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暁の街(メリアルサーレ)~ ダルモサーレ ~ リダンサーレ
42. 暁の街を出る
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「これか? こっちの話はだなぁ、昔あるところに――出だしってなんだっけ、オイ、知ってる奴いるか?」
私は幌馬車の中で本を広げ、おじさんたちに題名をさし示す。揺られているので本文を読んでもらうことは流石に躊躇われたが、題名だけでもいい会話の糸口になったようだ。
私がどの話も詳しく知らないと判ると、あらすじを教えてくれる。
爺様と一緒に念話通訳してくれているカチューシャは、足元のスペースで丸くなって寝たフリ。人間と同一料金取られたけれど、今回も一緒に乗せてもらえた。
ただ、野犬でないことを示す首輪と、犬が苦手な人を安心させるためのリードは買っておいたほうがいい、とおじさん軍団にアドバイスされた。
私もすっかり失念していたけれど、今まで何も言われなかったのよね。カチューシャの人混みに紛れる魔法のせいなのかなぁ……それとも犬に寛容な人が多いのか。これまた豚と解らない。
一番積極的に話しかけてくれるリーダー格のおじさんは、淡い金髪をスポーツ刈りにして、割れた顎に無精鬚。
よく見ると、袖口から少しだけ覗く小麦色の左腕に、古い切り傷が刻まれている。おまけに右耳も多少欠けて、山賊の手配書に登場しそうなお顔。
だけど面倒見の良い親戚のおっちゃんって雰囲気で、怖くはなかった。
ガチムチ四人、皆で和気藹々としている。幼馴染同士で久しぶりに落ち合い昨晩語り合って、ダルモサーレ近郊の故郷に戻る途中だと先ほど教えてくれた。
てことは、職種としては別々の道を歩いているのかな。
「それで性悪クソ大猫がお姫様の味方につく。確かそうだったろ?」
「いいえ、大猫は寝返りましたよ。薬草を見つけたのは狐ですってば、フフフ」
「その話は狐なんて出てこないのである。林檎姫の話とごっちゃになっておるぞ」
おじさんたちが、『自分が子どもの頃に聞いた話の筋はこうだった』と議論している。皆、自分の記憶が一番正しいと思っているから、なかなか話が進まない。
とうとう私の本を取り上げ、中身を確かめだす。で、どっちが勝っただの負けただの……いつの間に勝負に発展していたんだ。
その後は、本を使って『さてどっちでしょう』クイズに進化したよ。幌馬車の中なのによく酔わないね。
画家のサルバドール・ダリみたいなチョビ赤髭で、衣服の柄や飾りがとっても凝っているお洒落なおじさんだけ小柄。残りの三人は、2メートルはあるんじゃないかってくらい背が高い。
そして四人とも筋肉マッチョ体型だからかな、馬車の中はかなりぎゅうぎゅうである。
私は笑顔を保ちつつ、遠慮がちにフィオが潜んでいるリュックを胸元に引き寄せ、爺様に質問することにした。
≪この国の人たちって、こんな感じなの?≫
≪はて、どんな感じじゃ?≫
≪陽気で明るくて、面倒見が良くて親切≫
≪大陸の最北に位置して日射時間も限られる。冬は厳しいし、魔獣は多いから、陰気で無愛想だと諸外国で専らの悪評じゃ≫
これが、こっちの世界の『陰気で無愛想』ってこと?
