オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!

羽田 智鷹

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第二章 交錯・倒錯する王都

第二章 四十一話 手中の一人

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 「いや、流石五大明騎士様って感じですな」

 黄色く光る長剣を手に切っ先を俺たちの方に向けて言った。
 どうやら、セロの炎をその剣で防いだらしい。

 あの剣にも何やら魔法が施されていそうだ。 

 「そうだ、ここで五大明騎士も一人、いっとく?」

 「悪くない」

 そう言って杖を持っている方が反撃をしてきた。
 それをセロがすべて受け持つかのようにして防御する。

 魔力通しの衝突により、空中の魔力の乱れが俺に伝わってくる。 

 そのせいで突風が吹き荒れ、煙が再び巻き起こる。

 「俺様がアイツラが出てきた部屋へ行ってくる。それまでイル姉とナル姉はここを抑えておいてくれ。それにお兄さんたちの誰かは私についてきてほしい」

 鬼気迫る状況でセロが瞬時に判断を下す。

 敵に近づくことになるから、俺とユーリとクーレナさんでセロについていくことにした。
 ライアンとルカは援護射撃。

 イルさんがセロに代わって敵に魔法を打ち続ける。
 ナルさんは剣を振るうたびに魔法をまとった斬風のようにものが敵を向かっていく。

 俺たちは煙に紛れて彼らが出てきた部屋を目指す。
 敵は魔法使い一人で俺たちの猛攻に耐えている。
 いったい何者なのであろうか。 


 と、しかし煙に紛れて彼らの横を通り過ぎるには無理があったようだった。 

 「おっ、五大明騎士様こっちに来たけどどぅーする?」

 「了解っ」 

 魔法使いは魔力の衝突地点を誘導するかのように、放つ魔法の軌道を徐々に変える。

 そして気づいたときにはそれは天井に当たり、ガラガラと天井が廊下に落ちてきて、魔法使いたちの間を塞ぐ。

 「これで五大明騎士に専念できるだろ」

 「キシシシ、血がたぎるぜ」

 彼らのセロたちの後を追った。


 「彼らは何をしようとしてると思うんだ?」

 走りながら俺はセロに聞く。

 「多分、シェレンベルクさんを狙った犯行か何かだと思う。しかし、王都にこんな手練てだれがいたなんて……。この状況から考えて、シェレンベルクさんに何かあったとしか……」

 「とにかく急ぎましょ……」


 「はいよっ。どんどん飛ばすぜ」  

 見ると後ろから魔弾が飛んでくる。

 「やはりもう追いつかれたか」

 セロはこのままで行けないと思ったのか、立ち止まって敵と対峙した。 

 「俺様の仲間はどうした?」

 「さあな、運悪く瓦礫を埋もれていたりして……」

 「そうでなくても、アンタの援助には来られね~所だ」

 その声からは若干の自信ありと言った様子だった。

 「片方は俺様に任せとけ」

 そういうと、セロは魔法使いの方に顔を向けた。
 相手も仮面の奥から目を光らせる。
 その瞬間、空気中の魔力が張り詰めたように緊張が走る。
 どちらとも様子をうかがっているような状況だ。


 「ちぇっ、俺はこっちの相手かよ」

 そう言いつつ、長剣を振りかぶった。
 俺は"くない"でそれを止める。

 俺にはこれ一本しかないため、余計に神経を使える。

 相手の剣の僅かな重心の移動から、相手の次の行動を予測する。
 そうやって何十回と、攻撃しては防御し、防御しては攻撃した。

 しかし、両者ともなかなか決定的な一打が決まらない。

 「右!!」

 ヒュンッ

 ユーリがそういった瞬間、俺の右耳の横を岩がかすめた。

 それを敵の剣が弾く。

 「重っ」

 相手がバランスを崩した。
 その瞬間俺は突きに出たが、間一髪のところで、バック宙を決められ避けられる。

 それにしても、ユーリの援護射撃は俺もヒヤリとした。
 右っ、だけじゃわかんねーし。

 相手は態勢を立て直そうとした。
 しかし、ユーリが追撃する。

 そのスキに俺は再びヤツのもとに近づく。
 敵は必死に防いでいるが、それでも速度を持った物体を剣で防ぎながらも衝撃は弾き返すことはできない。

 「ちょっ、連撃はやばいっ……。スチュ……、じゃなくてへいっ、援護」

 敵は相方に向かって何やら言っている。
 相手の気が動転している今がチャンスなのかもしれない。
 そう思って一歩踏み出したときだった。


 相方が杖をこちらに一振りした。
 その瞬間、こちらに突風が吹き付け、ユーリの岩が飛んでくる。

 俺も後退して、なんとか躱した。

 「ちぇっ。ここでこれを使うことになるとは……」

 そう言ってやつは長剣をもう一つ取り出した。

 流石にくない一本では受け止めきれない。

 隣では軽めの探り合いが続いている。
 俺はユーリから短剣を借りる。
 ユーリは魔法も使えるからそこまで問題はないだろう。


 ユーリの射撃に飽き飽きしたのか、ユーリに向かって、両手で岩をはたき落としながら、敵は走り始めた。
 俺はユーリの横に立って待ち構えてる。
 直前にやつは標的をユーリから俺に変えた。

