冒険者から強制的に乙ゲーヒロイン!?~いえ、私の幸せはその中にはありませんっ!~

クリーム色

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各キャラパート

ガーネットルート

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楽しかった冒険の日々が頭をよぎり、目の前の光景とのギャップに寂しさというか、悲しみのような感情が沸いてくる。

わいわいキャンキャンくどくどと言い合う5人を前に、こぼれた深いため息。
それに最初に気付いたのはガーネットだった。

「おっ?なんだよリディア、辛気くせー顔して。ほら、お前も体鈍ってんだろ?一狩りしてスカッとしよーぜ!」

「あーうんそーだね」

なんか面倒になって投げやりな返事をしたら、ガーネットの背後が赤くキラキラ輝く。

「おっし!そーこなくっちゃな!」

あー、キラキラが目に痛いなぁ…なんて思っていたら。

いつの間にか場面が変わって暗い洞窟の入り口で、どしゃ降りの空を見上げていた。

「こんなもんか……【ファイア】!おーいリディア!火ぃ付いたぞ~」

集めた木片で焚き火を作ったガーネットが私を呼ぶ。びしょ濡れなのに何故かメイクはバッチリ崩れてない。
しかし、そんなガーネットの姿を見た途端、びしょ濡れだったことを自覚し、急に寒くなった。

「へ…っくしゅ!」

「ほら早く来いよ、風邪引くぞ」

震える体を押さえながらも、ガーネットの方へ行くのは躊躇われた。てか、行ったらアウトな気がひしひしとする。
だって、ついさっき想像した通りになってるし、私若干服が透けてるし、ガーネットが明らかにスチル用のキメ顔だし、これ完全なフラグでしょ。

あのゴテゴテの革ジャンを二人で仲良く羽織って、何故か前髪で目元が隠れてる照れた表情の私と、上手い具合に雫が滴るガーネットのキラキラ2割増しのスチル絵なんか取らせてなるものかっ!

恐らくこの後、
「どうする?
▽側に行く
 行くのを躊躇う」
なんて選択肢が出るけど、結局同じ展開になるんでしょ!?

こうなったら、 をやるしかない。

私は目を閉じ、意識を集中させて大気中の気を集めていく。集まった気はゆらゆらと私を包み、オーラのようにほんのりと発光をし始めた。

「お、おい…?リディア?」

「はぁあぁあああ……はあっ!!」

戸惑うガーネットを無視して、高まった気を一気に解放した。
水は一瞬で蒸発して髪も服も乾き、寒さも吹っ飛び、全身に力が満ちていく。

冒険時代、唯一の肉弾戦をしていた私の奥義の一つ。

超肉体強化超ブーストモード

体内の気を練り上げ、身体能力を向上させる【肉体強化ブーストモード】の上位互換。大気中の気を己の物とし、その気になれば水の上を走り、空も飛べちゃう!…くらいに身体能力が上がる。
魔王戦では、常時発動必須の技だった。

「・・・。」

予想外の展開にポカンと口を開け、こちらをただ見つめるガーネット。側で燃えていた焚き火は、私の発する気でふしゅんと消えた。

「あぁ、ごめん。焚き火消えちゃったね。今乾かしてあげるよ」

握った拳に気を纏わせ、軽く振るう。
放たれた気は衝撃波となってガーネットに向かって飛んでいき、当たる寸前で私の意思により爆ぜ、彼を濡らしていた水分だけ吹き飛ばした。
強い風となった気を受けた瞬間、ガーネットがすごいブサイクな顔になったけど見なかったことにしよう。

「さて、と。私、用を思い出したから先に帰るね!」

「……ぇ、帰…?でも雨が…」

「ん?この状態なら雨粒避けれるし、村までも一瞬だから大丈夫。ごめんね誘ってくれたのに。夜までは降らないと思うからガーネットは存分に狩りを楽しんで来て?それじゃーね!」

そう捲し立てると、足に力を込めて地面を蹴る。逃げるが勝ち。フラグを力業でへし折り勝利をもぎ取った私は、一目散にその場から立ち去るのだった。

(まさか、奥義の一つまで使う羽目になるとは…、恐るべし乙ゲー!)

こうして、ガーネットルートのイベントを無事、回避することに成功した私なのだった。
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