オルラさん一家だけでなく、美魔女女将さんも、最初の街のウォンバットおじさんも、フラミンゴおばさんも、皆すごく優しかったよ? あ、瓢箪おじいさんと、エリマキトカゲ兄さんも。
宿までの道を教えてくれた人たちも笑顔だったし、馬車の従業員さんたちとか、最初の街の子どもたちとか気さくだったし。
もっといえば、霊山のもふり兵士とか、街壁の日向ぼっこ門番さんも無害だった。
≪芽芽が大人扱いされてないだけでしょ。女を主張してない貧乳だし≫
相変わらずのSっ気を発揮して、カチューシャが冷たく言い放つ。
ねぇ、最後の一言余計だよね? そこ、言う必要ないよね? ふと女将さんの豊満な胸を思い出し、自分でトドメを刺してめっきり凹んだ。
でも、こっちのほうが肩凝りにならないからいいんだもん。
あーあと、ブラジャー必要ない。母親にバレたら『他人様の目が』って怒られるけど、向こうの世界でも洋服を重ね着して付けないまま誤魔化せてたし、こっちの市場でも購入しないで節約できた。
あとは、にゃんだ、わんだ。私はしばし、『胸が小さいことによるメリット』を真剣に思案していた。
……大きくする魔法ってないのかな、くすん。
ほぼずっと、なだらかな下り坂。小さな集落をいくつか通過し、ダルモサーレに辿り着く。
おじさんたちは馬車降り場で私に待つように言うと、豪快なカバさんそっくりの下腹でっぷり元締めを奥から連れて来て、「この子が青い馬の連峰へ行きたがっている」と伝えてくれた。
「うーん。まずは『**』まで行くだろ、そこからは『**』の『大きな**』行きだな、たぶん。それで『**』か? いや、『**の城』かもしれん」
地名が翻訳不能で弾かれてる部分と、意味的に訳せるせいで伝わってくる部分があるから余計に混乱した。とりあえず、この国の地図を出そう。
「おう、地図があるなら話は早い。つまりだな、ここをこう行ってだな――」
「親爺どの、それならこちらへ馬車が出ているのではございませんか?」
「そういえば昔、姉貴の別れたクソ亭主がここからこう迂回したほうが逆に時間がかからねぇって話してたような」
おじさんたち、元締めさんも含めてだけど、基本的に議論が好きな種族だよね。
地図を取り上げられた私は鉛筆を握りしめ、ひたすら『待て』の状態。
一人ぽつんと丸太をくり抜いた長椅子の端っこに腰かけていた。元締めさん仕様なのか、足が地面に付かないから、ぶらぶらぶら。
「よっしゃ、多分これで間違いない。いいか?」
元締めさんがようやく私の膝の上に地図を返してくれる。
巨体を縮めて傍らにしゃがみ込むと、ダルモサーレはここ、そいで今いる馬車降り場の裏手から長距離の馬車が出てる、と説明を始めた。次に目指すべきは、大きめの街を二つと森一つを越えた場所らしい。
「ココ」
今朝から皆が連呼しているから覚えた。最初「ココダ」だと思っていたら、爺様とカチューシャがそれだと余計な音節を付けている、と訂正してくれた。元締めさんが頷きながら太い指でさし示す場所を鉛筆で丸く囲む。
「そこからは、こう行ってだな、ここの街まで行くんだ」
「ココ」
こくり、と頷いて、鉛筆で地名らしき単語に丸。
元締めのおじさんは、六十歳前後だろうか。下町の太っ腹大親分って感じ。
私は言われた場所を丸していき、青い馬の連峰近くの街まで地図上で到達した。
「ただしここら辺からは、もう一度向こうに着いてから確かめたほうがいい。もっと別の行き方があるかもしれん」
私は『解った』と唇を引きしめてしっかり頷き、その中継地点を二重丸にする。隣に『要・質問』という意味合いでハテナマークも小さく描いておく。
元締めは地図に目線を合わせたままゆっくり立ち上がり、自分の短めの胡麻塩頭をがしがし掻き毟った。
「連峰の中のこの山ってことは、行きたいのは修験場なんだろ? その年で出家でもするのか?」
ふるふるふる。
「知り合いでもいるのか?」
