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朝焼けの街 (カハルサーレ)
25. 木の棒を買う
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≪あ! あれ買う!≫
暖炉用の焚き木だろうか。それにしては細い枝が種類ごとに小さく束ねられ、荷台に載せてあった。焦げ茶色した普通の木の色をしている。
紺色の短髪に青っぽい肌(!)の中年男性が、白髪老人に硬貨を渡して購入しようとしているから売り物だ。
って、小金貨じゃん! 金竜様だよ!
細かいお金の手持ちがないだけかと横目でちらちら観察すると、お釣りは『小花』が数枚だけ。男性が買ったのは、一本ずつが親指ほどの太さの小枝をたったの四本。長さだって15センチあるかないか。
≪ななな何でそんなに高いの?!≫
≪当然じゃ、香木ではないか≫
こうぼく。太い薪が燃えはじめるまで、暖炉で先に燃やす小枝だと思ってた。まぁ、薪だって火の持ちや匂いで細かい違いはあるから、地球でも木の種類に拘る人たちも結構いるけれど。
それにしたって金竜、日本でいう万札レベルを燃やすかね。
≪普通の薪なら森に行けばすぐ手に入るが、ああいう香りが強いのはちと特殊でな。見つけるコツがいる訣よ。まとまった量となると危険も伴うから素人では難しい≫
危険なのは、餌の少ない冬場によく街を襲うという魔獣のせいだろうか。爺様の解説に、≪なるほどね≫と念話で頷く。
でも男性客の服装は他の町人と変わらない。琥珀を燃やしたロシア貴族にゃ見えないんだけどな。
≪この国は冬が長い。暖炉は限られた娯楽の一つじゃ。あるいは女房の御機嫌伺いかの≫
≪私のいた所じゃ大金持ちでもない限り、普段の家族へのお土産はせいぜい馬助数枚だよ≫
市場の様々な商品から察するに、1イリの1小花は100円玉みたな感覚。向こうのお店のアイシングされたキャロットケーキみたいなのが、1ホールで馬助銀貨2枚の24イリ、つまり2400円ってことになる。
……いや、それだと高いか。食品の値段が、それ以外と比べて結構するんだよねココ。王都に近いせいかな、農業大国のフランスよりもロンドンの物価感覚に近い。
だから残り物とはいえ、さっきのお恵みは屋台主さんの体形同様、大変大変太っ腹な気がする。
≪こういうのは毎回売っているとは限らんじゃろ。しかも目利きでないと、香水を浸み込ませてそれらしくした偽物を掴まされる≫
……って、香水よりも暖炉用の木が高級なのか。
≪残念。平べったい棒が何本か欲しかったんだけどなぁ≫
30センチ定規のように薄く切り出した木の束の前で溜め息を吐いていたら、おじいさんが何か話しかけてくる。
≪そこら辺は、色だけだから安いって言ってるわよ≫
香木じゃなくて、色の木? 全部、割り箸色してるのに? 首を傾げる私の足元で、納得した様子の白い犬は『そこら辺』を眺めていた。
≪普通は色と香りの両方なのに、そういうのもあるのね≫
≪えーと。それ、私の『普通』じゃない。多分、いや、絶対≫
頭が混乱してきた。
≪え? 暖炉の炎の色を変えたいときに入れるでしょ?≫
≪そんな木売ってないよ! 炎は『普通』に炎の色だよ≫
≪だからその『普通』の色だと厭きるじゃない≫
カチューシャもやっと首を傾げて、確認してくる。
≪その木片の上に色が少し塗ってあるでしょ。その色に変化するのよ≫
≪……青と紫は『変化』になるだろうけど、赤と黄色は普通に炎の色じゃないの?≫
≪違うわよ。赤はもっと純粋に赤だし、黄色はくっきり黄色になるの≫
よくわかりまセンザンコウだよ。もう思考放棄して丸まっていーかな。
