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第二章
第75話 踏みつぶしてくれるそうです
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2021/07/24 誤字を修正しました。
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あたしは言われた時間よりも少し早く闘技場の前へとやってきました。そこには何とレジーナさんが一人で待っていました。
「あ、あの……」
「ローザ! 礼を」
ヴィーシャさんに言われて慌てて礼を執ろうとしましたが、何とレジーナさんに制止されました。
「構いませんわ。それよりも、その子たちがあなたの従魔ですの?」
「はい」
「そう。可愛らしい子たちね。それに、普通の従魔よりも随分と懐いているように見えますわね。名前は何というのかしら?」
「はい。この子がユキで、この子がピーちゃんで、この子がホーちゃんです」
「そう。大事にしているのね。撫でても良いかしら?」
「はい」
レジーナさんはそう言って屈むとユキのことを優しく撫でてくれました。
「この子たちと一緒に戦うのかしら?」
「はい。そのつもりです」
「そう。がんばりなさい」
「は、はい。がんばります」
あれれ? 何だか、思っていたよりも優しい人のような気がします。
あたしが怖がって避けていただけで公子様といいレジーナさんといい、もしかして良い人だったりするんでしょうか?
「それと、わたくしの婚約者が随分と迷惑を掛けているようですわね」
「い、いえ。そんな……」
「あれは胸の大きい女を見ると見境がないのですわ。だから、何かされたらわたくしに相談なさい? 元凶を踏みつぶしてあげますわ」
「え……? あ、は、はい」
ええと? 元凶を踏みつぶす?
なんだかよく分かりませんが、とっても痛そうです。
「それと、あなたがこの決闘に勝てたならこのわたくしがあなたたちを庇護して差し上げますわ。あなたと、コドルツィ騎士爵令嬢と平民のリリア。他には誰かいまして?」
「い、いえ」
「そう。それなら、あとはがんばりなさい」
「は、はい」
レジーナさんはそう言ってお淑やかな笑顔を浮かべました。
うわぁ。すごい。なんだか、すごくお姫様ってかんじです。
「ああ、そうそう。それと、レフ公子殿下には気を付けることですわね。彼はわたくしの婚約者などよりもよほど貴族らしいですわよ」
「え?」
しかし私が聞き返すよりも先に話題の人たちがやってきました。
「来たな。まさかその猫とミミズクも戦うのか?」
王太子様がそう言いましたが、相変わらず視線はあたしの胸にロックされています。でも、レジーナさんが踏みつぶしてくれるって思うとなんだか少しだけ怖くなくなりました。
「はい。あたしの心強い友達です」
「ふん。従魔を友達とはな。まあいい。決闘の中に入ってよいのはお前と従魔だけだ。残りのお前たちは観客席に行け」
「はい」
「かしこまりました」
ううっ。リリアちゃんとヴィーシャさんは近くに居られないみたいです。
「ローザちゃん。がんばって!」
「一番大きな声で応援するよ!」
「ありがとうございます」
そうして二人は観客席の入口へと向かって歩いていきました。
この場に残っているのはレジーナさんと公子様、それから王太子様と目の笑っていないドレスク先輩です。
「ではローザ。入るぞ」
「はい」
相変わらずの視線の王太子様がそう言うと扉の鍵を開けました。
「ここからは一人で行け。まっすぐ歩けば決闘のステージだ」
「はい」
不安ですががんばるしかありません。
「ローザ嬢。健闘を祈っていますよ」
「は、はい」
公子様がそっと優しい言葉を掛けてくれました。
レジーナさんはああ言っていましたけど、なんだか貴族らしいっていうよりも王子様っぽいです。
はい。でも元気が出てきました。
「行ってきます」
そうしてあたしたちが中に入ると、そのまま外から扉が閉じられ、鍵を掛けられました。
あれ? えっと、これは……逃げないようにってことでしょうか?