うーん、なんとも。とりあえず首を傾げます。知り合いというか、相談相手というか。
「あそこはちょっと特殊だからな。近場のここ、この街以降の行き方は俺たちじゃあ、まったく判らん。あそこの僧侶連中は俗界の人間とは関わろうとしないって噂だからな」
やっぱりそうなのか。最終到達地点の街の名前をじっと睨みつけ、『解りました、覚悟しときます』ってアピールを一生懸命する。
ついでに当座の目標地点として、丸で囲んだ地名の周囲にぴっぴっと短い線を加えていく。来たる寒さに負けないよう、燦々と輝くお日様マークに改めた。
「アリガト」
「おう。いいてことよ。『**』行きの長距離馬車は明日朝の水の刻から受付で、四半刻すぎに出発だ。この建物の裏手、向こうの発着場に来てくれ」
私は力強く頷いて、深々とお辞儀をした。大雑把に北を目指して森を歩いていた頃とは大違いだ。貴重な情報がここまで入手できるだなんて。ああもう、感動のあまり泣けてくる。
「なっ、どどどうしたっ。俺なんか変なこと言っちまったか? いやでもこの時間だと馬車は近隣までしか出せなくてだなっ」
違う違う、と首を振る。私は滲んだ涙を拭うと、元締めさんを見上げてにっこり笑った。
「アリガト!」
私が喜んでいるのを理解した元締めさんは、目線を右左に彷徨わせ、照れながら頭を掻き毟っていた。
四人組のおじさんたちは、少し離れた所で楽し気に会話していた。
こちらの話が終わったらしいと踏んで、元締めさんが私をいじめているだの、顔が怖いせいだのと口々に揶揄いながら、近づいて来る。
「君、この街に知り合いは? 泊まる当てはありますか?」
一番背高のっぽなおじさんが訊いてくれた。口髭が完全にシュナウザー犬で執事っぽい。空色の髪はオールバックで丁寧に整えていて、この人だけは細めの縦長マッチョ。
ポケットに入れていた木製の葉書を見せることにした。ここに書いてある宿屋に行きたいです。
「あーここな、うまい飯を食わせる宿だ。その犬なら大人しいし、同伴させてもらえると思うが、念のために一緒に行ってやろうか?」
おおう、金髪山賊リーダーさん。なんですか、その至れり尽くせりなご提案は。
おじさんたちのムキムキな肉体は世を忍ぶ仮の姿でしたか、実は天の御使い様でしたか、『ベルリン・天使の筋肉』でしたか。
****************
※『ベルリン・天使の詩』という古い映画がありまして……芽芽は祖父と一緒に映画鑑賞をしていたので、基本的にレトロ嗜好です。
私は幌馬車の中で本を広げ、おじさんたちに題名をさし示す。揺られているので本文を読んでもらうことは流石に躊躇われたが、題名だけでもいい会話の糸口になったようだ。
私がどの話も詳しく知らないと判ると、あらすじを教えてくれる。
爺様と一緒に念話通訳してくれているカチューシャは、足元のスペースで丸くなって寝たフリ。人間と同一料金取られたけれど、今回も一緒に乗せてもらえた。
ただ、野犬でないことを示す首輪と、犬が苦手な人を安心させるためのリードは買っておいたほうがいい、とおじさん軍団にアドバイスされた。
私もすっかり失念していたけれど、今まで何も言われなかったのよね。カチューシャの人混みに紛れる魔法のせいなのかなぁ……それとも犬に寛容な人が多いのか。これまた豚と解らない。
一番積極的に話しかけてくれるリーダー格のおじさんは、淡い金髪をスポーツ刈りにして、割れた顎に無精鬚。
よく見ると、袖口から少しだけ覗く小麦色の左腕に、古い切り傷が刻まれている。おまけに右耳も多少欠けて、山賊の手配書に登場しそうなお顔。
だけど面倒見の良い親戚のおっちゃんって雰囲気で、怖くはなかった。
ガチムチ四人、皆で和気藹々としている。幼馴染同士で久しぶりに落ち合い昨晩語り合って、ダルモサーレ近郊の故郷に戻る途中だと先ほど教えてくれた。
てことは、職種としては別々の道を歩いているのかな。
