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第三章
第三章第15話 ゴブリン退治です
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「ローザ、大丈夫かい?」
「はい」
はしごでコテージの屋根になんとか登ったあたしをヴィーシャさんが気遣ってくれます。
「えっと、ゴブリンは?」
「ここからはまだ見えないね。どうやって攻撃するつもりなんだい? やっぱり、近くにきたやつを攻撃する感じかな?」
「えっと……」
どうしましょう? なんにも考えていませんでした。
よく考えればこんな真っ暗闇で獲物を撃ったことはありませんでしたね。
こういうときはやっぱり夢のことを思い出してみるといいような気がします。
だって、今まであの夢のおかげで何度も助かりましたからね。
えっと、たしか夢で映画は暗い中でも見える筒みたいなので狙いを定めていた気がします。
なんかこう、視界が緑色っぽくなる不思議なやつです。たしか、そんなようなやつがあったと思うんです。
名前も仕組みもよく分かりませんけど、魔法ならきっと同じことができるんじゃないでしょうか。
あたしは魔力弾を撃つために腕を前に突き出して狙いを定めるようにします。それから伸ばした腕の上に筒があるようなイメージをしてそこを覗き込むように意識を集中しました。
・
・
・
えっと、ダメみたいです。何も見えませんでした。
「ローザ?」
ヴィーシャさんが何かを期待したような表情であたしを見てきています。
「え、えっと……」
ど、ど、どうしましょう?
「ご、ごめんなさい。やっぱり何も見えませんでした」
「……そっか。そうだよね。こんなに暗いんだし、仕方ないね」
ううっ。でも王太子様は屋根からゴブリンを攻撃しろって言ってましたし、何かしないときっと怒られますよね。
あのねっとりとした視線を思い出すだけで鳥肌が立ちますし、そんな目でジロジロ見られながら叱られたらあたし、きっと耐えられないと思います。
どうしようかと悩んでいると、森の奥のほうからゴブリンの悲鳴が聞こえてきます。
あっちに適当に撃っちゃえばいいでしょうか?
あ、でも騎士の人に当たったら大変です。
どうしたら……?
えっと、そうですね。はい。やっぱり夢のことを思い出してみましょう。
ええと、ええと、そうだ! たしか「あろう小説」にはもっと便利なチート能力をもった登場人物がいっぱいいました。
千里眼、でしたっけ? たしかそんな名前の遠くを見られるチート能力持ちとか、あとは使い魔に憑依して遠くを見通すチート能力持ちとかいたはずです。
あれ? 使い魔?
そうだ!
『ホーちゃん! 上空からこっそりゴブリンたちの偵察をしてきてもらえますか?』
あたしは心の中でそうホーちゃんにお願いしてみました。
「ホー!」
そう返事をしたホーちゃんは大きく羽ばたくと、ゴブリンたちがいるであろう方向に飛んでいきました。
それからしばらく待ってなんとなくホーちゃんがゴブリンたちいる上空に到着したような気がしたところで、あたしは意識をホーちゃんに同調させるように念じてみます。
するとなんと!
ぼんやりですがホーちゃんが見ているっぽい景色が脳裏に浮かんできました。
やりました! うじゃうじゃいるゴブリンが気持ち悪いですが、これで狙えそうです。
あとは、いつもどおりレーザーをゴブリンたちのほうに向けて照射します。
それからホーちゃんのほうは……あ! ありました。ちゃんとホーちゃんが見ているあたりにきちんとレーザーが当たっています。
あとはこれを、ゴブリンのほうに向けて……。
あっと、木が邪魔ですね。
えっと、もう少しこっちにずらして……あ! ここです。ちゃんとゴブリンの頭に照準が合いました。
「魔力弾!」
気合を入れて撃ち込んだ魔力弾は木々の間をすりぬけ、うじゃうじゃいるゴブリンのうちの一匹の頭に命中しました。ぼんやりとした視界の中、ゴブリンがそのまま崩れ落ちたんです。
「やったぁ!」
「え? ローザ? 今何をしたの?」
「えっと、ホーちゃんが空からゴブリンの場所を見つけてくれたんです。それでそこに魔力弾を撃って、一匹倒しました」
「えっ?」
「えっ?」
どうしてヴィーシャさんの顔が引きつっているんでしょうか?
さっきはあんなに期待した風だったのに……。
おかしいですね。でも、これでゴブリンを攻撃できました。ホーちゃんが見ていてくれるので、味方の騎士さんや王太子様たちを誤射してしまう心配もありません。
こうやって頑張れば、きっと王太子様に怒られることもないはずです。
ですよね?
