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母と娘

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「ヒイイイイ!?」
 アップルの母のブルーベリーは、娘と息子を食べられて気が狂いそうになっていた。
「どうですか? お母様。自慢の娘と息子が死にましたよ。」
「ば、化け物!?」
「酷いですね。私はお母様が生んだ同じ子供なのに。同じ娘なのに。」
「黙れ!? 化け物!? おまえなんかを私が生む訳がない!? おまえなんか私の子じゃない!?」
「そうですね。私に母親はいなかったのかもしれません。どんな時でも味方になってくれる優しい母親。どんな時でも笑って私を包み込んでくれるような母親。やっぱり私には母親と呼べる人はいなかった。」
「来るな!? 来るな!? 来ないで!? 助けて!? あなた!?」
「あ、言うのを忘れていました。スイカお父様は、既にジュライが食べたそうです。だから、もう戻って来ることはありませんよ。」
 アップルの父、スイカはバチで神の使徒ジュライに、既に食べられていた。
「やめて!? アップルさん!? これからはあなたに優しくするから!? 来ないで!? 来るな!?」
「ドジっ子、ダメっ子、使えない子と言われて、私の心が傷つかなかったと思いますか? 命乞いは手遅れです。お母様、相手が命乞いをする時、私はお母様を殺すことを決めています。」
「ヒイイイイ!?」
「いただきます。」
 グジュ! アップルの大きな口が母親のストロベリーを噛んだ。
「まずい。今度から食べる前は、油で揚げてから食べようかしら。」
 ブジュブジュ! ゴリゴリ! わざと呑み込まずに、アップルは母親の頭蓋骨を噛み砕き、肋骨や背骨を味わっている。
「ぺッ、ごちそうさまでした。私って、なんて行儀の良い子なのかしら。アハッ。」
 アップルの形だけの家族は全員死んだ。皮肉にも家族がバカにしていた次女アップルに食べられて。
「私に家族なんか、最初からいなかったんだわ。私を理解してくれるのは、ジュライしかいない。」
 アップルは、真っ赤な絨毯に染まった居間で、血の臭いと骨と肉片が飛び散る中に一人立ち尽くしていた。

 話はアップルが神の使徒に食べられる時に戻る。
「いやー!? やめて!? 助けて!? 来るな!? 来るな!? 来ないで!?私なんか食べても美味しくないわよ!? お腹を壊しても知らないからね!? ギャアアアアアー!? やめて!? お願い!? 食べないで!?」
 パクッ。アップルは羽の生えた鎧騎士に食べられた。ペロっと丸飲みにされた。
「ゲップ。」
 神の使徒はアップルを消化したみたいだった。
「ゲップ? ゲップ!? ゲップゲップ!?」
 神の使徒の様子が変だ。
「グオオオオオオオオー!?」
 まるで変なものを食べたように苦しみ始めた。フルヘイスの仮面の下は、黒い顔が変化し始める。
「ウワアアアアアアアー!?」
 すると神の使徒は、顔を手に入れる。アップルの顔を。
「かお? 顔だ! 顔だわ!? 私の顔だ! これが私の顔なんだ!? 私は手に入れた! 私だけの顔よ! キャッハッハ!」」
 神の使徒は、自分に顔ができたことが嬉しかった。
「声!? 声だ! あー!!!!! これが声なんだわ。私の顔! 私の声! 私は生きているんだ! 私は、ただの作り物じゃないんだ! 私は私を手に入れたんだ! 私は自由だ!」
 止まない思いが神の使徒に湧き上がっている。それを感動と呼び。自分が欲しかったものを手に入れ、自分の思いを表現できる。今までの人生で味わったことのない喜びという感情が溢れてくる。

「真っ暗。あ、そっか。私は食べられたんだ。アッハハハハ。」
 アップルは暗い世界にいた。
「こんにちわ。」
「こんにちわ。あなたは誰? あなたも食べられたの?」
 アップルの目の前に鎧騎士が現れる。
「そうなの。私も食べられたの。」
「わ~い! 一緒だ!」
「わ~い! 一緒! 一緒!」
 なぜか手を取り合って喜ぶアップルと鎧騎士。
「あ!? 違う! 私の名前は、ジュライ。神の使徒だ!」
「神の使徒?」
「そう、私の名前も神様が与えてくれたのだ! すごいだろ?」
「ジュライ? あなた、七月生まれなの?」
「どうして?」
「ジュライは七月っていう意味だから。」
「そうか!? 私は七月生まれだったのか!? 知らなかった。」
 神様によって命を与えられたばかりの神の使徒ジュライは、世間知らずだった。何もかもが新鮮で生きていることに喜びを素直に感じていた。
「んん? なんだか、この子、可愛いぞ。」
 お嬢様育ち、お嬢様学校で生きてきたアップルだが、人間の醜さは嫌なほど、家族と友達から教えられてきた。
「私の名前はアップル。」
「りんご?」
「違う!? アップルが名前だから仕方がないでしょ!?」
「ごめんなさい!? 悪気は無いんだ!?」
「クスッ。」
 アップルは、生まれたてで純粋なジュライが気に入った。
「見つけた! 私の神様!」
「私は神様ではない。私を作ったのが神様だ。」
「ジュライ。私たち友達にならない?」
「なる! なります! アップルは私の初めての友達だ!」
 ジュライは、アップルの手を取って必死に友達に志願する。
「友達ならやらなきゃね。七月になったらジュライの誕生日パーティー。」
 ニコっと優しく微笑むアップル。
「はい。」
 アップルの無邪気な笑顔に時間が一瞬止まる神の使徒ジュライであった。
「誕生日パーティーには、美味しいケーキとか、みんなでハッピーバースデーの歌を歌うのよ。あ、でも歌は歌わない方がいいか?」
「やろう! 誕生日パーティー! ケーキっていうのも食べてみたい! 歌も歌ってみたい!」
「どうなってもしらないよ。」
 こうしてアップルとジュライは出会った。
 つづく。
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