ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全て暴力で解決~

榊与一

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第56話 枯れ木も山の賑わい

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「がぁっ!?」

魔神帝の拳が俺の顔面に直撃し、鼻が折れ、歯が吹き飛ぶ。

「死ぬがいい!」

追撃の蹴りで俺自身も大きく吹きとばされ、体が急降下して地面に叩きつけられる。

死ぬ程いてぇ。
蹴られた腹が、燃える様に熱い。

「がはっ……」

込み上がって来た物を吐き出すと、それは真っ赤な血だった。
どうやら胃が破裂してしまった様だ。

「くそが……」

俺は歯を食い縛り、受けたダメージを回復魔法で何とか回復させつつ立ち上がる。

「まだ諦めないのか?回復して粘っても、苦しみが増すだけだというのに」

戦いは一方的な物だった。

当然だ。
此方の攻撃は一切効かない。
殴られれば血反吐を履く程のダメージ。

そんな状態で、戦いになる訳がない。

だが、だからなんだ。
膝を屈して、楽になれってか?
ふざけんな。

勝ちの目がなかろうが。
ダメージを与えられなかろうが。

「へっ……最後の最後まで粘って粘って粘りまくって、ほんの僅かでもテメーの手を煩せてやるぜ」

出来る事が嫌がらせだけなら、その嫌がらせを全力で行うのみ。
誰が簡単に死んでやるかよ。

「ぐ……墓地君……」

「ボッチー……」

魔神帝の攻撃を受けて気絶していたビートとリリスが、起き上って来る。
流石にこいつらにまで回復魔法をかける余裕はなかったので、二人の体はボロボロだ。

「お前らはもう寝てていいんだぜ」

嫌がらせは俺の意地だ。
こいつらがそれに付き合う必要はない。

「僕は……これでも一応勇者だからね……最後まで抗うよ」

「そんな夫を支えるのは……妻の役目よ……」

「ありがとう。リリス……」

リリスとビートが見つめあう。
この状況でまだいちゃつけるのだから、大したバカっプルぶりである。

「やれやれ。悪いが、これ以上お前達に時間を割いてやるつもりはない」

上空の魔神帝が手を俺達の方に向け、その掌から光る球体が放たれる。
それは瞬く間に巨大化し、躱す間もなく俺達を包み込んだ。

だが、特にダメージは発生しない。

これは――

「結界か!?」

「頑張ったお前達に褒美をくれてやる。喜ぶがいい。我が最大の一撃をもって、塵も残さず消し飛ばしてやろう」

魔神帝が片手を頭上掲げた。
その手の先には、強烈なエネルギーの塊が生み出される。
それは時間の経過とともに、どんどんと大きくなっていく。

「ちっ!そんなもん喰らってやるかよ!!」

俺は結界に拳を叩き込む。
だがビクともしない。

「糞がっ!割れろ!!」

殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴りまくる。

だが、やはり突破できない。

「リリス!何とかならねぇか!」

リリスは何度も俺の結界を突破している。
そう言う意味で、彼女は結界破りのスペシャリストだ。

「ダメ……結界解除も効かないわ」

駄目か……

頭上を見上げると、魔神帝の生み出したエネルギーはとんでもないデカさにまで膨らんでいた。
とんでもないエネルギー量だ。

「冗談抜きで粉々だな」

ゲーム―オーバー。
そんな単語が俺の頭を過った。

「……」

視線を周囲にむけ、結界内を確認する。

何をしてるのかって?

虫や、小動物でもいないかと探しているのさ。
ひょっとしたら、そいつらを覚醒させればとんでもなく強くなって、現状打破に繋がるかもしれないかなと思ってな。

って――

「はぁ……何やってんだ俺は……」

溺れる者は藁ををもつかむとか言うが、土壇場で虫や小動物にまで期待するとか、完全に終わってる。
死ぬ覚悟は出来ていたつもりだったんだが、全くなさけない話だ。

チラリとビート達の方を見ると、リリスと二人で見つめ合っていた。
抵抗自体諦めて、最後の時間を2人の世界で過ごそうって腹だろう。
ま、別にいいけどな。

俺は自分の頬を、両手で挟み込む様に強く叩く。

「っし……気合入れて、最後まで足掻くとするか」

――最後まで自分らしく、己の拳で戦い抜く。

――そう、自分自身の力で。

そんな自分に酔った事を考えていて、ふと気付く。
そういや、今戦ってる力って神様からの貰い物だったなって。

冷静に考えると、全然自分の力で戦ってねぇよな。
ま、今更か。
貰った力は、覚醒とでも考ときゃいいだろう。

「そういや……覚醒を使った事無かったな」

自分へ。

現状の力に満足してたから、完全に忘れてたぜ。

対象を覚醒させるって能力で。
特に制限はない。
なら、自身も対象に出来るはずだ。

まあ大した効果は期待できないだろうが……

俺自身は、喧嘩がちょっと強いだけの一般人きちがいでしかない。
勇者や魔神帝の娘は愚か、賢者の爺りじちょう以下の伸びしろと考えるのが残当だ。

「ま、枯れ木も山の賑わいっていうからな……」

焼け石に水でも、ないよりはあった方がお得に決まっている。
俺は自分の胸に手を当てる。

「さあ、終わりだ!」

魔神帝の手の先のエネルギーは、、空を覆いつくさんばかりに膨れ上がっていた。
奴がその手を振り下ろすと、それは真っすぐに俺達の頭上に落ちて来る。

まるで太陽が落ちて来るみたいだな。
そんな事を考えつつ。

――俺は覚醒を発動させる。
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