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敵か味方か(2)

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「参考までに聞かせてもらうが、もしそなたたちに重い処罰が下った場合、どうする?」

 悩む素振りを見せ続けていた国王のその言葉に、リーシャはフェンリルの助言通りの言葉を言うならここだと思った。
 リーシャの喉は緊張で、無意識にゴクンという音を鳴らした。

「私は……叶うのなら、これまで通りあの子たち……黒竜たちとあの家で暮らしたいと思っています。それを認めていただけないというのなら……私たち誰かが1人でも欠けるようなことになるのなら……どんな手を使ってでもこの地を離れ、人目の届かないところへ移り住みたいと思っています。たとえ反逆者と言われることをしてでも!」

 途端に周りで金属が擦れる音がこの玉座の間全体から響いた。
 リーシャはフェンリルの言う通りに言ったつもりだ。けれど、周りの反応からその選択をしたのは間違いだったかもしれないと不安に駆られた。
 騎士たちはリーシャが宣言通り、この場で暴れ逃げ出すかもしれないと強い警戒心を抱いたようだ。彼らの剣先はリーシャに向けられている。
 リーシャの頬を一滴の汗が流れ落ちた。
 武器を構える騎士たちを制止するように、国王は手を掲げた。
 再び金属の擦れる音がし、騎士たちの剣は元の位置に収められた。

「やはりそうなのか……ふむ、フェンリルの言った通りだな。これは困った……」

 国王はリーシャの宣言に怒るわけでもなく、悩まし気に再び口を閉じた。
 どうやらフェンリルの思惑通りに事は進みそうだ。本当にお咎めなしな上に、ノアたちのことも認めてもらえるのではと、リーシャの期待は膨らんでいく。
 皆が国王の言葉を待ち静まりかえっていると突然、玉座の間と廊下を隔てる大きな扉が勢いよく開かれ、慌てた様子の騎士が駆け込んできた。

「お、お話の途中に失礼いたします! ご報告いたします! 竜が、竜が王都へ向かって来ています‼」

 突然のその報告に玉座の間は騒めきに包まれた。

(まさか……ノアたちが王宮に向かって来てるんじゃ……)

 リーシャが王宮へ連れていかれた事をノアたちが一大事だと判断したとすれば、今王都に向かっている竜がノアたちである可能性は十分にある。竜の姿に戻って飛んで向かった方が早く到着できるからだ。もしかしたら威嚇の意も込めているかもしれない。
 リーシャは王都に向かう竜がノアたちではないことを必死に祈った。
 しかしながらその竜がノアたち出ない場合、それはそれで大変な事態に巻き込まれるのは間違いない。けれど、ノアたちが頭に血が上って暴れ出すよりはいくらかマシではある。
 竜についての報告の続きを待っていると、壁際に並んでいた騎士の列から1人の男性が歩み出た。

「竜は何頭だ‼ 竜種は‼」
 
 男性の声にはかなりの迫力があり、駆け込んできた騎士は一瞬たじろいだ。

「えと、竜は1頭! 竜種は黒竜であります、フィファス隊長!」

 するとフィファスと呼ばれる男はキッとリーシャのことを睨みつけた。
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