花の香りに誘われて

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病院に着くなり直ぐに診察室へと呼ばれた。
僕の担当医は千秋先生という人で昔からΩについて研究している人だ。
海外にも僕と似たΩがいたらしいが30代になって急に発情したことからその場にいたαやβに襲われ命の危機まで陥ってしまったらしい。
幸い一命を取り留めたが、一度受けた傷は癒えず精神状態が不安定だそうだ。

そういった状態を１つでも防ぐ為に千秋先生は僕に通院を強く勧めたのだ。


「さて、先月と比べて変化はあったかな？」

いつもこの質問から始まる診察に僕の返す言葉もいつも同じだ。いいえ、と。


「先月アメリカで発表があったんだけどね、一応君に渡しておこうと思ったものがあるんだ。」


はい、と僕の手に置いたのは注射器。


「この注射器ね緊急抑制剤なんだけど、前処方した錠剤と比べて即効性で効果が強いんだ。その代わり分副作用に吐き気と頭痛を伴うことが報告されている。

もしかしたら使う時がないかもしれないが、菅野くんの場合は発情期のフェロモンが少なくて期間が短い分何かの衝撃で爆発的な発情期が来るかもしれない。
その時にこれを迷わず使って欲しいんだ。」


確かにまだ発情期を体験していないぼくにとっては発情は未知だ。


「この薬は肌身離さず毎日持ち歩くこと。いいね？」


僕は先生の言葉に強く頷いた。