 そして、俺に二本の剣が飛びかかった。
 しかし、俺の目には二本の剣の軌道が読めた。
 力を受け流すように短剣二本をそれぞれに当て、思い切り弾き飛ばした。

 敵の持っていた武器が、くるくると宙で回転しながら遠くに突き刺さる。

 そして当の本人は吹っ飛ばされて、壁に激突している。

 そして、のっそりと立ち上がった。

 「げほっ、げほっ。なかなかやりますね。でも、まだ俺には最後の手段が……」

 そう言って懐から短剣を取り出した。

 「って、シウ。やられてませ……? っと、無理するな。俺に任せろ」 

 「大丈夫だ」

 そう言って、俺に襲い掛かってくる。
 短剣通しの戦い。

 しかも、俺は二本ある。

 今のところ何度か互いに間合いを狭め、打ち合っては距離を取っているがそう長くは続かないだろう。

 俺はヤツの攻撃に集中した。

 このまま続けば、自分の優位は増す一方だ。

 丁寧に、丁寧に。

 ユーリもクーレナも、もしもの時に備えて構えてはいるが、この戦いを見守っている。 

 突然、やつは壁を蹴ってスピードをつけてきた。

 しかし、多少斬撃が重くなったとは言え、日々鍛えている自分にとってはそこまで恐れることではない。
 俺はやつのモーションに合わせて、丁寧に受け止める態勢に入った。


 しかしことが動いたのは、そのときだった。
 やつの斬撃を受け止めると予想以上にやけに重かった。

 なぜだ、と考える前に答えは見えていた。
 やつはそのぶつかり合った短剣を支点に足を後ろから前へと前転していた。

 そして、ぐいっと、腕の力で飛ぶ方向に足が回ったときに腕で俺の短剣を押し返した。
 反発する力で更に速度を上げていった。


 つまりやつは俺を短剣で攻撃した瞬間に、余った体をスピードを俺にぶつけることなく、逆に俺をかわすように、俺の頭上で一回転したというわけだ。 

 そして、俺を押しのけるように別の方向へととんでいく。


 やつの予想だにしない動きに皆の動きが遅れる。
 やつが飛んだ方向はと言うと、セロのいる方だった。

 やつは短剣を構えた。


 どうやら、怯んでいるのは俺たちだけではないらしい。
 やつの相棒も自分の相手を、相方が狙うということに驚いたのだろうか。
 びっくりして固まっている。

 やつの飛ぶ方向はセロから見たら背後に当たる。
 だから、まだ気づいていない。


 「セローーー、後ろーー」
 だから、俺は叫んだ。
 無我夢中で。

 動きがスローモーションのように見える。
 セロがゆっくりと後ろを向く。

 もう一人の敵が自分を攻撃してきていると分かったのだろうか。
 それとも何かが自分に向かってきているという事実だけに気づいただけかもしれない。

 しかしセロはすぐさま杖を一振りして、自らを覆うように防御魔法を展開させた。

 ゆっくりに見えた出来事だったが、功を奏したように見えた。
 やつのスピードは収まらないが壁に阻まれて終わりだろうと、だれもが安堵していた。


 やつは空中で短剣を持っていない方の腕のピンと伸ばした。
 セロの壁再びどこかへ切り返すのだろうか。

 そしてそのままやつの手がセロの防御壁に触れた。
 やつはその壁からの力と自分自身の力の両方に挟まれて、伸びていた腕が縮んだ。
 そして、壁に跳ね返されたように見えた。

 しかし、現実は違った。


 パリーーーン

 セロの防御壁がバラバラに砕け散っていた。
 若干スピードを落としつつも、地面につくことなくやつはセロと接触した。
 見ると、セロの後ろ脇腹にやつの短剣が深々も突き刺さっている。

 その瞬間、地面にポタポタっと血が滴る。
 セロは後ろに振り向きながら驚愕の顔で動かない。

 「えっ……」

 やつの相方は、歓喜に見えない声を上げる。
 予想外のことといえ、喜んでいる様子はなかった。

 やつはすぐさまセロと距離を取った。

 俺たちはやつの動きをただ見ていることしかできず、金縛りにあったように固まっていた。
 止まることなく流れ続け、セロの足元には血溜まりができている。

 そして、セロが前に倒れた。
 その瞬間、皆の金縛りが解けたようだった。

 「セロ様ーーーー!!!!!!!」

 目には涙を浮かべ、真っ先にセロのもとは駆け寄ったのは、なんとクーレナさんだった。
 続いて駆け寄ろうとしたのは、やつの相方だった。
 杖を片手に近づこうとするやつに、俺は短剣を構えて立ちふさがる。
 こいつは、負傷したセロにさらに追い打ちをかけようというのだろうか。

 「ちょっと待った、待った」

 何かの拍子に、この声はどこかで聞いたことがあるな、と今になって気づいた。
 やつは杖を後ろに投げ捨て、自らの仮面に手をかけた。
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