「それで性悪クソ大猫がお姫様の味方につく。確かそうだったろ?」
「いいえ、大猫は寝返りましたよ。薬草を見つけたのは狐ですってば、フフフ」
「その話は狐なんて出てこないのである。林檎姫の話とごっちゃになっておるぞ」
おじさんたちが、『自分が子どもの頃に聞いた話の筋はこうだった』と議論している。皆、自分の記憶が一番正しいと思っているから、なかなか話が進まない。
とうとう私の本を取り上げ、中身を確かめだす。で、どっちが勝っただの負けただの……いつの間に勝負に発展していたんだ。
その後は、本を使って『さてどっちでしょう』クイズに進化したよ。幌馬車の中なのによく酔わないね。
画家のサルバドール・ダリみたいなチョビ赤髭で、衣服の柄や飾りがとっても凝っているお洒落なおじさんだけ小柄。残りの三人は、2メートルはあるんじゃないかってくらい背が高い。
そして四人とも筋肉マッチョ体型だからかな、馬車の中はかなりぎゅうぎゅうである。
私は笑顔を保ちつつ、遠慮がちにフィオが潜んでいるリュックを胸元に引き寄せ、爺様に質問することにした。
≪この国の人たちって、こんな感じなの?≫
≪はて、どんな感じじゃ?≫
≪陽気で明るくて、面倒見が良くて親切≫
≪大陸の最北に位置して日射時間も限られる。冬は厳しいし、魔獣は多いから、陰気で無愛想だと諸外国で専らの悪評じゃ≫
これが、こっちの世界の『陰気で無愛想』ってこと?
オルラさん一家だけでなく、美魔女女将さんも、最初の街のウォンバットおじさんも、フラミンゴおばさんも、皆すごく優しかったよ? あ、瓢箪おじいさんと、エリマキトカゲ兄さんも。
宿までの道を教えてくれた人たちも笑顔だったし、馬車の従業員さんたちとか、最初の街の子どもたちとか気さくだったし。
もっといえば、霊山のもふり兵士とか、街壁の日向ぼっこ門番さんも無害だった。
≪芽芽が大人扱いされてないだけでしょ。女を主張してない貧乳だし≫
相変わらずのSっ気を発揮して、カチューシャが冷たく言い放つ。
ねぇ、最後の一言余計だよね? そこ、言う必要ないよね? ふと女将さんの豊満な胸を思い出し、自分でトドメを刺してめっきり凹んだ。
でも、こっちのほうが肩凝りにならないからいいんだもん。
あーあと、ブラジャー必要ない。母親にバレたら『他人様の目が』って怒られるけど、向こうの世界でも洋服を重ね着して付けないまま誤魔化せてたし、こっちの市場でも購入しないで節約できた。
あとは、にゃんだ、わんだ。私はしばし、『胸が小さいことによるメリット』を真剣に思案していた。
……大きくする魔法ってないのかな、くすん。
ほぼずっと、なだらかな下り坂。小さな集落をいくつか通過し、ダルモサーレに辿り着く。
おじさんたちは馬車降り場で私に待つように言うと、豪快なカバさんそっくりの下腹でっぷり元締めを奥から連れて来て、「この子が青い馬の連峰へ行きたがっている」と伝えてくれた。
「うーん。まずは『**』まで行くだろ、そこからは『**』の『大きな**』行きだな、たぶん。それで『**』か? いや、『**の城』かもしれん」
地名が翻訳不能で弾かれてる部分と、意味的に訳せるせいで伝わってくる部分があるから余計に混乱した。とりあえず、この国の地図を出そう。
「おう、地図があるなら話は早い。つまりだな、ここをこう行ってだな――」
「親爺どの、それならこちらへ馬車が出ているのではございませんか?」
「そういえば昔、姉貴の別れたクソ亭主がここからこう迂回したほうが逆に時間がかからねぇって話してたような」
おじさんたち、元締めさんも含めてだけど、基本的に議論が好きな種族だよね。
地図を取り上げられた私は鉛筆を握りしめ、ひたすら『待て』の状態。
一人ぽつんと丸太をくり抜いた長椅子の端っこに腰かけていた。元締めさん仕様なのか、足が地面に付かないから、ぶらぶらぶら。