木肌が削っていない小枝も、どれも上の切り口だけペンキが塗ってあった。お守りと同じ四色がポピュラーで、いろんな濃淡を揃えている。オレンジや緑色を塗った枝も少しだけあって……白い炎はともかく灰色や黒色ってなんだそれ。
≪黒い炎って暗闇になるの?≫
≪どこまで暗くなるかはモノによるけど、普通は暖炉の暖かさだけ欲しいときじゃない? 魔導士だと複数の色粉で描く魔法陣に使うこともあるわね。
灰色の印は色を変えるのではなくて、薪が爆ぜて五月蠅くなるのを抑えるの。良質のものなら部屋の防音にもなった筈よ、魔術には劣るけど。
白も色は変わらないけれど、消臭殺菌効果があるから、部屋の掃除のときに暖炉にくべるわ≫
だからホントになんだそれ。暖炉の概念も揺らいできた。
色付きアロマポットや色なし暖房器具だったり、消音装置と化したり、空気清浄機になったり。せめて私が想像している暖炉の形は保持してくれてるのだろうか。
≪えーと、安いってどのくらい?≫
≪さっきどれかが1馬助でどれかが2か3馬助って言ってた気がするけど……≫
横から話しかけてくる仙人様みたいな瓢箪顔のおじいさんに、手前の定規の束を指す。
「イリ?」
「1****」
早口の嗄れ声だけれど、馬助のことだと思う。カチューシャに確かめたら、そうだと教えてくれた。
定番四色やオレンジや緑は一束約八本で12イリ。白や黒や灰色は六本や四本で12イリ。シナモンスティックだってもっと安いぞオイ。
≪古いから発色が悪いし普通の四色しかないけど、奥の短いのなら一掴みで1鷹助ですって≫
えーと、『鷹助』は……『馬助』の四分の一の銀貨だから、4イリか。
アイスキャンディーの棒みたいな、一回り細くて短いのが奥の荷台に散らばっている。どちらかというと緩衝材みたいな扱いなのかな、ちゃんと紐で縛った小枝の合間に埋まっていた。
近くまで行くが絵の具がどこにも塗られていない。これ、普通の木片じゃないの。
≪え? さっき芽芽が訊いたのと同じ種類じゃない。香りなしの≫
≪どう見分けてるの?≫
≪なんとなく、そういう感じしているでしょ≫
……カチューシャよ、その『なんとなく』が私には判らないんだってば。地球でだって基本は都会暮らしだから、葉っぱも付いていない木の枝なんて見分けがつかないのに。
紫色の紅葉パイはすでに食べ終わり、残った型抜きポテトを葉っぱの蓋でくるみなおしてコートのポケットに仕舞う。
リュックの肩紐のプラスチック部分に結んだナプキンを掴んで、瓢箪おじいさんに見えるようにゴシゴシと大袈裟に手を拭いた。
≪まあいいや。予備と失敗したとき用と、50本くらいあれば≫
余ったら各色一本くらいは燃やしてみたかったけれど、この際気にすまい。
≪何をするつもりじゃ≫
≪んー、あとで実地で説明する≫
寄り分けたアイス棒を荷台の開いたスペースにスライドさせながら数えているから、爺様には曖昧な返事になってしまう。
拭いたとはいえ、ちょっと前まで炒め物を触った手だ。店主の機嫌を損ねないよう、購入予定の一本を握って他のをチョイチョイと手前に掻き分けているのだ。
≪それだと色が偏るけどいいのか、って訊いてるわよ≫
カチューシャが通訳してくれるのだけれど、いいも何もペンキが塗ってないのだから仕方なくないですか、おじいさん。
両肩をすくめ、眉を寄せて困った顔をするしかない。
≪12本ずつ四色見繕ってやろうか、ですって≫
おお。すぐに笑顔で首を縦に振った。
「**50****?」
50本でないと駄目なのか確認されたので、そうですこんな風です、と自分で50本取り分けた木片を指して頷いておく。まぁ、瓢箪仙人ご提案の48本でも全然いいのだけれど、『どちらでも構わない』とは話せないのだ。
