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02 倒れていた聖女
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「おい、聖女。起きろ」
「ん……」
フェリシアが身体を揺すられて目を開けると、馬に乗った三人の人影が彼女を取り囲んでいた。
王太子サミュエルと、二名の近衛兵だ。
森の入り口で力尽きて倒れた彼女を見つけ、サミュエルが足先でつついたらしい。
「……あ、わたし、倒れて?」
「マリーを追っていたのだろう?
なぜこのような道端で寝ている。
あいつはどこへ行った?」
そうだ。
封魔の塔へ向かうマリーを追っていたのだった。
無理に走りすぎたフェリシアは酸欠で倒れ、そのまま気を失っていたようだ。
はっとして起き上がる彼女に、サミュエルが冷たい声で再び問いかける。
「あの女はどこへ行ったのかと訊いている。
森へ入ったのか?」
「そ、そうです。
妹は、封魔の塔のほうに……」
マリーは、魔王になって彼を殺すと言っていた。
幸いその声はフェリシア以外には聞こえていなかったようだが、封魔の塔に聖女以外が立ち入ることの重大性は、サミュエルでも知っている。
「聖女、塔にはおまえしか入れないのだな?
一般人が立ち入らぬよう、厳重に扉が封じられているはずだ」
「それが……鍵となる魔石をマリーに取られました」
「なんだと?」
あの馬鹿なにを考えている、と舌打ちしてサミュエルが馬を走らせた。
彼と近衛兵がひとり、森へと入ってゆく。
「待って! わたしも――」
「わかっている」
「きゃっ」
思わず、はしたない声をだしてしまった。
ひとり残っていた近衛兵が、フェリシアを抱き上げて自分の馬に座らせたのだ。
鎧に身を包み、兜をつけている近衛兵の表情は見えないが、彼女が見つめるとうなずいた。
「塔へ向かうなら、貴女がいたほうがいいだろう。
しっかり掴まっていてくれ」
「はい。
あ、あの、ありがとうございます。
妹が王太子にひどいことを言ったのに……」
「……行くぞ」
彼女の言葉を近衛兵がどう思ったのかはわからない。
が、いまは妹のことが心配だ。
まさかとは思うが、本当に塔の封印を解こうというわけではないだろう。
そんなことをすれば、王太子に復讐するまえに、まずマリー自身が魔王に取り殺されてしまう。
魔王にのっとられるということは、その身体の持ち主は心を失うということなのだから。
「ああっ、でもあの子、ずいぶん怒っていたわ。
我を忘れて捨て鉢になってないとよいのだけど。
お願い、無事でいて……!」
不安にかられるフェリシアを前に乗せ、近衛兵は無言のまま馬を走らせた。
「ん……」
フェリシアが身体を揺すられて目を開けると、馬に乗った三人の人影が彼女を取り囲んでいた。
王太子サミュエルと、二名の近衛兵だ。
森の入り口で力尽きて倒れた彼女を見つけ、サミュエルが足先でつついたらしい。
「……あ、わたし、倒れて?」
「マリーを追っていたのだろう?
なぜこのような道端で寝ている。
あいつはどこへ行った?」
そうだ。
封魔の塔へ向かうマリーを追っていたのだった。
無理に走りすぎたフェリシアは酸欠で倒れ、そのまま気を失っていたようだ。
はっとして起き上がる彼女に、サミュエルが冷たい声で再び問いかける。
「あの女はどこへ行ったのかと訊いている。
森へ入ったのか?」
「そ、そうです。
妹は、封魔の塔のほうに……」
マリーは、魔王になって彼を殺すと言っていた。
幸いその声はフェリシア以外には聞こえていなかったようだが、封魔の塔に聖女以外が立ち入ることの重大性は、サミュエルでも知っている。
「聖女、塔にはおまえしか入れないのだな?
一般人が立ち入らぬよう、厳重に扉が封じられているはずだ」
「それが……鍵となる魔石をマリーに取られました」
「なんだと?」
あの馬鹿なにを考えている、と舌打ちしてサミュエルが馬を走らせた。
彼と近衛兵がひとり、森へと入ってゆく。
「待って! わたしも――」
「わかっている」
「きゃっ」
思わず、はしたない声をだしてしまった。
ひとり残っていた近衛兵が、フェリシアを抱き上げて自分の馬に座らせたのだ。
鎧に身を包み、兜をつけている近衛兵の表情は見えないが、彼女が見つめるとうなずいた。
「塔へ向かうなら、貴女がいたほうがいいだろう。
しっかり掴まっていてくれ」
「はい。
あ、あの、ありがとうございます。
妹が王太子にひどいことを言ったのに……」
「……行くぞ」
彼女の言葉を近衛兵がどう思ったのかはわからない。
が、いまは妹のことが心配だ。
まさかとは思うが、本当に塔の封印を解こうというわけではないだろう。
そんなことをすれば、王太子に復讐するまえに、まずマリー自身が魔王に取り殺されてしまう。
魔王にのっとられるということは、その身体の持ち主は心を失うということなのだから。
「ああっ、でもあの子、ずいぶん怒っていたわ。
我を忘れて捨て鉢になってないとよいのだけど。
お願い、無事でいて……!」
不安にかられるフェリシアを前に乗せ、近衛兵は無言のまま馬を走らせた。
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