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24ー1.罰を与えて ※
しおりを挟む両手首を後ろで拘束されたヘンリーは、ベッドの上で膝立ちになってダリアを見上げる。シャツとスラックスだけのラフな格好でこうして拘束されていると、とてもロド帝国の公爵には見えない。ただ身にまとう服で容姿は変えられないため、神の遣いのように美しい顔立ちと鉄製の拘束具はとても背徳的な組み合わせだった。
ダリアは立ったままヘンリーを見下ろす。
どうしてこうなったんだったかしら、とふと冷静になりかけたとき、ヘンリーが口を開いた。
「これで僕を信じてくれる?」
「さあ、どうかしら。脚は自由なんだから、逃げようと思えばいつでも逃げられるでしょう?」
「逃げないよ。ダリアはどうしても僕を信じられないんだね」
ヘンリーだけじゃない。ダリアは誰も信じられなくなったのだ。だからヘンリーのせいというわけではないのに、それでも彼はダリアに自分を信じてほしがった。
「ねえダリア、僕に悪いところがあるなら言って?」
ヘンリーの悪いところ――いいところを聞かれたならすぐに出てくる。優しくて、おおらかで、ダリアのすべてを受け止めてくれる。でも、ヘンリーが優しいのは誰に対してもそうだ。悪いところといえば、それくらいしか見つからなかった。長所は時として短所にもなるという。
確かにダリアは、誰にでも優しくするヘンリーが嫌いだった。
「私以外に優しくしないで」
「ダリア以外に優しくしたことなんてないよ」
「嘘言わないで。ヘンリーが誰にでも優しいから、みんな勘違いするのよ」
「そんなことないのに」
「ヘンリーの思わせぶりな態度が悪いのよ!」
「僕が悪いの?」
「ヘンリーが悪いわ!」
「それじゃあ、罰を与えて」
ヘンリーに囁かれるまま答えていると、いつの間にか流れるように唆されていた。――罰? と一瞬疑問に思いはするものの、ダリアは次第に「罰を与えなければ」という思考に陥っていく。ぐるぐると目を回している心地のまま、ダリアはヘンリーを見下ろした。
ダリアはワンピースの裾を持ち上げていき、片脚を上げる。すらりとした長い脚をヘンリーの肩のあたりに乗せ、そのまま軽く蹴とばした。
両手を後ろで拘束されているヘンリーは、受け身も取れずにベッドに転がる。シーツに頬をつけたまま、乱れ髪のヘンリーがダリアを見据えた。
うっすらと笑みを湛えた顔を見ていると、ダリアは挑発されているような気持ちになる。
「たったこれだけでいいの? ダリアはこれで満足?」
煽るように言われて、ダリアはカッと頭に血が昇った。再び片脚を上げ、ヘンリーの太腿に乗せる。つーっとつま先を移動させて股間に辿り着くと、ダリアはそこを脚の裏で踏みつけた。
「これで勃たせているようじゃ、罰にならないじゃない」
「……っ」
脚の下で、硬く張り詰めたものがビクンと跳ねる。両手を拘束されて自由に抵抗もできない状態で、蹴られ、踏みつけられ、ヘンリーは興奮しているらしい。
形容しがたい感情がダリアの背筋を震わせる。身体が熱くなっていた。
「踏まれて喜ぶなんて、ヘンリーは変態なのね」
「ははっ、前にも言っただろう? ダリアになら何をされてもうれしいって」
「本当かしら? 変態なヘンリーは、誰にされても興奮するんじゃない?」
「ダリアだけだよ」
「嘘ばっかり言う悪い男には、もっと罰を与えないといけないわね」
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