何だかこうされるとちょっと逃げ出したくなりましたが、もう無理ですよね。
「ミャー」
「ピピー」
「ホー」
あ……そうでした。
あたしにはこんなに心強いお友達がいるんです。
そう。だから大丈夫。開始と同時に炎弾で足を撃てばきっと勝てるはず。
よし!
「ユキ、ピーちゃん、ホーちゃん。がんばりましょう!」
「ミャー」
「ピピッ!」
「ホー!」
こうしてあたしたちは薄暗い廊下を歩き、そして扉を開けて外に出ました。
うわぁ。こんな風になっていたんですね。
決闘をするステージを丸く壁が取り囲んでいて、その上に何列もの観客席があります。
ああ。これは円形闘技場っていうやつなんですね。夢で見たことがあるやつです。
「ローザちゃーん!」
声のしたほうを振り向くと、リリアちゃんとヴィーシャさんが手を振っていました。
うん。大丈夫。がんばれる!
あたしはリリアちゃんたちに手を振り返します。
それにしても、バラサさんが来ませんね。
本当はこのまま逃げ出してくれれば良いんですが……。
「あら、逃げずに来たんですのね」
正面の壁にある扉の一つが開き、バラサさんが出てきました。
「でも、そんな弱そうな従魔を連れてきたところでこのわたくしに勝てるとでも思っているんですの?」
「弱くなんてありません! あたしの大事な友達です!」
「あら。従魔が友達だなんて。愚かにも程がありますわね」
そう言ってバカにしたような笑みを浮かべます。
こ、このっ!
「おい。まだ決闘の時間になっていない。余計な口を閉じろ」
「っ! 申し訳ございません」
いつの間にかやってきていた王太子様がそう言うと、バラサは慌てて口を閉じました。
それからは無言のまま時間だけが流れていき、観客席にちらほらと他の生徒たちが入ってきました。
それにアリアドナさんとグラハム先生、それから演習のときの監督の先生も。あ、学園長先生まで来ました。
学園長先生に続いて入ってきたのは……え? ツェツィーリエさん!? どうしてここに!?
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あたしは言われた時間よりも少し早く闘技場の前へとやってきました。そこには何とレジーナさんが一人で待っていました。
「あ、あの……」
「ローザ! 礼を」
ヴィーシャさんに言われて慌てて礼を執ろうとしましたが、何とレジーナさんに制止されました。
「構いませんわ。それよりも、その子たちがあなたの従魔ですの?」
「はい」
「そう。可愛らしい子たちね。それに、普通の従魔よりも随分と懐いているように見えますわね。名前は何というのかしら?」
「はい。この子がユキで、この子がピーちゃんで、この子がホーちゃんです」
「そう。大事にしているのね。撫でても良いかしら?」
「はい」
レジーナさんはそう言って屈むとユキのことを優しく撫でてくれました。
「この子たちと一緒に戦うのかしら?」
「はい。そのつもりです」
「そう。がんばりなさい」
「は、はい。がんばります」
あれれ? 何だか、思っていたよりも優しい人のような気がします。
あたしが怖がって避けていただけで公子様といいレジーナさんといい、もしかして良い人だったりするんでしょうか?
「それと、わたくしの婚約者が随分と迷惑を掛けているようですわね」
「い、いえ。そんな……」
「あれは胸の大きい女を見ると見境がないのですわ。だから、何かされたらわたくしに相談なさい? 元凶を踏みつぶしてあげますわ」
「え……? あ、は、はい」
ええと? 元凶を踏みつぶす?
