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第二章
14.ソフィアとルフト
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「ソフィア!!」
私はソフィアを見て固まったルフト先生の腕をくぐり抜けて、ソフィアに駆け寄った。ソフィアは私を背中に匿ってくれる。
ソフィアは、キッとルフト先生を睨みつけた。
「先生…何をされていたんですか?
ご存知の通り、アンナは第二王子殿下の婚約者です。
周りから誤解される様な行動は慎むべきかと。」
毅然とした態度のソフィアを見て、ルフト先生は両手を上げて、ヘラヘラとしている。
「ソフィアは相変わらず真面目だな。俺はアンナの顔色が悪かったから心配で。さっき倒れたんだよ、そいつ。」
その言葉を受けて、ソフィアがバッと振り返る。
「そうなの?アンナ?!」
「あ……えと、うん。でも、それはー」
ソフィアは私の手をぎゅっと握る。
「アンナはちゃんと休まなきゃダメ!
今日はもう私と帰るわよ!!」
「だ、大丈夫だよ!!」
「だめよ!アンナはすぐ無理するんだから、私、貴女の『大丈夫』は信用しないことにしたの。」
……今までの行動を考えると仕方ない、か。
「むぅ…分かったよ。」
私が頬を膨らませるのを見て、ソフィアはフッと笑った。その優しい笑みに安心する。
「じゃ、行きましょ。」
「ソフィア。」
ルフト先生に冷たい態度を取るソフィアを、戸惑いながらも先生が呼び止めた。
「…なにか御用でも?」
「久しぶりだな。」
「えぇ、そうですわね。私はその派手な頭でルフト様がどこにいるか丸わかりでしたが。いつも女性を追いかけるのにお忙しくされているようで。」
「いやいや…俺が追いかけてるんじゃなくて、女どもが追いかけてくるんだろ。」
それをソフィアは鼻で笑う。
「はいはい、分かりましたわ。
そういうことにして差し上げます。」
「それが真実だっての。」
ルフト先生は困ったように頭を掻く。
ソフィアは私に言い聞かせるように告げる。
「アンナはあんな男に捕まったら駄目よ?」
「え……ソ、ソフィア?」
ルフト先生が好きな人だと聞いていた私は意味が分からなかった。好きな人にこんなこと言うの?どう考えてもソフィアのこの態度は嫌いな人へのものだと思うんだけど……。
しかし、ルフト先生は慣れた様子で、ヘラヘラとしている。大して傷付いてはいないようだ。
「相変わらず酷いな。アンナにはそんなに優しいのに。俺には優しくしてくれないの?」
「優しくする理由などありませんから。少しお祖父様に気に入られているからと言って、私も同じだとは思わないでいただきたいですわ。」
プイッとソフィアはそっぽを向いた。
「でも、小さい頃はもう少し俺に優しかったよ?」
「そんな記憶ありませんわ。」
「よく花冠をプレゼントしてくれた。」
「あ、あれは……!
お兄様にあげる花冠の練習をしてて…失敗した物を渡していただけですわ!!勘違いしないで下さい!」
慌てるソフィアも可愛い。
それに気を良くしたのか、ルフト先生はニヤニヤとしている。
「綺麗に勿忘草が刺繍されたハンカチもくれたよね?」
「……あ、あれも練習ですわ!!
お母様にあげるために練習して失敗したー」
「へぇ、その割には完璧だったよ?あれ、気に入ってるんだ。水色の花がソフィアの髪色みたいだもんな。」
「……っ!そんな風に見ないで!
す、捨ててよ!!」
恥ずかしいのか少し潤んだ目でルフト先生を睨み付けるが……ただ可愛いだけだ。
「捨てるはずないじゃない。あれを見て、よくソフィアを思い出してる。」
ルフト先生がそう言ってソフィアに笑いかけると、ソフィアの顔は真っ赤に染まった。
「……し、知らないわ!アンナ、行きましょ!!」
ソフィアは私の手を取って歩き出そうとするが、私はそれを止めた。文通のことを伝えないと…!
