私がいつの間にか精霊王の母親に!?

第３章 王立魔法学校入学編

184 追いかけっこの結果

結論から言うと、捕まりました。
よくよく考えると、成人前の子どもたちの中で足が早いのは当たり前でした。
私が一番年上なんだから、負けるはずないよね。
自信満々で捕まらない気でいた自分が恥ずかしいっ。

「サラちゃんは十分に頑張ってたよぉ？」
『この者の申す通りです。あの状態で10分も持ちこたえたのですから、十分にご健闘されたかと』
「ありがとう…」

しょんぼりしていると、同じく捕まったエミリちゃんと側でずっと応援してくれていたモスが慰めてくれた。
マーブルもこちらを心配そうに見つめてる。
だけど、すぐには立ち直れないかも。
ああ、10分前の自分に戻れたら！
ちなみにまだ授業中で、私とエミリちゃんは捕まってしまったので、円の中で待機中だ。
円の周りには2人の追いかける側の生徒が見張りをしていて、助けてもらうのは難しそうだ。

「はぁはぁっ。じゅ、10人対53人だからこっちの方が有利だと思ってた、けど、10人とも足が早すぎ、よっ！」

あ、新たにレイラちゃんも仲間に加わりました。

「魔法を使ってなくてあの足の早さなんて、絶対に風の精霊様の好意持ちに違いないわ」
「好意持ちだと違うの？」

先程の事もあるし、あまり私から話しかけない方が良いとはわかっているけれど、レイラちゃんの話が気になって、つい話しかけてしまう。

「そりゃあ、って、何で私が貴女に教えなくちゃいけないのよ」

案の定、断られてしまった。
レイラちゃんと仲良く話す事ができるのは、いつになるのやら。くすんっ。

「わ、わたしもぉレイラちゃんに教えて欲しいなぁっ」
「…風の精霊様の好意持ちは魔法を使わなくても足が早くなるのよ。ようは補正がかかるわけね」
「「そうなんだぁ！」」
「だから、エミリはともかく、貴女はこんな早々に捕まることはないはずなんだけどね？」
「はぅっ！」
「レイラちゃんっ！」

レイラちゃんの言う通り、加護持ちなのに早々に捕まるなんて、私ってば実は思っているよりもずっと運動神経に問題があるのかもっ！

『サラ様の足は遅くなんてありません！大勢で追いかけられたのです。魔法も使えずに補正だけで逃げ切るのは無理があります』
(でも、せっかくティネに加護をもらったのに、こんなに簡単に捕まるなんて、ティネにがっかりされちゃわないかな)
『風のがサラ様に対してがっかりするなど、あり得ません！逆にサラ様にそんな風に思われていると知ったら悲しむかもしれませんが』
（そうかな？）
『断言できます』

私がモスに慰められている横で、エミリちゃんがレイラちゃんにお説教をしていた。

「レイラちゃんったら、サラちゃんは5人がかりで追いかけられたのよぉ？さすがに5人で囲い込まれたら逃げ場がなくって、捕まるのは当然よぉ！」
「え？貴女５人から追いかけられてたの？」
「うん…。でも、レイラちゃんの言う通り加護持ちなら逃げ切れなくちゃダメだよね」
「ま、まぁね。でも、流石に5人は無理があるかも？」
「そうだよぉ！ほら、追いかけ役の子も今はバラバラに逃げてる子たちを追いかけてるでしょ？サラちゃんだけ大勢に追いかけられたのはぁ、きっとサラちゃんが加護持ちだから、そうしないと勝てないと思ったんじゃないかしらぁ？」
「そ、そうかなっ！」
「うん！」

ようやく希望の光が見えてきた！
と喜んでいたのもつかの間、レイラちゃんの冷静な分析にがっくりと肩を落とすことに。

「だったら、この子が最後の一人になったところで全員で追いかけた方が良かったんじゃない？」

確かに！

「もう！レイラちゃん！」

結局私の足は遅いのかな？早いのかな？どっちなんだろう？
エミリちゃんがレイラちゃんに向かって、ぷくりと頬を膨らませる中、私は一人首をかしげるのだった。

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2/10 名前の訂正です
誤:「わ、わたしもぉエミリちゃんに教えて欲しいなぁっ」
正:「わ、わたしもぉレイラちゃんに教えて欲しいなぁっ」