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第2章 王都へ

110 別れと決意

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楽しい時間はあっという間に終わり、ルーク君とのお別れの時がやって来た。

「「「「お世話になりました!」」」」

みんなでクラウジアさんたちにお礼を言う。

「学校がなければ、本当はもっといて欲しいところだよ」
「フィッツ町にお越しの際は、是非我が家に泊まって下さいね」

玄関前でクラウジアさん一家と使用人一同が私たちを見送ろうと集まってくれていた。

「手紙を送るから、絶対にルークも手紙をくれよ」
「うん!絶対に送るよ」
「ハルにだけじゃなくて、あたしたちにも送ってよ」
「わたしたちも送るからね」
「楽しみにしてるね!」
「うんっ!みんなにも絶対送るから!」

クラウジアさんが用意してくれた馬車に乗り込み、私たちは窓から顔を出すと、ルーク君の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。








「行ってしまったな」
「うん…」

馬車から顔を出しているみんなに向かって、ルークは手を振り続けながら、クラウジアに話しかける。

「お父様、お願いがあるんだけど」
「お願い?何か欲しいものでもあるのか?」

昨日の食堂の時も驚いたが、必要以上に自分の感情を表さない息子がはっきりと口に出してお願いをしてきた事に喜びを感じる。
何でも叶えてやろうと鷹揚に構えていると、ルークの口から予想外の言葉が飛びだす。

「僕も王立魔法学校に行きたいんだ」
「王立魔法学校に⁉️」

馬車はすでに見えなくなっていた。
ルークはクラウジアを正面から見つめる。

「鑑定をしてもらった時、僕の能力なら王立魔法学校に入学できるって神官長様は仰っていたでしょう?」
「確かに言ってはいたが…。この町の学校じゃダメなのか?」
「みんなの行く学校に行きたいんだっ」
「王立魔法学校は王都にある学校でしょう?絶対、ダメよっ!」

二人の会話を静かに聞いていたマーガレットが耐え切れなくなり、口を挟む。

「お母様」
「確かにあのお花が効いて今は元気よ。でも、それがずっと続く保証はないのよ?それなのに私たちと離れて生活するなんて」
「聞いて、お母様。みんなには黙っていたけど、今まではどんなに症状が良くなっても、ずっとこの辺りが冷たくて、治ってないんだってわかってた」

そういって、ルークは肺の辺りを押さえる。

「でも、今は違うんだ。咳が出そうな気配もしないし、この辺りが冷たくもない。いつもあった倦怠感も全くしないの。僕は本当に治ったんだ!」


ルークは昨日から決意していたことがあった。
サラは気づかれていないと思っているようだけど、サラが回復魔法を使って自分を治してくれたのはわかっていた。
サラの手が自分に触れた瞬間に暖かなものが体を駆け巡り、倦怠感や胸の辺りの冷たさがきれいに消えたのだから、当人が気づかないはずがない。
それに、最初は回復魔法が使えない事を申し訳なさそうにしていた姿や突然の不可解な独り言などから、サラは加護持ちだろうことも推測していた。

あんなに嘘をつくのが下手な子なんて初めて会ったよ。
アミーにどうしたのか聞かれたときの、サラの誤魔化し方を思い出して、思わずおかしくなる。
ハルとキャシーは気づいていないようだったが、アミーは気づいていたように思う。気づいていて、ルークと同じようにサラのために黙っていたのだろう。

今までの治療が全く効いていなかったとルークの口からはっきりと言われ、動揺している父親をちらりと見る。
父は尊敬しているけれど、根っからの商売人だ。きっとサラが最上級回復魔法を使えると知ったら、ルークの命の恩人といえども、利用しようと考えるだろう。
そういう人たちからサラを守りたいと思った。
そのためにはルークもサラたちと同じ学校に通う必要がある。


「お父様がこの町に住んでいる一番の理由は僕のためでしょ?」
「あ、ああ。そうだが」
「なら、一緒に王都に引っ越せばいいんだよっ」
「王都へか?」
「うん!学校がお休みの日は家に帰るから、お願いっ!初めてできた友達なんだ。僕をみんなと同じ学校に行かせて」

ルークは両親が折れるまで説得をし続け、ついには条件付きながら入学を認めてもらうことができた。

「とりあえず、一ヶ月様子を見て症状が出なかったら、学校に行くことを認めよう」
「ありがとう!」
「途中入学になるわけだから、大変だぞ?それでも良いんだな?」
「はい!」

みんなと一緒に入学できないのは残念だけれど、その間に勉強や体力作りを頑張ればいい。
せっかくだから、入学することはギリギリまで黙っていよう。
みんなと再会した時のみんなの様子を想像して、ルークは胸を弾ませるのだった。
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