私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

文字の大きさ
64 / 278
第2章 王都へ

110 別れと決意

しおりを挟む
楽しい時間はあっという間に終わり、ルーク君とのお別れの時がやって来た。

「「「「お世話になりました!」」」」

みんなでクラウジアさんたちにお礼を言う。

「学校がなければ、本当はもっといて欲しいところだよ」
「フィッツ町にお越しの際は、是非我が家に泊まって下さいね」

玄関前でクラウジアさん一家と使用人一同が私たちを見送ろうと集まってくれていた。

「手紙を送るから、絶対にルークも手紙をくれよ」
「うん!絶対に送るよ」
「ハルにだけじゃなくて、あたしたちにも送ってよ」
「わたしたちも送るからね」
「楽しみにしてるね!」
「うんっ!みんなにも絶対送るから!」

クラウジアさんが用意してくれた馬車に乗り込み、私たちは窓から顔を出すと、ルーク君の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。








「行ってしまったな」
「うん…」

馬車から顔を出しているみんなに向かって、ルークは手を振り続けながら、クラウジアに話しかける。

「お父様、お願いがあるんだけど」
「お願い?何か欲しいものでもあるのか?」

昨日の食堂の時も驚いたが、必要以上に自分の感情を表さない息子がはっきりと口に出してお願いをしてきた事に喜びを感じる。
何でも叶えてやろうと鷹揚に構えていると、ルークの口から予想外の言葉が飛びだす。

「僕も王立魔法学校に行きたいんだ」
「王立魔法学校に⁉️」

馬車はすでに見えなくなっていた。
ルークはクラウジアを正面から見つめる。

「鑑定をしてもらった時、僕の能力なら王立魔法学校に入学できるって神官長様は仰っていたでしょう?」
「確かに言ってはいたが…。この町の学校じゃダメなのか?」
「みんなの行く学校に行きたいんだっ」
「王立魔法学校は王都にある学校でしょう?絶対、ダメよっ!」

二人の会話を静かに聞いていたマーガレットが耐え切れなくなり、口を挟む。

「お母様」
「確かにあのお花が効いて今は元気よ。でも、それがずっと続く保証はないのよ?それなのに私たちと離れて生活するなんて」
「聞いて、お母様。みんなには黙っていたけど、今まではどんなに症状が良くなっても、ずっとこの辺りが冷たくて、治ってないんだってわかってた」

そういって、ルークは肺の辺りを押さえる。

「でも、今は違うんだ。咳が出そうな気配もしないし、この辺りが冷たくもない。いつもあった倦怠感も全くしないの。僕は本当に治ったんだ!」


ルークは昨日から決意していたことがあった。
サラは気づかれていないと思っているようだけど、サラが回復魔法を使って自分を治してくれたのはわかっていた。
サラの手が自分に触れた瞬間に暖かなものが体を駆け巡り、倦怠感や胸の辺りの冷たさがきれいに消えたのだから、当人が気づかないはずがない。
それに、最初は回復魔法が使えない事を申し訳なさそうにしていた姿や突然の不可解な独り言などから、サラは加護持ちだろうことも推測していた。

あんなに嘘をつくのが下手な子なんて初めて会ったよ。
アミーにどうしたのか聞かれたときの、サラの誤魔化し方を思い出して、思わずおかしくなる。
ハルとキャシーは気づいていないようだったが、アミーは気づいていたように思う。気づいていて、ルークと同じようにサラのために黙っていたのだろう。

今までの治療が全く効いていなかったとルークの口からはっきりと言われ、動揺している父親をちらりと見る。
父は尊敬しているけれど、根っからの商売人だ。きっとサラが最上級回復魔法を使えると知ったら、ルークの命の恩人といえども、利用しようと考えるだろう。
そういう人たちからサラを守りたいと思った。
そのためにはルークもサラたちと同じ学校に通う必要がある。


「お父様がこの町に住んでいる一番の理由は僕のためでしょ?」
「あ、ああ。そうだが」
「なら、一緒に王都に引っ越せばいいんだよっ」
「王都へか?」
「うん!学校がお休みの日は家に帰るから、お願いっ!初めてできた友達なんだ。僕をみんなと同じ学校に行かせて」

ルークは両親が折れるまで説得をし続け、ついには条件付きながら入学を認めてもらうことができた。

「とりあえず、一ヶ月様子を見て症状が出なかったら、学校に行くことを認めよう」
「ありがとう!」
「途中入学になるわけだから、大変だぞ?それでも良いんだな?」
「はい!」

みんなと一緒に入学できないのは残念だけれど、その間に勉強や体力作りを頑張ればいい。
せっかくだから、入学することはギリギリまで黙っていよう。
みんなと再会した時のみんなの様子を想像して、ルークは胸を弾ませるのだった。
しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。