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第二章
13.教えて
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次に目を開けると、目の前には酷い顔色をしたルフト先生がいた。どこかソファのようなところに寝かせられている。
……あれ、私いま何か見ていたようなー。
私がパチパチと瞬きをしたのを確認すると、ルフト先生は脱力した。
「…っはぁ~。良かった……。」
「先生……、私ー」
「気を失ったんだ、魔力を止めたショックがお前にはでかかったらしい。身体を巡る魔力量が人よりかなり多いのに、同じように止めた俺が悪かった。」
ルフト先生は申し訳なさそうに眉を下げている。
先生はやるべきことをやっただけなのに、なんだか申し訳ないな…。
「え……いや、大丈夫ですけど……。
気を失うこともあるって言ってましたし。」
すると、先生はバツが悪そうに頬を掻いた。
「あーー、実は……俺が魔力操作をして、失神した奴は初めてなんだ。正直、相当焦った。身体に違和感はないか?お前は二十分も気を失ってたんだぞ。本当に大丈夫か?」
「……んー、大丈夫そう、です。
あ、魔力探知……あれ?」
気付くと身体中をドクドクと何かが駆け巡っているのが分かる。温かい……。
「うまく行っただな。気は失ってても身体は覚えてる。もう自分の中でどう魔力が巡っているか分かるようになったろ?」
「これが魔力なんだ……。
…すごい!分かります!!」
初めて実感できた自分の魔力に興奮する。嬉しい。
本当に私にも魔力があったんだ…!!
「ははっ!さっきまで気を失ってた奴が元気だな。」
「気を失ってたなんて、信じられませんよ。
さっきまで、楽しくお姉ちゃんとー」
そこまで言いかけて止める。…あれ、記憶が…。
「お姉ちゃん?」
訝しげな顔でルフト先生は私を伺った。
「……ははっ。私、なんだか夢……見てたのかな?」
私が苦笑いでそう誤魔化すと、ルフト先生はほっとしたように息を吐いた。
「そうか。
まぁ、これで無事に魔力探知が出来る様になったな。今日の補習はここまでだ。」
「どうもありがとうございました。」
ここは準備室の隣のルフト先生の研究室のようだった。
応接用のソファみたいだけど、向かい側のソファには雑然と本や資料、毛布などが重なっている。
私は先生に礼をして、荷物をまとめる。
先生はその様子を見ながら、鍵をクルクルと回している。
「講義棟に戻るんだろ?」
「はい。」
「じゃあ、一緒に行くか。
俺もあっちに用があるんだ。」
そう言って、ルフト先生が扉を開けてくれる。
講義棟への廊下を二人並んで歩く。
「そういえば、ルフト先生ってソフィアと一緒に住んでたこともあるんですよね。」
「なんか、誤解を生むような言い方すんな。
公爵家の別邸に住まわせて貰ってただけだ。
それにしても、ソフィアが俺のことを話すとは。
アンナには何でも話すんだな。」
私は首を捻る。
「どうでしょう…。でも、私はソフィアが話したいことを聞くだけです。」
フッとルフト先生が笑う。
「……アンナを知って少ししか経ってないが、ソフィアがアンナを好きな理由がよく分かる気がするよ。」
ソフィアが私を好き、というのはやっぱり嬉しい。それになんだかルフト先生にソフィアの親友として認めてもらえたみたいで。私の顔は思わず緩む。
「そ、そうですか?!……へへぇ、嬉しいなぁ。」
「顔緩みすぎ。だらしねぇ顔してんぞ。」
ルフト先生の視線を避けて、私はそっぽを向く。折角ソフィアのこと考えて、気分が良かったのに!
「見ないでください!」
すると、ルフト先生がニヤニヤし出す。
「なぁ、ソフィアと恋バナとかもすんのか?」
「な、な、な、なんですか、急に?!」
ボロが出そうで怖い!…ほっといてほしい。
じゃないと、ソフィアの好きな人はルフト先生ですってポロッと言ってしまいそう…。
「動揺しすぎだろ。
その様子じゃソフィアの好きな奴も知ってんだな。」
ルフト先生はニヤニヤしている。
「い、いや…し、知りませんよぅ…。」
……完全に目が泳いでいるのが自分でも分かる。
ソフィアー!たすけてー!!
「バレバレだ。なぁ、教えてくれよ。」
「な、なんでー」
なんでそんなに知りたいのかと聞こうと思ったところで、その言葉をルフト先生は遮る。
「ソフィアは妹みたいな存在だって言ったろ?
変な奴に捕まったらと思うと心配でな。
てっきりソフィアは王子の婚約者になるのかと思ってたら、どうやら好きな奴がいるらしく婚約者になりたくないと辞退したとジョシュアから聞いたもんでな。ずっと気になってたんだ。」
「そ、そうなんですねー。知らなかったー。」
必死に誤魔化す。が、ルフト先生は逃がしてくれる雰囲気ではない。足を止め、ジリジリと私の方に身体を向けると、一歩近づく。
「だから、教えてくれよ。心配する兄の気持ちも理解出来るだろ?」
そう言ってルフト先生は眉を下げる。そんな困った顔したって言わないんだから…!
私は足元に視線を落とした。
「……だ、ダメです。言えません。」
「へぇ…。」
ルフト先生はじっと私を見つめながら、より近付いてくる。私はのけ反りながら、後退する。
そして、壁際まで私を追い込むと、両手を壁につき、その中に私を閉じ込めた。
「せ、せんせ?」
先生の顔が近付き、唇が耳元に寄せられる。
「……アーンーナ。言え。」
色気のある声で囁かれれば、足から崩れ落ちそうだ。
今すぐここから逃げ出したい…!!