「よっしゃ、多分これで間違いない。いいか?」
元締めさんがようやく私の膝の上に地図を返してくれる。
巨体を縮めて傍らにしゃがみ込むと、ダルモサーレはここ、そいで今いる馬車降り場の裏手から長距離の馬車が出てる、と説明を始めた。次に目指すべきは、大きめの街を二つと森一つを越えた場所らしい。
「ココ」
今朝から皆が連呼しているから覚えた。最初「ココダ」だと思っていたら、爺様とカチューシャがそれだと余計な音節を付けている、と訂正してくれた。元締めさんが頷きながら太い指でさし示す場所を鉛筆で丸く囲む。
「そこからは、こう行ってだな、ここの街まで行くんだ」
「ココ」
こくり、と頷いて、鉛筆で地名らしき単語に丸。
元締めのおじさんは、六十歳前後だろうか。下町の太っ腹大親分って感じ。
私は言われた場所を丸していき、青い馬の連峰近くの街まで地図上で到達した。
「ただしここら辺からは、もう一度向こうに着いてから確かめたほうがいい。もっと別の行き方があるかもしれん」
私は『解った』と唇を引きしめてしっかり頷き、その中継地点を二重丸にする。隣に『要・質問』という意味合いでハテナマークも小さく描いておく。
元締めは地図に目線を合わせたままゆっくり立ち上がり、自分の短めの胡麻塩頭をがしがし掻き毟った。
「連峰の中のこの山ってことは、行きたいのは修験場なんだろ? その年で出家でもするのか?」
ふるふるふる。
「知り合いでもいるのか?」
うーん、なんとも。とりあえず首を傾げます。知り合いというか、相談相手というか。
「あそこはちょっと特殊だからな。近場のここ、この街以降の行き方は俺たちじゃあ、まったく判らん。あそこの僧侶連中は俗界の人間とは関わろうとしないって噂だからな」
やっぱりそうなのか。最終到達地点の街の名前をじっと睨みつけ、『解りました、覚悟しときます』ってアピールを一生懸命する。
ついでに当座の目標地点として、丸で囲んだ地名の周囲にぴっぴっと短い線を加えていく。来たる寒さに負けないよう、燦々と輝くお日様マークに改めた。
「アリガト」
「おう。いいてことよ。『**』行きの長距離馬車は明日朝の水の刻から受付で、四半刻すぎに出発だ。この建物の裏手、向こうの発着場に来てくれ」
私は力強く頷いて、深々とお辞儀をした。大雑把に北を目指して森を歩いていた頃とは大違いだ。貴重な情報がここまで入手できるだなんて。ああもう、感動のあまり泣けてくる。
「なっ、どどどうしたっ。俺なんか変なこと言っちまったか? いやでもこの時間だと馬車は近隣までしか出せなくてだなっ」
違う違う、と首を振る。私は滲んだ涙を拭うと、元締めさんを見上げてにっこり笑った。
「アリガト!」
私が喜んでいるのを理解した元締めさんは、目線を右左に彷徨わせ、照れながら頭を掻き毟っていた。
四人組のおじさんたちは、少し離れた所で楽し気に会話していた。
こちらの話が終わったらしいと踏んで、元締めさんが私をいじめているだの、顔が怖いせいだのと口々に揶揄いながら、近づいて来る。
「君、この街に知り合いは? 泊まる当てはありますか?」
一番背高のっぽなおじさんが訊いてくれた。口髭が完全にシュナウザー犬で執事っぽい。空色の髪はオールバックで丁寧に整えていて、この人だけは細めの縦長マッチョ。
ポケットに入れていた木製の葉書を見せることにした。ここに書いてある宿屋に行きたいです。
「あーここな、うまい飯を食わせる宿だ。その犬なら大人しいし、同伴させてもらえると思うが、念のために一緒に行ってやろうか?」
おおう、金髪山賊リーダーさん。なんですか、その至れり尽くせりなご提案は。
おじさんたちのムキムキな肉体は世を忍ぶ仮の姿でしたか、実は天の御使い様でしたか、『ベルリン・天使の筋肉』でしたか。
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