≪でもどうやって炎にくべたときの色が判るの?≫
≪そりゃ土の魔法じゃろ。そのくらいは出来ねば、森に落ちている香木を見つけられん≫
『魔法』ってことは、呪文を唱えなくても使えるヤツだ。爺様は魔導士の使うものしか『魔術』と呼ばない。どっちでもすごときい技だと思うんだけどな。
そいで香木は植わった樹から切り落とすのではなく、訓練した豚に落ち葉や草を掻き分け嗅ぎ分けさせて、地面に落ちているのをひたすら拾うらしい。トリュフ探しみたいだ。
『香木豚』と呼ばれる魔獣との掛け合わせ品種で、噛みはしないけど見知らぬ人間にブヒブヒ威嚇するから、市場には連れてこれない。
≪追加の二本は特別に売れ残った香木にしてくれるって。大方、安いやつだろうけど≫
カチューシャ、一言余計だって。
「イリ?」
「4イリ」
片手一掴みというより、左右から両手で挟んで大きく一握りになるのに、50本全部で1鷹助でいいみたい。しかも香木を2本おまけしてくれて、52本になった。
「アリガト!」
にこにこ笑顔、元気一杯うれしそうに返事をした。
もうすぐ店仕舞いだからいいってことよ、みたいな話をしながら、瓢箪おじいさんも笑顔でアイス棒を毛糸でまとめていく。赤・黄色・青・紫の四つの束が出来上がった。四色とも均等の本数にするために香木を追加したのかな。
それぞれ同じ色の絵の具を、平刷毛でさっと切り口に塗ってくれる。
商品としては、一番安いんじゃなかろうかコレ。なのにさっきの男性客と接客態度が変わらない。貴重なお金が出て行くけれど、代わりに心が温かくなる。
フィオが中に入っているから何度もリュックを揺らしたくないのだが、念話で先に断って、やはりここは感謝のお辞儀をしっかりしておいた。
どこの世界であろうと、こういう人たちのおかげで毎日が輝くんだと思う。
****************
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すでに押してくださった皆様、感謝の気持ちでいっぱいです。
今日も明日も、希望の種がたくさん芽吹きますように。
暖炉用の焚き木だろうか。それにしては細い枝が種類ごとに小さく束ねられ、荷台に載せてあった。焦げ茶色した普通の木の色をしている。
紺色の短髪に青っぽい肌(!)の中年男性が、白髪老人に硬貨を渡して購入しようとしているから売り物だ。
って、小金貨じゃん! 金竜様だよ!
細かいお金の手持ちがないだけかと横目でちらちら観察すると、お釣りは『小花』が数枚だけ。男性が買ったのは、一本ずつが親指ほどの太さの小枝をたったの四本。長さだって15センチあるかないか。
≪ななな何でそんなに高いの?!≫
≪当然じゃ、香木ではないか≫
こうぼく。太い薪が燃えはじめるまで、暖炉で先に燃やす小枝だと思ってた。まぁ、薪だって火の持ちや匂いで細かい違いはあるから、地球でも木の種類に拘る人たちも結構いるけれど。
それにしたって金竜、日本でいう万札レベルを燃やすかね。
≪普通の薪なら森に行けばすぐ手に入るが、ああいう香りが強いのはちと特殊でな。見つけるコツがいる訣よ。まとまった量となると危険も伴うから素人では難しい≫
危険なのは、餌の少ない冬場によく街を襲うという魔獣のせいだろうか。爺様の解説に、≪なるほどね≫と念話で頷く。
でも男性客の服装は他の町人と変わらない。琥珀を燃やしたロシア貴族にゃ見えないんだけどな。
≪この国は冬が長い。暖炉は限られた娯楽の一つじゃ。あるいは女房の御機嫌伺いかの≫
≪私のいた所じゃ大金持ちでもない限り、普段の家族へのお土産はせいぜい馬助数枚だよ≫
