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第1話 さぁ復讐の開幕よ
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目の前には夢のような世界が広がっている。
それは公爵家育ちのレーナ・グラッセですら見とれてしまうほど。
金色の長い髪をかきあげ、王族がいかに偉大な存在かを実感していた。
「あの頃とは全く違う景色に見えるわね。幼すぎて舞踏会の意味すら分かりませんでしたし」
15年前──まだ5歳だった当時、レーナは舞踏会というのをよく知らなかった。
何も考えず踊るだけで楽しかった。
そのはずが……あの忌まわしき事件が全てを台無しにした。
「イヤな事を思い出してしまいましたわ。本当でしたら王族主催のは出たくないんですけど、公爵家の長女という立場がありますし……」
あの男にだけは会いたくない。
顔を見るのも生理的に無理。
今すぐにでも立ち去りたいのが本音である。
しかしそれは不可能。
公爵家の人間が参加しないなどありえないのだから……。
「さて、あの男に見つかる前にパートナーを探そうかしらね」
真紅のドレスに身を包み視線を周囲へ向けるも、注目されているのはレーナの方。その美しすぎる容姿はまさに絶世の美女。殿方はもちろんのこと、会場にいる女性からも熱い視線が注がれる。
是が非でもダンスに誘いたいと誰もが思う。
だがそれは叶わぬ夢。レーナから放たれる気品が、近づこうとする殿方を拒んでいるから。
指を加えレーナから誘われる待つしかない──殿方達がそう思っていると、オーラを跳ね除けレーナに近づく強者が現れた。
「なんという美しさ。この俺様にピッタリの女性だな。名はなんというのだ?」
その殿方を見た瞬間、レーナの背筋が凍りつく。
どれだけ年月が経っていようとも忘れるはずがない。
忌まわしき過去の元凶を作った者の顔を。
立場上、無視することは出来ない。
いや、その殿方の前では公爵家など象の前にいる蟻と同じ。
なぜならその者は──。
「レオ……王子。わたくしのことを──いいえ、わたくしはレーナと申します」
「そうか、レーナか。初めましてだな。それで、俺様と一緒に踊ってくれないか? まぁ、この俺様の誘いを断るやつなんていないだろうけど」
覚えていないのだろうか。それとも試しているだけ?
分からない、いくら考えても答えなんて出そうにない。
違う、そうではないのだ。王子からの誘いをどう断ればいいのか、その方が重要である。
断る理由……仮にあったとしても、王子が誘った時点で道はひとつだけ。
信じられない、あの悪夢が脳裏に蘇り、レーナの心は発狂しそうになる。
忘れられない忌まわしき事件──もしかすると、これは神が与えし試練なのかと思い始めた。
これは乗り越えなければならない過去。
どうすればよいのか、レーナの頭に名案が浮かび上がった。
「初めまして、レオ王子。王子のお誘いをお断りするわけありませんわ」
「そうだろ、そうだろ、ではさっそく──」
「ただ──ひとつだけ条件がありますの」
完全に吹っ切れた。
心の色が反転し、王族であるレオに対して強気に出る。
普通の神経ならこのような事はしない。下手をすれば罪に問われるかもしれないからだ。
だがレーナには勝算があった。
美には絶対の自信があり、心を虜にするのは簡単なはず。たとえそれが王子であったとしても……。
「条件……? いいだろ、俺様は心が広い。この世界で一番美しいレーナの条件を叶えてやろう」
「そう、ですか……。では、わたくしと──婚約してくださいませんか?」
この世で一番嫌いな相手との婚約。
昔の自分ならこのような決断をしないだろう。
レーナの心は闇に染まり、レオへの復讐を決意した。
「おおー、それは願ってもないことだ。俺様の婚約者として認めようではないか」
口元に薄ら笑みを浮かべるレーナ。
忌まわしき事件の恨みを必ず晴らしてやると、心の奥にその言葉を強く刻みつけた。
それは公爵家育ちのレーナ・グラッセですら見とれてしまうほど。
金色の長い髪をかきあげ、王族がいかに偉大な存在かを実感していた。
「あの頃とは全く違う景色に見えるわね。幼すぎて舞踏会の意味すら分かりませんでしたし」
15年前──まだ5歳だった当時、レーナは舞踏会というのをよく知らなかった。
何も考えず踊るだけで楽しかった。
そのはずが……あの忌まわしき事件が全てを台無しにした。
「イヤな事を思い出してしまいましたわ。本当でしたら王族主催のは出たくないんですけど、公爵家の長女という立場がありますし……」
あの男にだけは会いたくない。
顔を見るのも生理的に無理。
今すぐにでも立ち去りたいのが本音である。
しかしそれは不可能。
公爵家の人間が参加しないなどありえないのだから……。
「さて、あの男に見つかる前にパートナーを探そうかしらね」
真紅のドレスに身を包み視線を周囲へ向けるも、注目されているのはレーナの方。その美しすぎる容姿はまさに絶世の美女。殿方はもちろんのこと、会場にいる女性からも熱い視線が注がれる。
是が非でもダンスに誘いたいと誰もが思う。
だがそれは叶わぬ夢。レーナから放たれる気品が、近づこうとする殿方を拒んでいるから。
指を加えレーナから誘われる待つしかない──殿方達がそう思っていると、オーラを跳ね除けレーナに近づく強者が現れた。
「なんという美しさ。この俺様にピッタリの女性だな。名はなんというのだ?」
その殿方を見た瞬間、レーナの背筋が凍りつく。
どれだけ年月が経っていようとも忘れるはずがない。
忌まわしき過去の元凶を作った者の顔を。
立場上、無視することは出来ない。
いや、その殿方の前では公爵家など象の前にいる蟻と同じ。
なぜならその者は──。
「レオ……王子。わたくしのことを──いいえ、わたくしはレーナと申します」
「そうか、レーナか。初めましてだな。それで、俺様と一緒に踊ってくれないか? まぁ、この俺様の誘いを断るやつなんていないだろうけど」
覚えていないのだろうか。それとも試しているだけ?
分からない、いくら考えても答えなんて出そうにない。
違う、そうではないのだ。王子からの誘いをどう断ればいいのか、その方が重要である。
断る理由……仮にあったとしても、王子が誘った時点で道はひとつだけ。
信じられない、あの悪夢が脳裏に蘇り、レーナの心は発狂しそうになる。
忘れられない忌まわしき事件──もしかすると、これは神が与えし試練なのかと思い始めた。
これは乗り越えなければならない過去。
どうすればよいのか、レーナの頭に名案が浮かび上がった。
「初めまして、レオ王子。王子のお誘いをお断りするわけありませんわ」
「そうだろ、そうだろ、ではさっそく──」
「ただ──ひとつだけ条件がありますの」
完全に吹っ切れた。
心の色が反転し、王族であるレオに対して強気に出る。
普通の神経ならこのような事はしない。下手をすれば罪に問われるかもしれないからだ。
だがレーナには勝算があった。
美には絶対の自信があり、心を虜にするのは簡単なはず。たとえそれが王子であったとしても……。
「条件……? いいだろ、俺様は心が広い。この世界で一番美しいレーナの条件を叶えてやろう」
「そう、ですか……。では、わたくしと──婚約してくださいませんか?」
この世で一番嫌いな相手との婚約。
昔の自分ならこのような決断をしないだろう。
レーナの心は闇に染まり、レオへの復讐を決意した。
「おおー、それは願ってもないことだ。俺様の婚約者として認めようではないか」
口元に薄ら笑みを浮かべるレーナ。
忌まわしき事件の恨みを必ず晴らしてやると、心の奥にその言葉を強く刻みつけた。
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