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竜の国

空中の戦い(2)

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 リーシャが背中に乗ると、ルシアは張り切って飛び上がった。結界のひび割れたところから抜け出し、王都を攻撃していた竜たちと同じ高さまで登る。竜たちはルシアへ視線を向けたけれど、王都への攻撃を止めはしなかった。取るに足らない相手だと判断したようだ。
 けれどそれはそれで好都合というもの。

「リーシャ、まずはどいつからだ?」

 ルシアは声を抑えて尋ねた。
 王都に向けて息吹を放っているのは風竜ふうりゅう2匹に、水竜すいりゅう1匹。
 おそらく3匹の中で1番息吹が強いのは風竜の片方だ。
 リーシャはその風竜を指差した。

「向かって右端の風竜!」
「りょーかい!」

 ルシアは指示された風竜に向かって勢いよく飛び出した。
 リーシャは片手に水、片手に風の魔力を込め、風竜に向かって両手を突き出した。

「氷の礫よ!」

 叫ぶと現れた氷の礫が風竜に向かって突き進んだ。

「ギュアアァァァァァ‼」

 直撃した礫は風竜の体に氷を張り始めた。
 リーシャは先ほどアクアディナが使った氷結させる魔法を使って、風竜の動きを止めようとした。けれど氷結はリーシャが思ったほどには広がらず、すぐに止まってしまって動きを止める事はできなかった。

(うわっ……やっぱ見ただけでぶっつけ本番は無理があったか。魔力の伸びが甘いし、温度も下がりきってないみたい。でも、全く効いてないわけじゃないみたいだし、連続で当てさえすればあの竜を凍り付かせる事ができるかも!)

 リーシャはそう意気込んだ。けれどこの時、魔法の効果などよりも重大な問題が発生してしまった。
 中途半端に威力のある魔法を使ったせいで、騎士たちからの攻撃をあざ笑うかのように躱し、王都へ息吹を放ち続けていた残りの竜たちが攻撃の手を止め、2人の方に視線を向ける事態になっていた。
 リーシャは再び両手に魔力を込めながらルシアに言った。

「ルシア。たぶん他の竜も標的をこっちに変えてくると思う。近づけないように息吹を使いながら、今攻撃した風竜の周りを飛び回ってほしいんだけど、できる?」
「ったく、なかなか無茶なこと言うなぁ。でも、リーシャがやれって言うなら頑張ってはみるぜ」

 ルシアは指示通りリーシャが標的にしていない竜に向け息吹を放ち始めた。王都への攻撃を止めた竜たちも息吹で応戦してくる。
 身体能力の高い黒竜とはいえ、ほぼ同時に放たれる攻撃すべてを避ける事は難しい。地上からの援護もあり、どうにか持ちこたえて飛翔しているけれど、限界が訪れるのは時間の問題だ。
 リーシャは1秒でも早く風竜の動きを止めたくて、頭がショートしそうなくらい集中し、魔法を放ち続けた。
 標的にしている風竜の体はかなり氷に包まれてきたけれど、まだまだ脅威と言っていいほどの攻撃を仕掛けてきている。
 リーシャはルシアの戦闘の様子を見ようと、手は止めずに視線だけを残る2体の竜の方へ向けた。
 その時、風竜の片割れがリーシャたちに向けて口を開けている事に気がついてしまった。残念なことにルシアは水竜に気を取られ、気がついていない。

「ルシア危ない!」

 リーシャは咄嗟に叫び、魔法の障壁でルシアを守ろうとした。けれどそんなことをしたところで、今度はリーシャが標的にしていた竜の攻撃を受ける事になるだけ。そんな事にも気が付けないほどに、リーシャの心は乱れていた。
 そして風竜は、すべてを切り裂くような鋭い息吹をリーシャとルシアに向けて同時に放った。
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