市場の様々な商品から察するに、1イリの1小花は100円玉みたな感覚。向こうのお店のアイシングされたキャロットケーキみたいなのが、1ホールで馬助銀貨2枚の24イリ、つまり2400円ってことになる。
……いや、それだと高いか。食品の値段が、それ以外と比べて結構するんだよねココ。王都に近いせいかな、農業大国のフランスよりもロンドンの物価感覚に近い。
だから残り物とはいえ、さっきのお恵みは屋台主さんの体形同様、大変大変太っ腹な気がする。
≪こういうのは毎回売っているとは限らんじゃろ。しかも目利きでないと、香水を浸み込ませてそれらしくした偽物を掴まされる≫
……って、香水よりも暖炉用の木が高級なのか。
≪残念。平べったい棒が何本か欲しかったんだけどなぁ≫
30センチ定規のように薄く切り出した木の束の前で溜め息を吐いていたら、おじいさんが何か話しかけてくる。
≪そこら辺は、色だけだから安いって言ってるわよ≫
香木じゃなくて、色の木? 全部、割り箸色してるのに? 首を傾げる私の足元で、納得した様子の白い犬は『そこら辺』を眺めていた。
≪普通は色と香りの両方なのに、そういうのもあるのね≫
≪えーと。それ、私の『普通』じゃない。多分、いや、絶対≫
頭が混乱してきた。
≪え? 暖炉の炎の色を変えたいときに入れるでしょ?≫
≪そんな木売ってないよ! 炎は『普通』に炎の色だよ≫
≪だからその『普通』の色だと厭きるじゃない≫
カチューシャもやっと首を傾げて、確認してくる。
≪その木片の上に色が少し塗ってあるでしょ。その色に変化するのよ≫
≪……青と紫は『変化』になるだろうけど、赤と黄色は普通に炎の色じゃないの?≫
≪違うわよ。赤はもっと純粋に赤だし、黄色はくっきり黄色になるの≫
よくわかりまセンザンコウだよ。もう思考放棄して丸まっていーかな。
木肌が削っていない小枝も、どれも上の切り口だけペンキが塗ってあった。お守りと同じ四色がポピュラーで、いろんな濃淡を揃えている。オレンジや緑色を塗った枝も少しだけあって……白い炎はともかく灰色や黒色ってなんだそれ。
≪黒い炎って暗闇になるの?≫
≪どこまで暗くなるかはモノによるけど、普通は暖炉の暖かさだけ欲しいときじゃない? 魔導士だと複数の色粉で描く魔法陣に使うこともあるわね。
灰色の印は色を変えるのではなくて、薪が爆ぜて五月蠅くなるのを抑えるの。良質のものなら部屋の防音にもなった筈よ、魔術には劣るけど。
白も色は変わらないけれど、消臭殺菌効果があるから、部屋の掃除のときに暖炉にくべるわ≫
だからホントになんだそれ。暖炉の概念も揺らいできた。
色付きアロマポットや色なし暖房器具だったり、消音装置と化したり、空気清浄機になったり。せめて私が想像している暖炉の形は保持してくれてるのだろうか。
≪えーと、安いってどのくらい?≫
≪さっきどれかが1馬助でどれかが2か3馬助って言ってた気がするけど……≫
横から話しかけてくる仙人様みたいな瓢箪顔のおじいさんに、手前の定規の束を指す。
「イリ?」
「1****」
早口の嗄れ声だけれど、馬助のことだと思う。カチューシャに確かめたら、そうだと教えてくれた。
定番四色やオレンジや緑は一束約八本で12イリ。白や黒や灰色は六本や四本で12イリ。シナモンスティックだってもっと安いぞオイ。
≪古いから発色が悪いし普通の四色しかないけど、奥の短いのなら一掴みで1鷹助ですって≫
えーと、『鷹助』は……『馬助』の四分の一の銀貨だから、4イリか。
アイスキャンディーの棒みたいな、一回り細くて短いのが奥の荷台に散らばっている。どちらかというと緩衝材みたいな扱いなのかな、ちゃんと紐で縛った小枝の合間に埋まっていた。
近くまで行くが絵の具がどこにも塗られていない。これ、普通の木片じゃないの。
