だから人間が好き

韋虹姫 響華

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第二章 〜鳥達は旅立つ〜

煙たがれている理由

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 公園ってのはいいものだ。
 陽向を全身に浴びることの出来る至福のひとときが、吾輩には与えられるからである。なのだが、この公園には一つだけ不満というものもある。

「またあの婆ちゃん出たってよ」
「鳥達にエサをやってる迷惑婆ちゃんだろ?ママが近付くなってさ。なぁ、あっちの遊具行こうぜ!」
「そうだな、行こ行こ」

 今駆けて行った子ども達も言ったとおり、この公園には野鳥にエサをやる迷惑な人が居る。
 唯一、この最高の瞬間に雑音を奏でて吾輩の神経を逆撫でするヤツら。そんなヤツらにご飯なんて与える迷惑な老婆が居るのだ。今日も首を上げていつものベンチを睨みつけると、当然の日課のように腰掛けて頭陀袋ずだぶくろからエサを手に取ってばら撒いている。
 とうとう我慢出来なくなってきた吾輩は、クレームを言うのではなく態度で示してやることにした。その老婆の膝元に寄って行き、シャァァっと威嚇してやるも鳥達ですらエサに夢中で気付いていない様子だった。

「おや、猫ちゃん。すまないね、わたしゃ猫ちゃんが食べられそうなものは持っとらんよ」

 いや、物乞いしている訳ではないのだが。
 何ともマイペースな年寄りだ、いやマイペースなのはこのにっくき鳩と小鳥達もである。吾輩が飛びかかれば、たちまちにして吾輩がこの公園に居られなくなる可能性が高まってしまう。
 それ故に手が出せないというのは、何とももどかしいものだ。こんな時、ご主人ならどうするのだろうかと心底疑問に思えてくる。

「この辺も変わっちまったねぇ……。わたしゃね、最近あの子の声を聞いたような気がしてこの公園に来るようになったんじゃよ」

 おいおい、まさか猫である吾輩相手に語り出したんじゃないだろうな、この老婆?でも、他にこの辺に人なんていやしないし、エサに夢中なヤツらに話しかけているとも考えづらいな。

「もう逢えないのかねぇ……あの子には」
「ニャオ?」
「いやぁね、昔のことなんじゃけんど、かわいい孫娘が居ってなぁ……」

 マジで吾輩に声掛けていたのか。半信半疑に鳴き声で返事したら、こっち見ているよなこれ?明らかに吾輩に話しかけて来てるやつだ。それになんだが、寒気がする。なんていうか鳥肌立ってるっていうやつかこれが。ってあれ?急に声が静かになった。
 ふと首を起こすと、エサを食べ終えたヤツらが一斉に飛び去って行った。いつの間にか、あの老婆の姿もなくなっている。もしかして一瞬、吾輩は寝ていたのか?昼寝をしっかりしていて、夢の中で老婆と会話していたってのか?そうなると、尚更ご機嫌ななめまっしぐらだぜ。
 実際に昨日も一昨日も、あの老婆を見て不機嫌になっていたはずなのに。そのせいで夢まで見たってのか?そう思うけど、とりあえず家へ帰ろう。これが煙たがられている理由なのかもしれないと、吾輩ですら思っているんだ。公園で遊んでいる子ども達にしてみれば、迷惑な話でしかないのだろう。

 それにしても、あの老婆の言っていたことが妙に気になってしまうのは何故なのだろうか?不思議には思うものの、お腹が空いてきた。早いことご主人のくれるキャットフードが食べたいぜ。
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