その時、廊下に凛とした声が響いた。
「……ルフト、様?……アンナ?」
……あれ、私いま何か見ていたようなー。
私がパチパチと瞬きをしたのを確認すると、ルフト先生は脱力した。
「…っはぁ~。良かった……。」
「先生……、私ー」
「気を失ったんだ、魔力を止めたショックがお前にはでかかったらしい。身体を巡る魔力量が人よりかなり多いのに、同じように止めた俺が悪かった。」
ルフト先生は申し訳なさそうに眉を下げている。
先生はやるべきことをやっただけなのに、なんだか申し訳ないな…。
「え……いや、大丈夫ですけど……。
気を失うこともあるって言ってましたし。」
すると、先生はバツが悪そうに頬を掻いた。
「あーー、実は……俺が魔力操作をして、失神した奴は初めてなんだ。正直、相当焦った。身体に違和感はないか?お前は二十分も気を失ってたんだぞ。本当に大丈夫か?」
「……んー、大丈夫そう、です。
あ、魔力探知……あれ?」
気付くと身体中をドクドクと何かが駆け巡っているのが分かる。温かい……。
「うまく行っただな。気は失ってても身体は覚えてる。もう自分の中でどう魔力が巡っているか分かるようになったろ?」
「これが魔力なんだ……。
…すごい!分かります!!」
初めて実感できた自分の魔力に興奮する。嬉しい。
本当に私にも魔力があったんだ…!!
「ははっ!さっきまで気を失ってた奴が元気だな。」
「気を失ってたなんて、信じられませんよ。
さっきまで、楽しくお姉ちゃんとー」
そこまで言いかけて止める。…あれ、記憶が…。
「お姉ちゃん?」
訝しげな顔でルフト先生は私を伺った。
「……ははっ。私、なんだか夢……見てたのかな?」
私が苦笑いでそう誤魔化すと、ルフト先生はほっとしたように息を吐いた。
「そうか。
まぁ、これで無事に魔力探知が出来る様になったな。今日の補習はここまでだ。」
「どうもありがとうございました。」
ここは準備室の隣のルフト先生の研究室のようだった。
応接用のソファみたいだけど、向かい側のソファには雑然と本や資料、毛布などが重なっている。
私は先生に礼をして、荷物をまとめる。
先生はその様子を見ながら、鍵をクルクルと回している。
「講義棟に戻るんだろ?」
「はい。」
「じゃあ、一緒に行くか。
俺もあっちに用があるんだ。」
そう言って、ルフト先生が扉を開けてくれる。
講義棟への廊下を二人並んで歩く。
「そういえば、ルフト先生ってソフィアと一緒に住んでたこともあるんですよね。」
「なんか、誤解を生むような言い方すんな。
公爵家の別邸に住まわせて貰ってただけだ。
それにしても、ソフィアが俺のことを話すとは。
アンナには何でも話すんだな。」
私は首を捻る。
「どうでしょう…。でも、私はソフィアが話したいことを聞くだけです。」
フッとルフト先生が笑う。
「……アンナを知って少ししか経ってないが、ソフィアがアンナを好きな理由がよく分かる気がするよ。」
ソフィアが私を好き、というのはやっぱり嬉しい。それになんだかルフト先生にソフィアの親友として認めてもらえたみたいで。私の顔は思わず緩む。
「そ、そうですか?!……へへぇ、嬉しいなぁ。」
「顔緩みすぎ。だらしねぇ顔してんぞ。」
ルフト先生の視線を避けて、私はそっぽを向く。折角ソフィアのこと考えて、気分が良かったのに!
「見ないでください!」
すると、ルフト先生がニヤニヤし出す。
「なぁ、ソフィアと恋バナとかもすんのか?」
「な、な、な、なんですか、急に?!」
ボロが出そうで怖い!…ほっといてほしい。
じゃないと、ソフィアの好きな人はルフト先生ですってポロッと言ってしまいそう…。
「動揺しすぎだろ。
その様子じゃソフィアの好きな奴も知ってんだな。」
ルフト先生はニヤニヤしている。
「い、いや…し、知りませんよぅ…。」
……完全に目が泳いでいるのが自分でも分かる。
ソフィアー!たすけてー!!
「バレバレだ。なぁ、教えてくれよ。」
「な、なんでー」
なんでそんなに知りたいのかと聞こうと思ったところで、その言葉をルフト先生は遮る。
「ソフィアは妹みたいな存在だって言ったろ?
変な奴に捕まったらと思うと心配でな。
てっきりソフィアは王子の婚約者になるのかと思ってたら、どうやら好きな奴がいるらしく婚約者になりたくないと辞退したとジョシュアから聞いたもんでな。ずっと気になってたんだ。」
「そ、そうなんですねー。知らなかったー。」
必死に誤魔化す。が、ルフト先生は逃がしてくれる雰囲気ではない。足を止め、ジリジリと私の方に身体を向けると、一歩近づく。
「だから、教えてくれよ。心配する兄の気持ちも理解出来るだろ?」
そう言ってルフト先生は眉を下げる。そんな困った顔したって言わないんだから…!
私は足元に視線を落とした。
「……だ、ダメです。言えません。」
「へぇ…。」
ルフト先生はじっと私を見つめながら、より近付いてくる。私はのけ反りながら、後退する。
そして、壁際まで私を追い込むと、両手を壁につき、その中に私を閉じ込めた。
「せ、せんせ?」
先生の顔が近付き、唇が耳元に寄せられる。
「……アーンーナ。言え。」
色気のある声で囁かれれば、足から崩れ落ちそうだ。
今すぐここから逃げ出したい…!!
その時、廊下に凛とした声が響いた。
「……ルフト、様?……アンナ?」
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