≪え? さっき芽芽が訊いたのと同じ種類じゃない。香りなしの≫
≪どう見分けてるの?≫
≪なんとなく、そういう感じしているでしょ≫
……カチューシャよ、その『なんとなく』が私には判らないんだってば。地球でだって基本は都会暮らしだから、葉っぱも付いていない木の枝なんて見分けがつかないのに。
紫色の紅葉パイはすでに食べ終わり、残った型抜きポテトを葉っぱの蓋でくるみなおしてコートのポケットに仕舞う。
リュックの肩紐のプラスチック部分に結んだナプキンを掴んで、瓢箪おじいさんに見えるようにゴシゴシと大袈裟に手を拭いた。
≪まあいいや。予備と失敗したとき用と、50本くらいあれば≫
余ったら各色一本くらいは燃やしてみたかったけれど、この際気にすまい。
≪何をするつもりじゃ≫
≪んー、あとで実地で説明する≫
寄り分けたアイス棒を荷台の開いたスペースにスライドさせながら数えているから、爺様には曖昧な返事になってしまう。
拭いたとはいえ、ちょっと前まで炒め物を触った手だ。店主の機嫌を損ねないよう、購入予定の一本を握って他のをチョイチョイと手前に掻き分けているのだ。
≪それだと色が偏るけどいいのか、って訊いてるわよ≫
カチューシャが通訳してくれるのだけれど、いいも何もペンキが塗ってないのだから仕方なくないですか、おじいさん。
両肩をすくめ、眉を寄せて困った顔をするしかない。
≪12本ずつ四色見繕ってやろうか、ですって≫
おお。すぐに笑顔で首を縦に振った。
「**50****?」
50本でないと駄目なのか確認されたので、そうですこんな風です、と自分で50本取り分けた木片を指して頷いておく。まぁ、瓢箪仙人ご提案の48本でも全然いいのだけれど、『どちらでも構わない』とは話せないのだ。
≪でもどうやって炎にくべたときの色が判るの?≫
≪そりゃ土の魔法じゃろ。そのくらいは出来ねば、森に落ちている香木を見つけられん≫
『魔法』ってことは、呪文を唱えなくても使えるヤツだ。爺様は魔導士の使うものしか『魔術』と呼ばない。どっちでもすごときい技だと思うんだけどな。
そいで香木は植わった樹から切り落とすのではなく、訓練した豚に落ち葉や草を掻き分け嗅ぎ分けさせて、地面に落ちているのをひたすら拾うらしい。トリュフ探しみたいだ。
『香木豚』と呼ばれる魔獣との掛け合わせ品種で、噛みはしないけど見知らぬ人間にブヒブヒ威嚇するから、市場には連れてこれない。
≪追加の二本は特別に売れ残った香木にしてくれるって。大方、安いやつだろうけど≫
カチューシャ、一言余計だって。
「イリ?」
「4イリ」
片手一掴みというより、左右から両手で挟んで大きく一握りになるのに、50本全部で1鷹助でいいみたい。しかも香木を2本おまけしてくれて、52本になった。
「アリガト!」
にこにこ笑顔、元気一杯うれしそうに返事をした。
もうすぐ店仕舞いだからいいってことよ、みたいな話をしながら、瓢箪おじいさんも笑顔でアイス棒を毛糸でまとめていく。赤・黄色・青・紫の四つの束が出来上がった。四色とも均等の本数にするために香木を追加したのかな。
それぞれ同じ色の絵の具を、平刷毛でさっと切り口に塗ってくれる。
商品としては、一番安いんじゃなかろうかコレ。なのにさっきの男性客と接客態度が変わらない。貴重なお金が出て行くけれど、代わりに心が温かくなる。
フィオが中に入っているから何度もリュックを揺らしたくないのだが、念話で先に断って、やはりここは感謝のお辞儀をしっかりしておいた。
どこの世界であろうと、こういう人たちのおかげで毎日が輝くんだと思う。
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