なんだかよく分かりませんが、とっても痛そうです。
「それと、あなたがこの決闘に勝てたならこのわたくしがあなたたちを庇護して差し上げますわ。あなたと、コドルツィ騎士爵令嬢と平民のリリア。他には誰かいまして?」
「い、いえ」
「そう。それなら、あとはがんばりなさい」
「は、はい」
レジーナさんはそう言ってお淑やかな笑顔を浮かべました。
うわぁ。すごい。なんだか、すごくお姫様ってかんじです。
「ああ、そうそう。それと、レフ公子殿下には気を付けることですわね。彼はわたくしの婚約者などよりもよほど貴族らしいですわよ」
「え?」
しかし私が聞き返すよりも先に話題の人たちがやってきました。
「来たな。まさかその猫とミミズクも戦うのか?」
王太子様がそう言いましたが、相変わらず視線はあたしの胸にロックされています。でも、レジーナさんが踏みつぶしてくれるって思うとなんだか少しだけ怖くなくなりました。
「はい。あたしの心強い友達です」
「ふん。従魔を友達とはな。まあいい。決闘の中に入ってよいのはお前と従魔だけだ。残りのお前たちは観客席に行け」
「はい」
「かしこまりました」
ううっ。リリアちゃんとヴィーシャさんは近くに居られないみたいです。
「ローザちゃん。がんばって!」
「一番大きな声で応援するよ!」
「ありがとうございます」
そうして二人は観客席の入口へと向かって歩いていきました。
この場に残っているのはレジーナさんと公子様、それから王太子様と目の笑っていないドレスク先輩です。
「ではローザ。入るぞ」
「はい」
相変わらずの視線の王太子様がそう言うと扉の鍵を開けました。
「ここからは一人で行け。まっすぐ歩けば決闘のステージだ」
「はい」
不安ですががんばるしかありません。
「ローザ嬢。健闘を祈っていますよ」
「は、はい」
公子様がそっと優しい言葉を掛けてくれました。
レジーナさんはああ言っていましたけど、なんだか貴族らしいっていうよりも王子様っぽいです。
はい。でも元気が出てきました。
「行ってきます」
そうしてあたしたちが中に入ると、そのまま外から扉が閉じられ、鍵を掛けられました。
あれ? えっと、これは……逃げないようにってことでしょうか?
何だかこうされるとちょっと逃げ出したくなりましたが、もう無理ですよね。
「ミャー」
「ピピー」
「ホー」
あ……そうでした。
あたしにはこんなに心強いお友達がいるんです。
そう。だから大丈夫。開始と同時に炎弾で足を撃てばきっと勝てるはず。
よし!
「ユキ、ピーちゃん、ホーちゃん。がんばりましょう!」
「ミャー」
「ピピッ!」
「ホー!」
こうしてあたしたちは薄暗い廊下を歩き、そして扉を開けて外に出ました。
うわぁ。こんな風になっていたんですね。
決闘をするステージを丸く壁が取り囲んでいて、その上に何列もの観客席があります。
ああ。これは円形闘技場っていうやつなんですね。夢で見たことがあるやつです。
「ローザちゃーん!」
声のしたほうを振り向くと、リリアちゃんとヴィーシャさんが手を振っていました。
うん。大丈夫。がんばれる!
あたしはリリアちゃんたちに手を振り返します。
それにしても、バラサさんが来ませんね。
本当はこのまま逃げ出してくれれば良いんですが……。
「あら、逃げずに来たんですのね」
正面の壁にある扉の一つが開き、バラサさんが出てきました。
「でも、そんな弱そうな従魔を連れてきたところでこのわたくしに勝てるとでも思っているんですの?」
「弱くなんてありません! あたしの大事な友達です!」
「あら。従魔が友達だなんて。愚かにも程がありますわね」
そう言ってバカにしたような笑みを浮かべます。
こ、このっ!
「おい。まだ決闘の時間になっていない。余計な口を閉じろ」
「っ! 申し訳ございません」
いつの間にかやってきていた王太子様がそう言うと、バラサは慌てて口を閉じました。
それからは無言のまま時間だけが流れていき、観客席にちらほらと他の生徒たちが入ってきました。
それにアリアドナさんとグラハム先生、それから演習のときの監督の先生も。あ、学園長先生まで来ました。
学園長先生に続いて入ってきたのは……え? ツェツィーリエさん!? どうしてここに!?
応援ありがとうございます!
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