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第7章
4 怪我の功名
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足を引きずる歩く様子に、顔には擦り傷がついていた彼女。
たった半日で、こんな状態で戻ってきた。
「マティ……、マティルダ~!
いったい何があって、どうしちゃったの~!?」
儀式の後の食事会までは、緊張で痛さを感じなかった。
だが、今になって転んだ時の傷がうずき出した。
「神様にやられました。
雷に雹、私が何をしたんでしょうか」
どんよりと捻りをきかせて言う私に、見上げる4の瞳は労いの目つきをしてくれた。
「大変だったようだね。
キズの手当ては、神殿でしてもらったんだ。
父上たちが会いたいそうだよ」
「アドニス殿下、分かりました。
儀式の説明しないと思っていましたので、ちょうど良かったです」
歩く度に膝を曲げるから痛いので、王様の所まで苦痛に堪えていた。
「痛い、もう歩きたくない。
ベッドで横になって休みたい」
「……」、案内している女官は独り言を聞いてないふりをしていた。
「サンダース伯爵令嬢をお連れ致しました」
尊き方々にそうつたえると、まっさきにエリザベス王妃の夫である国王が話しかけてくる
「サンダース伯爵令嬢、儀式を滞りなく終わらせご苦労だった。
雨が現在も降り続いて、作物も潤っているだろう」
「勿体ないお言葉です。
私も、お役に立てて嬉しく思います」
カーテシーすると膝を曲げるので、顔を下に向けて苦痛に歪歪めた。
「こちらにお座りなさい。
甘いショコラルトルに砂糖を入れてあるわ。
疲れなんてなくなってよ」
「疲労回復には一番です。
なにせ、神様の食べ物と呼ばれてますもの」
母と娘は微笑んで、マティルダに飲ませるために用意させたのだと言ってきた。
平民では、一生口に出来ない甘い飲み物。
貴族の中でも、中流は滅多に飲めないのだから。
「お気遣い頂き、ありがとうございます。
とても甘くて、元気が出てきます」
くどすぎずに調度よい甘さで、口から鼻に流れる甘味に酔いしれていた。
「この城でも、窓のガラスが割れるんじゃないかと驚いたぞ」
「そのキズはそのせいだろう。
すまない、気の毒なことをした。
名誉の負傷だ」
隣国同士の国王たちが、こぞってマティルダをあんじて称賛してくれる。
「名誉って!
ご令嬢に傷でも残りましたら、どうするのです!」
「王妃、その時は非の打ち所ない婚姻相手を探してあげれば良かろう!
なぁ、サンダース伯爵令嬢!」
喧嘩はして欲しくないと、愛想笑いと苦笑いして誤魔化すしかない。
「顔に傷があるのは可哀想ですわ。
晩餐会はサンダース伯爵令嬢の功績を称えるのも兼ねてます。その主役の顔の傷を、来客に見せるのに気が引けますわ」
エリザベス王妃は、悩み顔でマティルダを見ていた。
『そうだわ!
仮面を被れば傷も見えない。
エドワード王子も、侯爵令嬢を誘いやすいのではない!』
自分の素晴らしい機転にニヤニヤしている彼女は、2か国の両陛下は不気味に思った。
「マティルダ嬢、大丈夫?
どこか具合でも悪くなった?」
3人の母である先輩王妃は、心配になり、つい名前で声をかける。
若き王妃の自分の娘と、不安げになり目を合わせた。
「はっ!違います
不敬になるかもしれませんが…。
この傷では恥ずかしくて、華やかな場に出れませんわ」
マティルダは頬の傷を隠して、眉をこれでもかと下げる。
両目を瞑っている姿は、4人の
高貴な方々は吹き出しそうになった。
「これを隠すには! 」
「「「「隠すには?」」」」
思わず聞き返してしまう。
意外にノリのいい方々だった。
彼女の迫力に負けて、突っ込んでしまったようだ。
「仮面で隠すのです!
顔を隠すと、普段より気取らなくて楽しめそうですわ」
「おおー!良いではないか!
このところ暗い事ばかりだった。
干ばつギリギリを、雨が降って皆も喜んでいる」
「陛下、この位の悪ふざけは宜しいのではないでしょうか?!
これは怪我の功名ですが、素敵な名案に礼を言います」
若き国王夫婦は、久しぶりに明るい話題に微笑んでいた。
『雨乞いの巫女で只でさえ注目を浴びるのに、素顔は恥ずかしくて嫌だったのよ』
自分の思う通りになり、満足して一緒に笑っていた。
しかし、この案が失策になるとは思っていなかったのだ。
詰めが甘い、マティルダだった。
たった半日で、こんな状態で戻ってきた。
「マティ……、マティルダ~!
