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神の使徒とアップル

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「ギャアアアアアー!? やめて!? お願い!? 食べないで!?」
 アップルは、神の使徒にペロっと丸飲みにされた。
「ゲップ。」
 神の使徒はアップルを消化したみたいだった。
「ゲップ? ゲップ!? ゲップゲップ!?」
 神の使徒の様子が変だ。
「グオオオオオオオオー!?」
 まるで変なものを食べたように苦しみ始めた。

「はあ・・・はあ・・・ここまで来れば大丈夫よね!?」
「いつたいなんなの!? あの化け物は!?」
「知らないわよ!? 私が知る訳ないじゃん!?」
 オレンジとモモは、アップルを化け物の生贄にして走って逃げて来た。
「ガシャンガシャン?」
「来た!? もうダメだ!?」
 逃げた二人を追って鎧騎士の化け物が現れた。そしてフルヘイスのマスクを開けて、大きな口を出そうとする。
「アップル!?」
 フルヘイスの仮面の下は、食べられたはずのアップルの顔でした。
「どうして?」
「え?」
「どうして、私を見捨てたの? どうして、私を助けてくれなかったの?」
「キャア!? しゃべった!?」
 確かにフルヘイスのマスクの下の顔はアップルで、声も意志もアップルだった。
「近づくな!? 化け物!?」
「そうよ!? アップルは、アップルは食べられたんだから!?」
 死んだはずのアップルの顔に鎧騎士の顔になっていることに、オレンジとモモは驚く。
「こっちへおいで。美味しく食べてあげるから。」
「ヒイイイイ!?」
「来ないで!? やめて!? アップル!? 私たち友達でしょ!?」
「さっきまでね。本当の友達なら私を生贄にして逃げたりはしない!」
「ギャアアアアア!?」
 パクッ。アップルの口が大きくなり、オレンジを呑み込んだ。
「若い女の肉なのに、そんなに美味しくないな?」
 アップルがオレンジを口の中でカミカミしている。血が唇からこぼれ、噛んで千切れた腕や指が周囲に飛び散っている。オレンジのフレッシュジュースのように。
「いやー!? 来るな!? アップル!? 私はあなたに優しくしてあげたじゃない!? 私はあなたの親友でしょ!?」
「私に親友はいない。あなたは偽善者でしょ。」
「偽善者!?」
「私の親友はジュライだけ。」
「ジュライ?」
「あなたは知らなくていい。いただきます。」
「ギャアアアアア!?」
 食前の挨拶をするとアップルは口を大きく開けて、モモを呑み込む。
「よくもよくも、私をバカにしていたわね。よくもよくも私を騙していたわね。私は、私は友達だと信じていたのに。ウエ~ン。シクシク。」
 口からこぼれる血の出汁と、歯で噛み砕かれミンチされた肉片が飛び散る中、アップルの瞳からも涙が零れ落ちた。

「あなた!? いつになったら帰って来るの!?」
「アップルの学校にも化け物がでたそうですよ。」
「そういえば、アップルは帰ってきていないわね?」
「ドジだから、きっと化け物に食べられたんだよ。」 
「いくらアップルでも、そこまでダメな子じゃないでしょう。」
「アッハハハハ!」
 アップルの母、ブルーベリーと姉のストロベリー、弟のメロンは、アップルを蔑んで笑う。父のスイカは、バチから戻って来ることはなかった。
「ただいま。」
 その時、アップルが自宅に帰って来た。
「ほら、噂をすればだよ。」
「昔からバカは死なないっていうもんね。」
「アップルさん! 今までどこをサボり歩いていたんですか!?」
「な!?」
 アップルを見た家族は言葉を失った。
「なに!? その鎧は!?」
「しかも返り血を浴びたような!?」
「アップルさん!? どこでそんな悪趣味な鎧を拾ってきたんですか!? 直ぐに脱いで捨ててきなさい!」 
 家族は、アップルの幼稚ないたずらだと思った。
「おまえたちなんか、私の家族じゃない。」
「んん? 何か言ったのか? 落ちこぼれ!」
「そうよ、あなたみたいな妹を持って恥ずかしいわ。」
「精々、私のフルーツ家の名誉を汚さないで下さいよ。」
 家族は何も知らないので、いつも通りの暴言をアップルに浴びせ続ける。
「私をドジっ子、ダメっ子、使えない子にしたのは、あなたたちだ!」
 アップルはフルヘイスのマスクを開けて、素顔を晒す。
「いただきます。」
「え?」
 そして大きな口を開けて、弟のメロン王子を一口で呑み込む。
「まずい。やっぱり、まずい。味に性格が出ているわ。」
 メロンの味は不味かった。
「キャアアアー!? メロンさん!? 私の大切な息子が!?」
「化け物!? あんた!? アップルじゃないわね!?」
「いいえ。私はアップルです。確かにあなたの妹です。ストロベリーお姉さま。」
「妹が弟を食べる!? 姉に歯向かうとは何事よ!?」
「姉? あなたが私に姉らしいことをしてくれたことがあったの?」
「ギャアアアアア!?」
 アップルは口を大きく開けて、姉のストロベリー王女を呑み込んだ。
「あれ? おかしいな。悲しくないのに、涙がこぼれてくる。」
 姉、ストロベリーの血のフレッシュジュースと共に、アップルの瞳から涙がこぼれてくる。無意識に憎んでいても家族という感情が涙を流させるのだろう。
「次は、お母様の番ですよ。」
 神の使徒となったアップルの復讐が始まる。
 つづく。
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