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第一章 幼少期の王宮での暮らし
第三話 紫竜の中身 ~side ルーシェ
さて、護衛騎士バンナムに他の竜とは違い過ぎると思われている紫竜のルーであるが。
その紫竜の中身は……、未だこの世界の誰も気が付いていないのだが、前世が日本の高校生男子の、名を沢谷雪也という少年であった。
よくある異世界転生の切っ掛けと同じく、学校帰り、友人達と仲良く歩いていた歩道に、大型トラックが道を外れて突進してきたのだった。
狭い歩道である。避けることもできずに彼らは皆、トラックに吹っ飛ばされた。
痛みを覚える暇もなく、彼の意識は唐突に途切れた。
齢十五歳。若い身空での唐突の死である。
わが身の突然の不運を嘆く間もなく、その魂は、異世界にまでふっ飛ばされた。
次の瞬間、雪也が目を覚ました時、そこは白い世界だった。
卵の中だった。
だが、雪也はそこが卵の中ということは認識していない。
温かな湯の中にいるような、まどろみの中、とぎれとぎれに意識はあったのだ。
卵の外からぼんやりと光が漏れ、声も聞こえてくる。
だが……
(眠い……猛烈に眠い)
瞼が落ちてくる。
うとうとと、また安寧の眠りの中に意識を溶け込ませようと思っていた時、卵の外に、どうしても気になって仕方のないモノがあった。
(ああ、目を覚まさないといけない)
焦燥にも似た思いに突き動かされる。
だから、雪也は嘴で猛烈に殻を突っつき始めた。
外から「まだ早い」「だめだ」「まだだめだ」という慌てふためいた声が聞こえるが、雪也は身を揺すり、懸命に嘴で殻を突っつき続けた。
やがてヒビが入り、それが広がり、パリンとか細い音を立てて殻が割れた。
「ピルルルル、ピルルル」と高らかに声を上げた。
その人に気付いて欲しくて、欲しくて懸命に声を張り上げた。
その人がいってしまうかも知れないと思ったから、自分は懸命に猛烈な眠気を払い、殻を嘴で突っつき、卵から顔を出したのだ。
どこにいるのかと懸命にその人を呼び続ける。
そしてようやく。
ようやく、彼は自分の前に姿を現したのだった。
王国の第七王子アルバート=ベルリガード。九歳のまだ子供だった。
黒髪に鳶色の瞳の、端正な面差しの少年は、将来結構なハンサムになるだろうと思われた。
そんなことよりも、ようやく出会えたことが、嬉しくて嬉しくて仕方がなくて。
思わずビタンと彼の足に張りついたのだった。
もう絶対に離さない。離れないという気持ちで。
それは不思議な感情だった。
一目見ただけで、アルバートと言う少年が自分の半身だと分かった。
自分はアルバートの為にこの世に生まれてきたのだ。
彼は自分の主だった。
大好きな大好きな主。
その彼の側にいられて、嬉しくてたまらない。
それはアルバートも同時に感じたようで、まとわりつくルーを抱きしめ、口付けてくれた。
「ルー、ルー、僕の大事なルー」
抱きしめ、抱き上げ、優しく言ってくれる。
「ずっと僕の側にいてね、ルー」
もちろん。
死が二人を分かつまで、ずっと共にいるつもりだった。
その紫竜の中身は……、未だこの世界の誰も気が付いていないのだが、前世が日本の高校生男子の、名を沢谷雪也という少年であった。
よくある異世界転生の切っ掛けと同じく、学校帰り、友人達と仲良く歩いていた歩道に、大型トラックが道を外れて突進してきたのだった。
狭い歩道である。避けることもできずに彼らは皆、トラックに吹っ飛ばされた。
痛みを覚える暇もなく、彼の意識は唐突に途切れた。
齢十五歳。若い身空での唐突の死である。
わが身の突然の不運を嘆く間もなく、その魂は、異世界にまでふっ飛ばされた。
次の瞬間、雪也が目を覚ました時、そこは白い世界だった。
卵の中だった。
だが、雪也はそこが卵の中ということは認識していない。
温かな湯の中にいるような、まどろみの中、とぎれとぎれに意識はあったのだ。
卵の外からぼんやりと光が漏れ、声も聞こえてくる。
だが……
(眠い……猛烈に眠い)
瞼が落ちてくる。
うとうとと、また安寧の眠りの中に意識を溶け込ませようと思っていた時、卵の外に、どうしても気になって仕方のないモノがあった。
(ああ、目を覚まさないといけない)
焦燥にも似た思いに突き動かされる。
だから、雪也は嘴で猛烈に殻を突っつき始めた。
外から「まだ早い」「だめだ」「まだだめだ」という慌てふためいた声が聞こえるが、雪也は身を揺すり、懸命に嘴で殻を突っつき続けた。
やがてヒビが入り、それが広がり、パリンとか細い音を立てて殻が割れた。
「ピルルルル、ピルルル」と高らかに声を上げた。
その人に気付いて欲しくて、欲しくて懸命に声を張り上げた。
その人がいってしまうかも知れないと思ったから、自分は懸命に猛烈な眠気を払い、殻を嘴で突っつき、卵から顔を出したのだ。
どこにいるのかと懸命にその人を呼び続ける。
そしてようやく。
ようやく、彼は自分の前に姿を現したのだった。
王国の第七王子アルバート=ベルリガード。九歳のまだ子供だった。
黒髪に鳶色の瞳の、端正な面差しの少年は、将来結構なハンサムになるだろうと思われた。
そんなことよりも、ようやく出会えたことが、嬉しくて嬉しくて仕方がなくて。
思わずビタンと彼の足に張りついたのだった。
もう絶対に離さない。離れないという気持ちで。
それは不思議な感情だった。
一目見ただけで、アルバートと言う少年が自分の半身だと分かった。
自分はアルバートの為にこの世に生まれてきたのだ。
彼は自分の主だった。
大好きな大好きな主。
その彼の側にいられて、嬉しくてたまらない。
それはアルバートも同時に感じたようで、まとわりつくルーを抱きしめ、口付けてくれた。
「ルー、ルー、僕の大事なルー」
抱きしめ、抱き上げ、優しく言ってくれる。
「ずっと僕の側にいてね、ルー」
もちろん。
死が二人を分かつまで、ずっと共にいるつもりだった。
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