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魔法学校

約束(1)

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 広場では竜の姿で伏せているノアと、その背中に座るルシアとエリアルがリーシャの到着を待っていた。
 ノアの足元には魔法学校の教師や、知り合った多くの生徒が見送りに来てくれている。
 はじめの頃はノアたちの存在を遠巻きに見ていた生徒たちも、3人とかかわるうちに心を開いてくれた。
 おかげで今、好奇心旺盛な何人もの生徒がノアの足を触りまわしている。ノアの方も触られる事を嫌がらず、生徒たちにされるがまま大人しくただただ伏せていた。
 リーシャはノアたちを取り囲んでいる生徒や生徒たちを見渡した。

(今回新しく知り合った学生、多かったんだなぁ。前の見送りよりだいぶ増えた感じがする)

 こんなにたくさん見送りに来てくれているのに、1番姿を見せて欲しかった生徒の姿は見当たらなかった。

「やっぱりいないか」

 リーシャがぼそりと呟くと、横にいたハンナが口を開いた。

「だいぶごねてましたからね」

 ステファニーの姿が見当たらなかった。
 ステファニーは数日前から「かえらないで、ここにいて」とリーシャに言い続け、ずっと不機嫌だった。
 昨日に至っては泣き喚き、最後には自分の部屋に閉じこもってしまう始末。
 またいつ会えるかわからないというのに、こんな別れ方になってしまうのは寂しい。リーシャは切なげな笑みを見せた。

「1番来てほしかったんだけどなぁ」

 リーシャがそう言うと、ハンナはわざとらしく意外そうな声を出した。

「あら、私は来なくてもよかったんです?」
「もー、意地悪言わないでよ。ハンナにも来てほしかったに決まってるじゃない。ただ、ステファニーちゃんとは、今回ずっと一緒にいたから……」
「冗談ですよ。ちゃんとわかってますから」
「もう!」

 リーシャはムッとした顔をしてハンナを見ていたけれど、にらめっこを続けているうちに互いに「フフッ」っと笑いあった。
 これでハンナとは何のわだかまりもなく別れられそうだ。

「じゃあ、元気でね」
「ええ、先生も。お手紙お待ちしてますから」

 ハンナと別れの言葉を交わした後、見送りに来てくれていた人たちと別れをかわし、リーシャはノアの背中に乗ろうと手を伸ばした。
 その時。

「せんせーーーーー‼」

 振り向くと、走ってくるステファニーの姿が見えた。

「ステファニーちゃん!」

 リーシャが両腕を広げるとステファニーはその中に飛び込んだ。

「見送りに来てくれないかと思った」
「せんせもおにいちゃんたちも、いっちゃヤダ! ここにいて!」

 腕の中で泣きながら思いを伝えてくるステファニーに、リーシャの胸がギュッと締め付けられた。
 けれどその願いに応えてあげることはできない。

「ごめんね、ステファニーちゃん。私たち王都に戻ってしないといけないことがあるから、ここに残れないんだ」
「ヤダヤダヤダ‼ ほかのせんせーたちがいってた。リーシャせんせーつぎいつくるかわからないって! せんせーかえっちゃったら、もうあえないかもしれないもん!」
「うーん、困ったなぁ」

 引きはがすこともできず、その場で動けずにいるリーシャに変わってハンナが腰を屈め、落ち着かせるように背中を撫でた。

「ステファニー、先生を困らせちゃダメだって言ってるでしょ」
「ヤダァァァ! わたし、せんせといっしょがいいぃぃ‼」

 激しさを増す鳴き声の中、教員たちも加わりステファニーを宥めリーシャから引き離そうとした。
 けれど、がっしりとしがみついているステファニーをなかなか離すことはできない。
 意識的か、無意識なのかはわからないけれど、ステファニーが身体強化の魔法を使っていることに気がついていたリーシャはなすすべなく、しがみつかれ続けた。
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