そうしたら気持ち悪い目で見られることもなくなる……ことはない絶対なさそうですね。
はぁ。
と、とにかく! 今はゴブリンをやっつけるのが先決です。
王太子様よりゴブリンのほうがもっと嫌ですから。
あたしはホーちゃんの助けをまた借りて、再びゴブリンに魔力弾を撃ち込むのでした。
================
次回更新は通常どおり、2021/11/20 (土) 20:00 を予定しております。
「はい」
はしごでコテージの屋根になんとか登ったあたしをヴィーシャさんが気遣ってくれます。
「えっと、ゴブリンは?」
「ここからはまだ見えないね。どうやって攻撃するつもりなんだい? やっぱり、近くにきたやつを攻撃する感じかな?」
「えっと……」
どうしましょう? なんにも考えていませんでした。
よく考えればこんな真っ暗闇で獲物を撃ったことはありませんでしたね。
こういうときはやっぱり夢のことを思い出してみるといいような気がします。
だって、今まであの夢のおかげで何度も助かりましたからね。
えっと、たしか夢で映画は暗い中でも見える筒みたいなので狙いを定めていた気がします。
なんかこう、視界が緑色っぽくなる不思議なやつです。たしか、そんなようなやつがあったと思うんです。
名前も仕組みもよく分かりませんけど、魔法ならきっと同じことができるんじゃないでしょうか。
あたしは魔力弾を撃つために腕を前に突き出して狙いを定めるようにします。それから伸ばした腕の上に筒があるようなイメージをしてそこを覗き込むように意識を集中しました。
・
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えっと、ダメみたいです。何も見えませんでした。
「ローザ?」
ヴィーシャさんが何かを期待したような表情であたしを見てきています。
「え、えっと……」
ど、ど、どうしましょう?
「ご、ごめんなさい。やっぱり何も見えませんでした」
「……そっか。そうだよね。こんなに暗いんだし、仕方ないね」
ううっ。でも王太子様は屋根からゴブリンを攻撃しろって言ってましたし、何かしないときっと怒られますよね。
あのねっとりとした視線を思い出すだけで鳥肌が立ちますし、そんな目でジロジロ見られながら叱られたらあたし、きっと耐えられないと思います。
どうしようかと悩んでいると、森の奥のほうからゴブリンの悲鳴が聞こえてきます。
あっちに適当に撃っちゃえばいいでしょうか?
あ、でも騎士の人に当たったら大変です。
どうしたら……?
えっと、そうですね。はい。やっぱり夢のことを思い出してみましょう。
ええと、ええと、そうだ! たしか「あろう小説」にはもっと便利なチート能力をもった登場人物がいっぱいいました。
千里眼、でしたっけ? たしかそんな名前の遠くを見られるチート能力持ちとか、あとは使い魔に憑依して遠くを見通すチート能力持ちとかいたはずです。
あれ? 使い魔?
そうだ!
『ホーちゃん! 上空からこっそりゴブリンたちの偵察をしてきてもらえますか?』
あたしは心の中でそうホーちゃんにお願いしてみました。
「ホー!」
そう返事をしたホーちゃんは大きく羽ばたくと、ゴブリンたちがいるであろう方向に飛んでいきました。
それからしばらく待ってなんとなくホーちゃんがゴブリンたちいる上空に到着したような気がしたところで、あたしは意識をホーちゃんに同調させるように念じてみます。
するとなんと!
ぼんやりですがホーちゃんが見ているっぽい景色が脳裏に浮かんできました。
やりました! うじゃうじゃいるゴブリンが気持ち悪いですが、これで狙えそうです。
あとは、いつもどおりレーザーをゴブリンたちのほうに向けて照射します。
それからホーちゃんのほうは……あ! ありました。ちゃんとホーちゃんが見ているあたりにきちんとレーザーが当たっています。
あとはこれを、ゴブリンのほうに向けて……。
あっと、木が邪魔ですね。
えっと、もう少しこっちにずらして……あ! ここです。ちゃんとゴブリンの頭に照準が合いました。
「魔力弾!」
気合を入れて撃ち込んだ魔力弾は木々の間をすりぬけ、うじゃうじゃいるゴブリンのうちの一匹の頭に命中しました。ぼんやりとした視界の中、ゴブリンがそのまま崩れ落ちたんです。
「やったぁ!」
「え? ローザ? 今何をしたの?」
「えっと、ホーちゃんが空からゴブリンの場所を見つけてくれたんです。それでそこに魔力弾を撃って、一匹倒しました」
「えっ?」
「えっ?」
どうしてヴィーシャさんの顔が引きつっているんでしょうか?
さっきはあんなに期待した風だったのに……。
おかしいですね。でも、これでゴブリンを攻撃できました。ホーちゃんが見ていてくれるので、味方の騎士さんや王太子様たちを誤射してしまう心配もありません。
こうやって頑張れば、きっと王太子様に怒られることもないはずです。
ですよね?
そうしたら気持ち悪い目で見られることもなくなる……ことはない絶対なさそうですね。
はぁ。
と、とにかく! 今はゴブリンをやっつけるのが先決です。
王太子様よりゴブリンのほうがもっと嫌ですから。
あたしはホーちゃんの助けをまた借りて、再びゴブリンに魔力弾を撃ち込むのでした。
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