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第二章 ボス(プレイヤースキル的な)
十七本目 愛梨とアイリスの想い
しおりを挟むあなたは――私があなたのことをどう思っているか、気づいているのかしら?――
あなたは、学校でも一目置かれている。本人に自覚はないようだけど。
けれど、気軽にあなたと話す人は少ない。
だからあなたは自分に自信がないのかもね。
私がこの学校に入学してすぐ、本当に運が悪く、イジメにあった。
運悪く同学年にいた所謂不良女子達のカツアゲ現場に遭遇したのがきっかけだった。
囲まれていた女の子を見逃すことが出来ず、私は助けに入った。
けれど、代わりに今度は私がイジメの標的になった。
女の子を助けようとした時、カッとなって手を出してしまったせいもあった。
女の子を虐めてその場面を撮ろうとしていた彼女たちは、私が手を出した瞬間を撮った。
それがなければ、誰かに相談することもできたのに・・・
さらに彼女たちは、写真で脅すだけではなく、私の家族に手を出すとすら言ってきた。
それが嘘だったのか本気だったのかは分からないけれど、家族に迷惑がかかる可能性がある。
その可能性があるだけで、私は逆らえなかった。
その頃から、私の性格と口調がキツくなったように思う・・・
イジメを受けてから1か月程経ったある日。
いつものように放課後に呼び出されて囲まれていた時、彼が助けてくれた。
覇城龍成が。
彼女たちは彼に逆らう術を持っていなかった。
彼の「やめてくれないかな?」という一言だけで私がイジメられる生活は終わった。
それも当然よね。彼の弱みを握るなんて、出来るとは思えない。
彼は普段静かで、怒ることなんて滅多にない。
けれど、彼は家族や友人は大切にする。
彼の"大切"に手を出すなんて、彼を知る人なら馬鹿な真似だと言うと思うわ。
というかそもそも・・・私をイジメていた女の子達の中には彼に惚れていた人も何人かいたみたいだし・・・
とにかく私はそんな彼に感謝した・・・わけじゃなかった。
形式上のお礼は言った。けれど、私はこの時彼のことをよく知らなかった。
だから、もしかしたら彼のいないところで私はまたイジメられるかもしれないと、そんな風に思った。
そして、私は彼の側にいればイジメられないだろう、なんて打算から彼に近づいた。
今思えば、あの時の私はどれだけ馬鹿な真似をしていたのか・・・
二年生になり、私は罪悪感から彼に話した。
自分が彼に話しかけていたことが、打算からくるものだったということを。
感謝もせずに自分のことだけしか考えていなかったことも。
なのに。
なのに彼は――
「見てると不快になるから助けただけだよ。僕の為にやったことなんだから、気にしないでいいよ」
そんな風に、笑顔で言うだけだった。
私の心にあった後悔は、さらに強くなった。
同時に、胸が締め付けられるような気持ちだった。
そして、私が仲良くしようとしていたのが打算からだと知っても、特に悲しむ様子のない彼に、私は少しだけ悲しくなった。自分勝手だと思うけれど。
それからは打算からじゃなく、ただの友人として彼に話しかけるようになった。
私が彼に対して抱いている想いを自覚したのは、高校2年生の終わり頃。
彼は、未だに私の名前を忘れる時がある。
それでも、私が悲しくなることはなかった。
いや、それは嘘ね。少しだけ悲しかった。
でも、私は彼の友人、赤羽彰太から教えてもらっていた。
彼、龍成が名前を忘れるのは、むやみやたらに"大切な人"を作りたくないからだと。
その理由は、赤羽も未だに教えてもらっていないらしい。
私も気になったけれど、聞かないようにしている。
初めてその話をした時、彼が苦笑いしながらわずかに悲しそうな顔をしたから。
そんな顔をそれまで見たことがなかった私は、簡単に触れていいような話ではないのだと覚えた。
そして、興味本位で聞いてしまったことを後悔した。
けれど、彼の"大切な人"にならないようにしよう、とは全く思わなかった。思えなかった。
高校3年生になり、私は時々彼のことを下の名前で呼ぶようになった。
私はかなり勇気を出して、若干緊張しながら呼んでいるのだけど・・・
彼が返事をするときに気負った様子はない。
彼は人の感情を読むのがかなり上手いのだけれど・・・
彼自身がそういう感情を知らないせいだと思う。
私の気持ちに気づいていないのは。
私が元々ゲーム好きだったこともあって、BFOを始めた。
私は運よく、VR-EXを初回の販売時点で購入することが出来た。
BFOを始めてから二ヶ月程経ったとき、友人と遊んでいた私の前に一人のプレイヤーが現れた。
今思えば、なんでこの時に気づかなかったのか・・・
彼が実際に戦っているのは見たことがなかったことと、直前に見せられた動きがあまりにも異常だったからかもしれない。
その翌日、彼がBFOを始めたことを知った。
昨日見た異常なプレイヤーのことを思い出す。
けれど、BFOを遊んでいる人は多い。
まぁ、始りの街で留まっている人が半分近いけど・・・
それでも、エイフォルトにも多くのプレイヤーがいる。
なのに、偶然彼と鉢合わせるなんて・・・
気が動転していた私は、その異常なプレイヤーの顔をよく見ていなかった。
その日、私は再び彼――龍成に会った。
ゲームの中で。
ありえないという思いがあったせいで会ってからもしばらく気づかなかった。
現実では黒なのに、水色の髪と目だったのもあると思うけれど。
私も髪と目、その両方を水色にした。
あなたの好きな色だから、なんて言ったらどう思われるかしら・・・
そのプレイヤーの名前を改めて見て、思わず驚愕しちゃった。
その名前は、現実での彼の名前をカタカナにしただけだった。
単純だとも思うけど、彼らしいと言えば彼らしい。
そんな私を見て彼は、私に顔を近づけてきた。
あまりの恥ずかしさに私は――
「近いわよ!!!こないでっ!!」
「え?ああ、分かった。ごめん?」
――しまった!!
こんな言い方・・・まるで嫌ってるみたいじゃない・・・!
その後の会話はしばらく頭に入らなかった。
嫌われてたらどうしよう・・・!!
そんな私の態度を大して気にすることもなく、彼は私に回復魔法を使ってきた。
私のHPは、一瞬で回復した。
彼はどうやら魔法に関しても異常みたい・・・
私の回復が終わり、今度はラフィに回復魔法をかける。
ラフィは明らかに緊張している。
まぁ、それはそうよね・・・彼は正直・・・見た目もかっこいいから。
これは、私が彼に抱いている想いから来るものじゃなく、彼の知り合いは全員が彼をそう評価している。
彼は会話を終えて、立ち去ろうとした。
――ダメ!!待って!!
そんな思いが頭を支配する。
二回も会えたのは運がよかった。
学校では会えるけれど、BFOでも会えるなら・・・
このまま別れたら、また会えるとは限らない。
BFOの中でなら、現実ではできないことも・・・
「ちょ、ちょっとっ!!」
「ん?どうしたの?」
突然呼びかける私に、彼は首を傾げる。
「どうしたの?顔赤いよ?」
どうやらさっきのことがあったせいでまだ顔が赤かったらしい
「――!?!き、気にしなくていいからっ!!えっと・・・フレンド登録しない!?」
――言えた!!かなり緊張しちゃったけど・・・
「別にいいよ?」
そんな私に対する彼の返事は、素っ気ないものだったけど・・・
それでも私は、幸せな気分だった。
これでゲームの中でも彼と話すことが出来るようになったのだから。
その後、ラフィに滅茶苦茶イジられた
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