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#41 愛おしく、腰砕け
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少し歩幅も広く厨房に戻ろうとする竜司の背中が、扇のメガネの奥の瞳が映し出す。
同時に、口も大きく開かれていくのを、長谷部と縁司の目が見逃さなかった。
「っちょ! ちょっと!?」
上擦っった声で、はにかんだ表情が焦りの色へと変わる。
しかし、背中を向けている竜司に伝わることはない。
むしろ、そんな彼の声にも竜司は失恋のショックに聞えて居なかったのかもしれない。
歩幅が、広いままだったからだ。
「おー~~い。兄貴ぃいいー」
「お兄ちゃん、忙しいからっ」
縁司の声に反応して、少し声も大きく言い返す竜司の歩幅が小さくなり項垂れた。
そんな竜司の背中を、
「ぇ」
ポンポンと叩かれた。
竜司は縁司だと思い込み眉間にしわを寄せたまま「だから。お兄ちゃんはさ」と涙声で絞り出した口調で振り返ったのだが。
「あのさーおじさんとQRコード交換しない?」
「え」
「おじさんってば、こういう店に行くから連れて行くことも出来るんだよw」
「あの…」と戸惑ったまま、表情も固まる竜司に扇も肩を竦ませた。
「ダメかな?」
細められる瞳と視える白い歯。
「僕の方が、…あの、おじさんだよ?」
「見えないからーむしろ私の方が年上みたいじゃないかw」
「気に、…ならないんですか?」
「なんないよ。全っっっっ然w」
扇の指先が肩に触れ、そこから踊るようになぞられ頬へと振れる。
(って言われてもぉう~~僕が気にするんだよぉうぅうう!)
返事に迷う竜司だったのだが、そこに。
「もう長いってばー兄貴も仕事に戻らなきゃでしょーだから、出すもん出してちゃちゃっとさー」
縁司が口をへの字に手を上に寄越せと招いた。
「縁司君ンん~~」
「ほらほらー」と眉間にしわを寄せる縁司に、震える手で左右に振る。
「なんでだよー」
「携帯持って仕事しないよぉ」
至極普通の言い返しに、
「持って来いよっ!」
キレた口調で指を差す縁司に竜司も「ぅ、うん…」と小走りに向かう。
「ったく。やれやれだぜ」
「あのさー縁司君?」
「え? なんすかー~~」
「本物だどっちなにかなぁー?」
「なんなんすかー~~もぉうー~~w」
疑惑と好奇心からの質問。
どちらがどちらであれ。
扇の気持ちも変わらないのだが。
「どっちも何も、そこに在ったのが本物だよw」
縁司は言うつもりもない。
太々しい態度の彼に扇もため息を吐いた。
「子どもはいいなぁー~~羨ましいったらないよw」
「はァ?」と扇を見る縁司の目が険しいものに変わる。
まるで大嫌いな人間を、敵対するような真似だ。
「大人をいいように弄んで丸め込もうともがくなんて真似はね。お子様しかしないんだよ」
扇の縁司を窘める言葉に、
「でもそれってさ? 逆にいうと「そうだよ」ってことじゃん? 分かってて聞くなんて性格悪くねぇかな、その大人ってのもさ????」
拙くも長谷部が聞き返したのだが、扇も頭を掻き席に戻り長谷部のカップを奪うと飲み干した。
扇の大人げのない行為に、長谷部もあんぐりと見据えていた。
「兄貴の奴、遅いなぁ!」
腕を組み、脚をパタパタと感情のままに動かして、竜司が行った先を見据えた。
裏に戻った竜司は腰砕け中で立てない。
「っちょっと! 竜司さん?!」
「何? どうしちゃったんですか~~あーもー~~っ!」
ともみと恵が苛立っていた。
「わわわわ、わかんないんだよぉうぅうう~~」
同時に、口も大きく開かれていくのを、長谷部と縁司の目が見逃さなかった。
「っちょ! ちょっと!?」
上擦っった声で、はにかんだ表情が焦りの色へと変わる。
しかし、背中を向けている竜司に伝わることはない。
むしろ、そんな彼の声にも竜司は失恋のショックに聞えて居なかったのかもしれない。
歩幅が、広いままだったからだ。
「おー~~い。兄貴ぃいいー」
「お兄ちゃん、忙しいからっ」
縁司の声に反応して、少し声も大きく言い返す竜司の歩幅が小さくなり項垂れた。
そんな竜司の背中を、
「ぇ」
ポンポンと叩かれた。
竜司は縁司だと思い込み眉間にしわを寄せたまま「だから。お兄ちゃんはさ」と涙声で絞り出した口調で振り返ったのだが。
「あのさーおじさんとQRコード交換しない?」
「え」
「おじさんってば、こういう店に行くから連れて行くことも出来るんだよw」
「あの…」と戸惑ったまま、表情も固まる竜司に扇も肩を竦ませた。
「ダメかな?」
細められる瞳と視える白い歯。
「僕の方が、…あの、おじさんだよ?」
「見えないからーむしろ私の方が年上みたいじゃないかw」
「気に、…ならないんですか?」
「なんないよ。全っっっっ然w」
扇の指先が肩に触れ、そこから踊るようになぞられ頬へと振れる。
(って言われてもぉう~~僕が気にするんだよぉうぅうう!)
返事に迷う竜司だったのだが、そこに。
「もう長いってばー兄貴も仕事に戻らなきゃでしょーだから、出すもん出してちゃちゃっとさー」
縁司が口をへの字に手を上に寄越せと招いた。
「縁司君ンん~~」
「ほらほらー」と眉間にしわを寄せる縁司に、震える手で左右に振る。
「なんでだよー」
「携帯持って仕事しないよぉ」
至極普通の言い返しに、
「持って来いよっ!」
キレた口調で指を差す縁司に竜司も「ぅ、うん…」と小走りに向かう。
「ったく。やれやれだぜ」
「あのさー縁司君?」
「え? なんすかー~~」
「本物だどっちなにかなぁー?」
「なんなんすかー~~もぉうー~~w」
疑惑と好奇心からの質問。
どちらがどちらであれ。
扇の気持ちも変わらないのだが。
「どっちも何も、そこに在ったのが本物だよw」
縁司は言うつもりもない。
太々しい態度の彼に扇もため息を吐いた。
「子どもはいいなぁー~~羨ましいったらないよw」
「はァ?」と扇を見る縁司の目が険しいものに変わる。
まるで大嫌いな人間を、敵対するような真似だ。
「大人をいいように弄んで丸め込もうともがくなんて真似はね。お子様しかしないんだよ」
扇の縁司を窘める言葉に、
「でもそれってさ? 逆にいうと「そうだよ」ってことじゃん? 分かってて聞くなんて性格悪くねぇかな、その大人ってのもさ????」
拙くも長谷部が聞き返したのだが、扇も頭を掻き席に戻り長谷部のカップを奪うと飲み干した。
扇の大人げのない行為に、長谷部もあんぐりと見据えていた。
「兄貴の奴、遅いなぁ!」
腕を組み、脚をパタパタと感情のままに動かして、竜司が行った先を見据えた。
裏に戻った竜司は腰砕け中で立てない。
「っちょっと! 竜司さん?!」
「何? どうしちゃったんですか~~あーもー~~っ!」
ともみと恵が苛立っていた。
「わわわわ、わかんないんだよぉうぅうう~~」
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