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第2章 王都へ

133 王都の教会④

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来た道を戻る間、フェ様は何かを考えているようだった。
声をかけるのも憚れて、黙ってフェ様と神官様たちの後ろをついていく。

「折角なので、礼拝堂に行ってみますか?」
「え?」

ずっと黙っていたフェ様から礼拝堂へのお誘いを受ける。

「教会本部の礼拝堂はとても見ごたえがありますよ」
「行きたい、です」

特にこの後に予定があるわけではないので、フェ様の誘いを受けることにする。

「では、このまま礼拝堂へご案内します」
「うむ。礼拝堂についたら、後は適当なところで帰る」
「かしこまりました」

礼拝堂にはいると、まず祭壇の奥のステンドグラスに目を奪われる。
ステンドグラスの中央には神様の姿があり、その周りを様々な属性の精霊様たちが取り囲んでいる。

「すごく綺麗ですね」
「上をご覧ください」
「わぁっ!」

天井には四つの絵が描かれており、神話の時代を再現しているようだ。

「創世記のお話ですね」

一枚目は神様が天地を創生された場面で、太陽や海や大地、空などに宿った精霊様の姿も描かれている。
二枚目は精霊様の協力のもと、神様がこの土地に生物を創造した場面で、竜や聖獣、エルフにドワーフ、人間や獣人の姿が描かれていた。
三枚目はどこからかやって来た邪神が魔族や魔物を引き連れて攻め込んできた場面で、上部には神と邪神の戦いが、下部には魔族や魔物を倒そうとする竜や聖獣の姿と、精霊様の力を借りて戦う人々の姿が描かれていた。
最後の四枚目は邪神を封印し、力尽きた神様が永い眠りにつく場面で終わっていた。
魔物はそのときの戦いで全てを倒すことができず、未だに人々の脅威となっているけど、魔族は忽然と姿を消してしまい、それ以降に姿を見た者はいない。

神様が眠りについたことで、今まで他種族関係なく仲良く暮らしていた生活に変化が起こる。まず大地に宿る魔力が減り、精霊様のお姿が見えなくなった。竜と聖獣様は魔力が多く宿る場所を探しに旅立つと、人々の中でいさかいが増えるようになった。人の中で一番魔力が高く、寿命が永いエルフが他の種族をバカにするようになり、エルフだけの国を興すと、ドワーフもそれに対抗して国を興した。最後に残った人間と獣人も考え方の違いから袂を分かち、遂には同種族同士で暮らすようになった。
そこから今日のように種族間で交流したり、他種族が仲良く暮らす国ができる迄には色々なことがあったらしいけれど、そこはまだ教えてもらってないんだよね。学校で教えてもらえるかな?

「見事な絵でしょう」
「はいっ!」

本当はマーブルにも見せてあげたかったけれど、礼拝堂の中だったので諦める。
この時、もし、ポシェットの中にいるマーブルの様子を見るか、天井の絵を悲しそうに見つめるリードの姿に気づくことができていたら、語られることのなかった神話の真実をこの段階で知ることができていたかもしれない。でも、私は全く気づくことなく、フェ様と天井をしばらく見つめた後、祭壇でお祈りをしてから教会を後にするのだった。

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