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第一章 前世の記憶
第15話 十六歳 古代遺跡の採掘とそれが教えること(下)
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「これから僕が話すことで、君が苦しい思いをするかも知れない。だから、話を止めて欲しいときはそれを言ってほしい」
僕はこくりとうなずいた。
「一番最初の世界では、僕にもどうすることもできなくて、世界はすぐに滅亡してしまったんだ。ただ、僕はその時も古代遺跡の遺物の収集家でね。“精神が時を遡る石“を手に入れていたんだ。今思えば、僕がそれを手に入れたことは、神の思し召しにしか思えない。生まれ変わった者がいて、その前世の知識を利用した上で備えなければ、世界は確実に滅亡するものだったから」
「……」
「それから、最初は僕は一人で生まれ変わった。なんとか止められないかと思ったんだ」
彼は以前にも生まれ変わっていたというのか。
「その時は、早い段階から塔でいろいろと調べた。古代時代でも同じことが起きていたから、そこの記録にヒントがないかと思って調べた。失敗してほとんど人類が滅亡した時もあったけど、それでも抗えた時もあった。それがこの“消失の槍”だ。これは君が見つけてくれたんだよ。この槍を使えば、アレを倒すことができるだろうと。君は、前世でも僕にとても優しくて、僕のことを唯一信じて協力してくれた」
「…………うまくいかなかったの?」
ゼファーは苦しそうな表情でうなずいた。
「ああ、これを使える奴が、誰よりも早くにさっさと死んでしまった。アレクサンドロス=アルスター、君の夫だった人だ。竜の血を濃く引く膨大な魔力の持ち主」
「……え?」
「せっかく手に入れた“消失の槍”を使える人間がいなくなったので、前世は滅亡が確定してしまったんだ。僕と君は毒をあおって死んだ。アレは強い魔力を持つ者に惹かれ、取り込むから、僕達は絶対に取り込まれてはならなかったんだ。そしてまた生まれ変われるように、最後の石を使った」
アレクが亡くなった?
前世でアレクが亡くなった? 誰よりも先に?
黄金色の瞳に黄金の髪を持つ若者の姿が、脳裏で揺らぐ。
僕が大好きで誰よりも愛していた人が……
その瞬間、僕の脳裏に膨大な前世の記憶が流れ込み、頭を押さえて悲鳴をあげた。
「フラン、大丈夫か、フラン!!」
慌てて僕を抱きとめるゼファーに僕はすがりついた。
「アレクが、アレクが死んじゃった!! 行っちゃダメだって僕は言ったのに、彼は信じてくれなかった」
滅亡が始まる地に、彼は赴いて、真っ先にそれに取り込まれたのだ。
それ故に、前世では滅亡のスピードが桁違いに早かった。
アレクの、強い魔力を取り込んだから、もはや止めどもなく。
悲しみよりも悔しさが勝っていた。
もし、彼に話さなければ、彼は自分から進んであの滅亡の地に赴くことはなかっただろう。
行くなと言う僕を置いて、彼一人で行ったのは、僕とゼファーを見返すためのような気がしてならない。
彼はゼファーを嫌っていた。
僕が彼に……話さなければ
僕が彼に出会わなければ
僕が彼の番でなければ
きっと彼は前世でも生きていたんじゃないかと思う。
僕が番でなければ、僕とゼファーは“消失の槍”を手に入れて、アレクにそれを献上し、アレクはそれを使って滅亡を防げたはずだ。
だから僕は願ったんだ。
今度生まれ変わったら、もう彼とは出会わず、結婚もしない。
そうすれば、彼はきっと生きている。
僕はこくりとうなずいた。
「一番最初の世界では、僕にもどうすることもできなくて、世界はすぐに滅亡してしまったんだ。ただ、僕はその時も古代遺跡の遺物の収集家でね。“精神が時を遡る石“を手に入れていたんだ。今思えば、僕がそれを手に入れたことは、神の思し召しにしか思えない。生まれ変わった者がいて、その前世の知識を利用した上で備えなければ、世界は確実に滅亡するものだったから」
「……」
「それから、最初は僕は一人で生まれ変わった。なんとか止められないかと思ったんだ」
彼は以前にも生まれ変わっていたというのか。
「その時は、早い段階から塔でいろいろと調べた。古代時代でも同じことが起きていたから、そこの記録にヒントがないかと思って調べた。失敗してほとんど人類が滅亡した時もあったけど、それでも抗えた時もあった。それがこの“消失の槍”だ。これは君が見つけてくれたんだよ。この槍を使えば、アレを倒すことができるだろうと。君は、前世でも僕にとても優しくて、僕のことを唯一信じて協力してくれた」
「…………うまくいかなかったの?」
ゼファーは苦しそうな表情でうなずいた。
「ああ、これを使える奴が、誰よりも早くにさっさと死んでしまった。アレクサンドロス=アルスター、君の夫だった人だ。竜の血を濃く引く膨大な魔力の持ち主」
「……え?」
「せっかく手に入れた“消失の槍”を使える人間がいなくなったので、前世は滅亡が確定してしまったんだ。僕と君は毒をあおって死んだ。アレは強い魔力を持つ者に惹かれ、取り込むから、僕達は絶対に取り込まれてはならなかったんだ。そしてまた生まれ変われるように、最後の石を使った」
アレクが亡くなった?
前世でアレクが亡くなった? 誰よりも先に?
黄金色の瞳に黄金の髪を持つ若者の姿が、脳裏で揺らぐ。
僕が大好きで誰よりも愛していた人が……
その瞬間、僕の脳裏に膨大な前世の記憶が流れ込み、頭を押さえて悲鳴をあげた。
「フラン、大丈夫か、フラン!!」
慌てて僕を抱きとめるゼファーに僕はすがりついた。
「アレクが、アレクが死んじゃった!! 行っちゃダメだって僕は言ったのに、彼は信じてくれなかった」
滅亡が始まる地に、彼は赴いて、真っ先にそれに取り込まれたのだ。
それ故に、前世では滅亡のスピードが桁違いに早かった。
アレクの、強い魔力を取り込んだから、もはや止めどもなく。
悲しみよりも悔しさが勝っていた。
もし、彼に話さなければ、彼は自分から進んであの滅亡の地に赴くことはなかっただろう。
行くなと言う僕を置いて、彼一人で行ったのは、僕とゼファーを見返すためのような気がしてならない。
彼はゼファーを嫌っていた。
僕が彼に……話さなければ
僕が彼に出会わなければ
僕が彼の番でなければ
きっと彼は前世でも生きていたんじゃないかと思う。
僕が番でなければ、僕とゼファーは“消失の槍”を手に入れて、アレクにそれを献上し、アレクはそれを使って滅亡を防げたはずだ。
だから僕は願ったんだ。
今度生まれ変わったら、もう彼とは出会わず、結婚もしない。
そうすれば、彼はきっと生きている。
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