「ま、待って、ソフィア!」
「何?」
「ルフト先生がアンナにお願いがあるってー」
「あ、いいんだ、アンナ。」
ルフト先生は苦笑いだ。
その表情にソフィアは不思議そうな顔をする。
「……何ですの?気になるから言って下さいまし。」
しかし、ルフト先生は話そうとしない。仕方ないので私から事情を話すことにした。
「先生の妹さんがお友達を欲しがってるらしいの。昔の私と同じように身体が弱くて、屋敷から出れないんですって。先生が妹さんの文通相手が欲しいって。
私はソフィアが適任だと思うの。私も屋敷に閉じこもってた時、ソフィアの手紙に励まされたから。」
神妙な顔つきでその話を聞いた後、ソフィアは頷いた。
「…そういうことなら、分かりましたわ。アンナは王子妃教育も続いていて忙しいでしょうしね。
後日、レミリー様に直接お送りしますわ。」
それを聞いて、ルフト先生は目を丸くした。
「ソフィア……俺の妹の名前、知ってたの?」
「……前に一度ご自身でお話しされてたではありませんか。」
「よく一度でも話しただけのことを覚えてるな……。」
「そ、そんなこと今はどうでもいいことですわ!では、お手紙は直接の送りー」
「いや、レミリーには俺から渡す。書けたら、俺のところまで持ってきてくれ。」
「……わ、分かりましたわ。
ルフト様に会いに来るのは面倒ですが、レミリー様のためなら仕方ないですわね。」
「あぁ、頼んだ。」
そう言ってルフト先生はこちらに近付き、優しい顔をして、ソフィアの頭をポンポンと撫でた。
「~~っ!子供扱いは止めてください!!」
ソフィアはルフト先生の手を払い除ける。
「子供扱いなんてしてないぞ?女の子扱いだ。」
「そうやっていつも……。
行くわよ、アンナ!!」
「う、うん。」
ソフィアはルフト先生に背を向けると、小さな声で呟く。
「手紙は後日届けに来ますわ…。」
「ありがと。待ってる。」
ルフト先生はニコニコと手を振って、私たちを見送った。
私はソフィアを見て固まったルフト先生の腕をくぐり抜けて、ソフィアに駆け寄った。ソフィアは私を背中に匿ってくれる。
ソフィアは、キッとルフト先生を睨みつけた。
「先生…何をされていたんですか?
ご存知の通り、アンナは第二王子殿下の婚約者です。
周りから誤解される様な行動は慎むべきかと。」
毅然とした態度のソフィアを見て、ルフト先生は両手を上げて、ヘラヘラとしている。
「ソフィアは相変わらず真面目だな。俺はアンナの顔色が悪かったから心配で。さっき倒れたんだよ、そいつ。」
その言葉を受けて、ソフィアがバッと振り返る。
「そうなの?アンナ?!」
「あ……えと、うん。でも、それはー」
ソフィアは私の手をぎゅっと握る。
「アンナはちゃんと休まなきゃダメ!
今日はもう私と帰るわよ!!」
「だ、大丈夫だよ!!」
「だめよ!アンナはすぐ無理するんだから、私、貴女の『大丈夫』は信用しないことにしたの。」
……今までの行動を考えると仕方ない、か。
「むぅ…分かったよ。」
私が頬を膨らませるのを見て、ソフィアはフッと笑った。その優しい笑みに安心する。
「じゃ、行きましょ。」
「ソフィア。」
ルフト先生に冷たい態度を取るソフィアを、戸惑いながらも先生が呼び止めた。
「…なにか御用でも?」
「久しぶりだな。」
「えぇ、そうですわね。私はその派手な頭でルフト様がどこにいるか丸わかりでしたが。いつも女性を追いかけるのにお忙しくされているようで。」
「いやいや…俺が追いかけてるんじゃなくて、女どもが追いかけてくるんだろ。」
それをソフィアは鼻で笑う。
「はいはい、分かりましたわ。
そういうことにして差し上げます。」
「それが真実だっての。」
ルフト先生は困ったように頭を掻く。
ソフィアは私に言い聞かせるように告げる。
「アンナはあんな男に捕まったら駄目よ?」
「え……ソ、ソフィア?」
ルフト先生が好きな人だと聞いていた私は意味が分からなかった。好きな人にこんなこと言うの?どう考えてもソフィアのこの態度は嫌いな人へのものだと思うんだけど……。
しかし、ルフト先生は慣れた様子で、ヘラヘラとしている。大して傷付いてはいないようだ。
「相変わらず酷いな。アンナにはそんなに優しいのに。俺には優しくしてくれないの?」
「優しくする理由などありませんから。少しお祖父様に気に入られているからと言って、私も同じだとは思わないでいただきたいですわ。」
プイッとソフィアはそっぽを向いた。
「でも、小さい頃はもう少し俺に優しかったよ?」
「そんな記憶ありませんわ。」
「よく花冠をプレゼントしてくれた。」
「あ、あれは……!
