がいるようだけど…奇妙な形で正直気味が悪いわ。

「……あの…これなんでしょうか…安全ですか?やはり馬車の方が…」

「え!まさか車も知らなくなったのかい?!」

お父様はかなりビックリしています。二人は大丈夫だと手を握ってくれて、私は勇気を出してそのクルマとやらに乗った。…私は周りの景色がかつて自分が住んでいた世界とは違うんだと改めて感じた。

いや、沢山の箱があるんですもの。あまり緑もないし、平民と貴族?とかの領域もなさそうね。高い箱もあるわ。ここは箱が好きなのかしら?

不思議だわ。本当に不思議ね…。

若い女の子は裸同然で町を歩いてる。
レディとしていかがなものかと疑っているけど楽しそうな表情をしている。それと、一人でブツブツ時計とか、また小さな薄い箱に向かって話してる……病んでるのかしら。

クルマが止まり、どうやら家に着いたようだ。
あら、懐かしい感じの建物ね、私が以前住んでいた屋敷に雰囲気は似ているわ。沢山白い花が咲いてあり、お庭が綺麗でとても広い。

「紫苑が帰ってきたぞーい!」

「「おかえりなさいませ、旦那様、奥様、紫苑様」

何故か私の顔を見てビクビクしている、執事とメイド達…。なんだかその格好は馴染みがあって、先程いた病院よりこちらの方が安心するわね。

「お、お嬢様…お荷物をお持ちします」

「あら、ありがとう」

ニコッと笑あ荷物を彼女に渡すと、周りのものはまた騒ぎはじめたり、赤くなったりしていた。
何故かしら??

「…わ…ほんとーに帰ってきたんだ」

あ、以前扉の前にいた男のこだわ。

「弟の真斗だよ。紫苑。やはり記憶は……ないかな?」

私がコクンと頷くと、屋敷の者達は驚いていた。お父様は私に義弟である真斗さんを紹介をする。

ぺこりとレディらしくお辞儀をするとまた周りはザワザワし始めていた。

「あの…私何かついているんですか?」

一体なんでしょうか?そんなに珍しいことでもしたかしら。

「し、紫苑ちゃん!と、とりあえずリビングにいきましょう」

母にリビングに案内されソファに座った。

「…そういえばサッカーの試合どうだったろ」

弟、真斗は何やらボタンを押したら、大きな箱から人が写っていた!写真??!いや、動いて話しているわ!まあ、なんて凄い!これは高度な魔法使い様しか扱えないんだわ!

「真斗さん、貴方…!!」

プルプル震えて見つめる私に真斗さんは睨んできた。

「……なに?また文句あるの?」

「すごいわ!貴方、魔法を使えるのね!写真の人を動かすなんて!」

どうやら私はかなり高度な魔法の国へ転生したようだわ。本の中だけの世界だと思っていたのに!素晴らしいわね!私も使えるのかしら?

キラキラした目で真斗を尊敬する紫苑に真斗は固まっていた。

「……やばい、こいつ厨二病だ。父さん、もう一度病院連れてったほういいぞ……」

そう紫苑以外は固まっていた事に、元リリー…いや、紫苑は気づかず、サッカーというものを見て興奮していた。
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