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始まりの村 2
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「トニー!」
駆け寄りながら前を歩く後ろ姿の名を呼ぶ。
「あぁ、リディア」
振り向いてニコリと微笑んでくれた彼はトニー。年齢26歳。この村出身では唯一の現役冒険者(私を除く)だ。
私が冒険に出ると決めた時、戦いのいろはから装備、買い物の仕方まで先輩冒険者として一から私を指導してくれた。まぁ、ゲームで言うところのチュートリアル説明役ポジションだったというわけ。
実際、優しくて頼りがいのある兄のような存在であり、厳しく指導してくれた師匠でもあり、彼なくしては私は私でなかったと断言出来る大事な人だ。
「脚立なんか持ってどこかに行くの?」
彼は屋根に登る用の大きな脚立を軽々と肩に担ぎ、もう片方の手で大きな工具箱を携えていた。
「はす向かいのおばさんに呼ばれててね。風景画におばさん家の風見鶏が入ってるからハイグラフィック化されるんだけど、ドット絵の本人では細かい修理が難しいらしくてさ」
そう言って肩を竦めたトニーの視線の先、かなり先だけど確かに丁寧な造りの風見鶏が屋根の上で傾いているのが見えた(私の視力5.0だから村の端から端までギリ見えるのだ)。
「あーなるほど。じゃあ私、暇だし手伝うよ!脚立か工具箱持とうか?」
「そうか?助かる」
ふわりと頬笑むトニーの背景は、これまたふんわりと癒しのオーラが漂っている。
助かると言いつつも重くないからと私にどちらも持たせることはなく、他愛ない話をしながら並んでおばさん家へ向かう。
今回の設定でも、彼は私のサポーターとして色々な説明やアドバイスをくれる立ち位置となっており、ハイグラフィック化されているのだ。
短くさっぱりとした茶髪と同じく茶色の瞳は、彼の素朴で飾りっ気のない素敵な性格をそのまま写したよう。それに加え、側にいると心の底からほっとするような安心感。
私なんかよりよっぽど、彼の方が平和の象徴と言えるのではないだろうか。
この平和をずっと感じていられたらどんなに幸せなんだろう…と、浸っていた私の考えを打ち消すように、それは聞こえてきた。
キラキラーン☆
(げっ!?)
「おぅリディア!探したぞ!」
「ご機嫌よう。リディア」
聞きたくなかった効果音と無駄に美声な二人のボイスに、ぎぎぎ…とぎこちなく後ろを振り返る。
視界に捉えたのは赤と青の二人の人物。
【火属性】の赤い短髪につり目の「ガーネット」と、青色の長髪を後ろでひとつ結びにした高身長の【水属性】「サファイア」である。
「攻略対象が来たから俺は退散するよ。頑張れ」
こそりと小声で話しかけてきたトニーは一人で先に行ってしまう。
そう、ここでの私は攻略者であり、ガーネット、サファイアを含む5人の「攻略対象者」がメインキャラとなっている。
攻略とは、対象者である彼らと会話し、イベントをこなし、親愛度を深めて最後はくっつくこと。
だが!私には全く!微塵も!その気はない!!
しかし、トニーは振り返ることもなく颯爽とおばさん家へ向かい、そして家の向こうへと消えた。
背後からは無駄にキラキラを背負って、こちらへ向かってくる会いたくなかった二人。
(うえーん、トニー…!!)
置き去りにされた私は、彼の消えた方向を名残惜しく見る他なかった。
駆け寄りながら前を歩く後ろ姿の名を呼ぶ。
「あぁ、リディア」
振り向いてニコリと微笑んでくれた彼はトニー。年齢26歳。この村出身では唯一の現役冒険者(私を除く)だ。
私が冒険に出ると決めた時、戦いのいろはから装備、買い物の仕方まで先輩冒険者として一から私を指導してくれた。まぁ、ゲームで言うところのチュートリアル説明役ポジションだったというわけ。
実際、優しくて頼りがいのある兄のような存在であり、厳しく指導してくれた師匠でもあり、彼なくしては私は私でなかったと断言出来る大事な人だ。
「脚立なんか持ってどこかに行くの?」
彼は屋根に登る用の大きな脚立を軽々と肩に担ぎ、もう片方の手で大きな工具箱を携えていた。
「はす向かいのおばさんに呼ばれててね。風景画におばさん家の風見鶏が入ってるからハイグラフィック化されるんだけど、ドット絵の本人では細かい修理が難しいらしくてさ」
そう言って肩を竦めたトニーの視線の先、かなり先だけど確かに丁寧な造りの風見鶏が屋根の上で傾いているのが見えた(私の視力5.0だから村の端から端までギリ見えるのだ)。
「あーなるほど。じゃあ私、暇だし手伝うよ!脚立か工具箱持とうか?」
「そうか?助かる」
ふわりと頬笑むトニーの背景は、これまたふんわりと癒しのオーラが漂っている。
助かると言いつつも重くないからと私にどちらも持たせることはなく、他愛ない話をしながら並んでおばさん家へ向かう。
今回の設定でも、彼は私のサポーターとして色々な説明やアドバイスをくれる立ち位置となっており、ハイグラフィック化されているのだ。
短くさっぱりとした茶髪と同じく茶色の瞳は、彼の素朴で飾りっ気のない素敵な性格をそのまま写したよう。それに加え、側にいると心の底からほっとするような安心感。
私なんかよりよっぽど、彼の方が平和の象徴と言えるのではないだろうか。
この平和をずっと感じていられたらどんなに幸せなんだろう…と、浸っていた私の考えを打ち消すように、それは聞こえてきた。
キラキラーン☆
(げっ!?)
「おぅリディア!探したぞ!」
「ご機嫌よう。リディア」
聞きたくなかった効果音と無駄に美声な二人のボイスに、ぎぎぎ…とぎこちなく後ろを振り返る。
視界に捉えたのは赤と青の二人の人物。
【火属性】の赤い短髪につり目の「ガーネット」と、青色の長髪を後ろでひとつ結びにした高身長の【水属性】「サファイア」である。
「攻略対象が来たから俺は退散するよ。頑張れ」
こそりと小声で話しかけてきたトニーは一人で先に行ってしまう。
そう、ここでの私は攻略者であり、ガーネット、サファイアを含む5人の「攻略対象者」がメインキャラとなっている。
攻略とは、対象者である彼らと会話し、イベントをこなし、親愛度を深めて最後はくっつくこと。
だが!私には全く!微塵も!その気はない!!
しかし、トニーは振り返ることもなく颯爽とおばさん家へ向かい、そして家の向こうへと消えた。
背後からは無駄にキラキラを背負って、こちらへ向かってくる会いたくなかった二人。
(うえーん、トニー…!!)
置き去りにされた私は、彼の消えた方向を名残惜しく見る他なかった。
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