お兄様にあげる花冠の練習をしてて…失敗した物を渡していただけですわ!!勘違いしないで下さい!」
慌てるソフィアも可愛い。
それに気を良くしたのか、ルフト先生はニヤニヤとしている。
「綺麗に勿忘草が刺繍されたハンカチもくれたよね?」
「……あ、あれも練習ですわ!!
お母様にあげるために練習して失敗したー」
「へぇ、その割には完璧だったよ?あれ、気に入ってるんだ。水色の花がソフィアの髪色みたいだもんな。」
「……っ!そんな風に見ないで!
す、捨ててよ!!」
恥ずかしいのか少し潤んだ目でルフト先生を睨み付けるが……ただ可愛いだけだ。
「捨てるはずないじゃない。あれを見て、よくソフィアを思い出してる。」
ルフト先生がそう言ってソフィアに笑いかけると、ソフィアの顔は真っ赤に染まった。
「……し、知らないわ!アンナ、行きましょ!!」
ソフィアは私の手を取って歩き出そうとするが、私はそれを止めた。文通のことを伝えないと…!
「ま、待って、ソフィア!」
「何?」
「ルフト先生がアンナにお願いがあるってー」
「あ、いいんだ、アンナ。」
ルフト先生は苦笑いだ。
その表情にソフィアは不思議そうな顔をする。
「……何ですの?気になるから言って下さいまし。」
しかし、ルフト先生は話そうとしない。仕方ないので私から事情を話すことにした。
「先生の妹さんがお友達を欲しがってるらしいの。昔の私と同じように身体が弱くて、屋敷から出れないんですって。先生が妹さんの文通相手が欲しいって。
私はソフィアが適任だと思うの。私も屋敷に閉じこもってた時、ソフィアの手紙に励まされたから。」
神妙な顔つきでその話を聞いた後、ソフィアは頷いた。
「…そういうことなら、分かりましたわ。アンナは王子妃教育も続いていて忙しいでしょうしね。
後日、レミリー様に直接お送りしますわ。」
それを聞いて、ルフト先生は目を丸くした。
「ソフィア……俺の妹の名前、知ってたの?」
「……前に一度ご自身でお話しされてたではありませんか。」
「よく一度でも話しただけのことを覚えてるな……。」
「そ、そんなこと今はどうでもいいことですわ!では、お手紙は直接の送りー」
「いや、レミリーには俺から渡す。書けたら、俺のところまで持ってきてくれ。」
「……わ、分かりましたわ。
ルフト様に会いに来るのは面倒ですが、レミリー様のためなら仕方ないですわね。」
「あぁ、頼んだ。」
そう言ってルフト先生はこちらに近付き、優しい顔をして、ソフィアの頭をポンポンと撫でた。
「~~っ!子供扱いは止めてください!!」
ソフィアはルフト先生の手を払い除ける。
「子供扱いなんてしてないぞ?女の子扱いだ。」
「そうやっていつも……。
行くわよ、アンナ!!」
「う、うん。」
ソフィアはルフト先生に背を向けると、小さな声で呟く。
「手紙は後日届けに来ますわ…。」
「ありがと。待ってる。」
ルフト先生はニコニコと手を振って、私たちを見送った。
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