いったい何があって、どうしちゃったの~!?」
儀式の後の食事会までは、緊張で痛さを感じなかった。
だが、今になって転んだ時の傷がうずき出した。
「神様にやられました。
雷に雹、私が何をしたんでしょうか」
どんよりと捻りをきかせて言う私に、見上げる4の瞳は労いの目つきをしてくれた。
「大変だったようだね。
キズの手当ては、神殿でしてもらったんだ。
父上たちが会いたいそうだよ」
「アドニス殿下、分かりました。
儀式の説明しないと思っていましたので、ちょうど良かったです」
歩く度に膝を曲げるから痛いので、王様の所まで苦痛に堪えていた。
「痛い、もう歩きたくない。
ベッドで横になって休みたい」
「……」、案内している女官は独り言を聞いてないふりをしていた。
「サンダース伯爵令嬢をお連れ致しました」
尊き方々にそうつたえると、まっさきにエリザベス王妃の夫である国王が話しかけてくる
「サンダース伯爵令嬢、儀式を滞りなく終わらせご苦労だった。
雨が現在も降り続いて、作物も潤っているだろう」
「勿体ないお言葉です。
私も、お役に立てて嬉しく思います」
カーテシーすると膝を曲げるので、顔を下に向けて苦痛に歪歪めた。
「こちらにお座りなさい。
甘いショコラルトルに砂糖を入れてあるわ。
疲れなんてなくなってよ」
「疲労回復には一番です。
なにせ、神様の食べ物と呼ばれてますもの」
母と娘は微笑んで、マティルダに飲ませるために用意させたのだと言ってきた。
平民では、一生口に出来ない甘い飲み物。
貴族の中でも、中流は滅多に飲めないのだから。
「お気遣い頂き、ありがとうございます。
とても甘くて、元気が出てきます」
くどすぎずに調度よい甘さで、口から鼻に流れる甘味に酔いしれていた。
「この城でも、窓のガラスが割れるんじゃないかと驚いたぞ」
「そのキズはそのせいだろう。
すまない、気の毒なことをした。
名誉の負傷だ」
隣国同士の国王たちが、こぞってマティルダをあんじて称賛してくれる。
「名誉って!
ご令嬢に傷でも残りましたら、どうするのです!」
「王妃、その時は非の打ち所ない婚姻相手を探してあげれば良かろう!
なぁ、サンダース伯爵令嬢!」
喧嘩はして欲しくないと、愛想笑いと苦笑いして誤魔化すしかない。
「顔に傷があるのは可哀想ですわ。
晩餐会はサンダース伯爵令嬢の功績を称えるのも兼ねてます。その主役の顔の傷を、来客に見せるのに気が引けますわ」
エリザベス王妃は、悩み顔でマティルダを見ていた。
『そうだわ!
仮面を被れば傷も見えない。
エドワード王子も、侯爵令嬢を誘いやすいのではない!』
自分の素晴らしい機転にニヤニヤしている彼女は、2か国の両陛下は不気味に思った。
「マティルダ嬢、大丈夫?
どこか具合でも悪くなった?」
3人の母である先輩王妃は、心配になり、つい名前で声をかける。
若き王妃の自分の娘と、不安げになり目を合わせた。
「はっ!違います
不敬になるかもしれませんが…。
この傷では恥ずかしくて、華やかな場に出れませんわ」
マティルダは頬の傷を隠して、眉をこれでもかと下げる。
両目を瞑っている姿は、4人の
高貴な方々は吹き出しそうになった。
「これを隠すには! 」
「「「「隠すには?」」」」
思わず聞き返してしまう。
意外にノリのいい方々だった。
彼女の迫力に負けて、突っ込んでしまったようだ。
「仮面で隠すのです!
顔を隠すと、普段より気取らなくて楽しめそうですわ」
「おおー!良いではないか!
このところ暗い事ばかりだった。
干ばつギリギリを、雨が降って皆も喜んでいる」
「陛下、この位の悪ふざけは宜しいのではないでしょうか?!
これは怪我の功名ですが、素敵な名案に礼を言います」
若き国王夫婦は、久しぶりに明るい話題に微笑んでいた。
『雨乞いの巫女で只でさえ注目を浴びるのに、素顔は恥ずかしくて嫌だったのよ』
自分の思う通りになり、満足して一緒に笑っていた。
しかし、この案が失策になるとは思っていなかったのだ。
詰めが甘い、マティルダだった。
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