親友のために悪役令嬢やってみようと思います!

はるみさ

文字の大きさ
41 / 99
第二章 

14.ソフィアとルフト

しおりを挟む
 「ソフィア!!」

 私はソフィアを見て固まったルフト先生の腕をくぐり抜けて、ソフィアに駆け寄った。ソフィアは私を背中に匿ってくれる。

 ソフィアは、キッとルフト先生を睨みつけた。

 「先生…何をされていたんですか?
 ご存知の通り、アンナは第二王子殿下の婚約者です。
 周りから誤解される様な行動は慎むべきかと。」

 毅然とした態度のソフィアを見て、ルフト先生は両手を上げて、ヘラヘラとしている。

 「ソフィアは相変わらず真面目だな。俺はアンナの顔色が悪かったから心配で。さっき倒れたんだよ、そいつ。」

 その言葉を受けて、ソフィアがバッと振り返る。

 「そうなの?アンナ?!」

 「あ……えと、うん。でも、それはー」

 ソフィアは私の手をぎゅっと握る。

 「アンナはちゃんと休まなきゃダメ!
 今日はもう私と帰るわよ!!」

 「だ、大丈夫だよ!!」

 「だめよ!アンナはすぐ無理するんだから、私、貴女の『大丈夫』は信用しないことにしたの。」

 ……今までの行動を考えると仕方ない、か。

 「むぅ…分かったよ。」

 私が頬を膨らませるのを見て、ソフィアはフッと笑った。その優しい笑みに安心する。

 「じゃ、行きましょ。」

 「ソフィア。」

 ルフト先生に冷たい態度を取るソフィアを、戸惑いながらも先生が呼び止めた。

 「…なにか御用でも?」

 「久しぶりだな。」

 「えぇ、そうですわね。私はその派手な頭でルフト様がどこにいるか丸わかりでしたが。いつも女性を追いかけるのにお忙しくされているようで。」

 「いやいや…俺が追いかけてるんじゃなくて、女どもが追いかけてくるんだろ。」

 それをソフィアは鼻で笑う。

 「はいはい、分かりましたわ。
 そういうことにして差し上げます。」

 「それが真実だっての。」

 ルフト先生は困ったように頭を掻く。
 ソフィアは私に言い聞かせるように告げる。

 「アンナはあんな男に捕まったら駄目よ?」

 「え……ソ、ソフィア?」

 ルフト先生が好きな人だと聞いていた私は意味が分からなかった。好きな人にこんなこと言うの?どう考えてもソフィアのこの態度は嫌いな人へのものだと思うんだけど……。

 しかし、ルフト先生は慣れた様子で、ヘラヘラとしている。大して傷付いてはいないようだ。

 「相変わらず酷いな。アンナにはそんなに優しいのに。俺には優しくしてくれないの?」

 「優しくする理由などありませんから。少しお祖父様に気に入られているからと言って、私も同じだとは思わないでいただきたいですわ。」

 プイッとソフィアはそっぽを向いた。

 「でも、小さい頃はもう少し俺に優しかったよ?」

 「そんな記憶ありませんわ。」

 「よく花冠をプレゼントしてくれた。」

 「あ、あれは……!
 お兄様にあげる花冠の練習をしてて…失敗した物を渡していただけですわ!!勘違いしないで下さい!」

 慌てるソフィアも可愛い。

 それに気を良くしたのか、ルフト先生はニヤニヤとしている。

 「綺麗に勿忘草が刺繍されたハンカチもくれたよね?」

 「……あ、あれも練習ですわ!!
 お母様にあげるために練習して失敗したー」

 「へぇ、その割には完璧だったよ?あれ、気に入ってるんだ。水色の花がソフィアの髪色みたいだもんな。」

 「……っ!そんな風に見ないで!
 す、捨ててよ!!」

 恥ずかしいのか少し潤んだ目でルフト先生を睨み付けるが……ただ可愛いだけだ。

 「捨てるはずないじゃない。あれを見て、よくソフィアを思い出してる。」

 ルフト先生がそう言ってソフィアに笑いかけると、ソフィアの顔は真っ赤に染まった。

 「……し、知らないわ!アンナ、行きましょ!!」

 ソフィアは私の手を取って歩き出そうとするが、私はそれを止めた。文通のことを伝えないと…!

 「ま、待って、ソフィア!」

 「何?」

 「ルフト先生がアンナにお願いがあるってー」

 「あ、いいんだ、アンナ。」

 ルフト先生は苦笑いだ。
 その表情にソフィアは不思議そうな顔をする。

 「……何ですの?気になるから言って下さいまし。」

 しかし、ルフト先生は話そうとしない。仕方ないので私から事情を話すことにした。

 「先生の妹さんがお友達を欲しがってるらしいの。昔の私と同じように身体が弱くて、屋敷から出れないんですって。先生が妹さんの文通相手が欲しいって。
 私はソフィアが適任だと思うの。私も屋敷に閉じこもってた時、ソフィアの手紙に励まされたから。」

 神妙な顔つきでその話を聞いた後、ソフィアは頷いた。

 「…そういうことなら、分かりましたわ。アンナは王子妃教育も続いていて忙しいでしょうしね。
 後日、レミリー様に直接お送りしますわ。」

 それを聞いて、ルフト先生は目を丸くした。

 「ソフィア……俺の妹の名前、知ってたの?」

 「……前に一度ご自身でお話しされてたではありませんか。」

 「よく一度でも話しただけのことを覚えてるな……。」

 「そ、そんなこと今はどうでもいいことですわ!では、お手紙は直接の送りー」

 「いや、レミリーには俺から渡す。書けたら、俺のところまで持ってきてくれ。」

 「……わ、分かりましたわ。
 ルフト様に会いに来るのは面倒ですが、レミリー様のためなら仕方ないですわね。」

 「あぁ、頼んだ。」

 そう言ってルフト先生はこちらに近付き、優しい顔をして、ソフィアの頭をポンポンと撫でた。

 「~~っ!子供扱いは止めてください!!」

 ソフィアはルフト先生の手を払い除ける。

 「子供扱いなんてしてないぞ?女の子扱いだ。」

 「そうやっていつも……。

 行くわよ、アンナ!!」

 「う、うん。」

 ソフィアはルフト先生に背を向けると、小さな声で呟く。

 「手紙は後日届けに来ますわ…。」

 「ありがと。待ってる。」

 ルフト先生はニコニコと手を振って、私たちを見送った。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...