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第三章
第三章第40話 班分けをしました
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2022/05/14 誤字を修正しました
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学園祭も終わり、冬が近づいてきました。あれからレジーナさんが取り計らってくれたみたいで、クラスの女子たちとも少しずつですけどお話ができるようになってきました。
男子たちは……えっと、はい。よくじろじろ見られています。でもあたしが視線を向けるとさっと目をそらされるので、結局お話はしていません。
それとですね。なんだか最近、教室の外でもずっと誰かに見られている気がするんです。だから、最近はなるべく一人にならないようにしています。
バラサさんに階段から突き落とされたこともありますからね。ちゃんと用心することにしたんです。
そんなわけで、今も一人にはならずにリリアちゃんとヴィーシャさんと並んで座って、教室に先生が入ってくるのを待っています。
えへへ、これは前からずっと一緒ですけどね。
そんなことを考えていると、ようやくゲラシム先生が教室に入ってきました。
「諸君、揃っているかね?」
良く通る声でそう言うと、コツコツと革靴で床を鳴らして教壇の前にやってきました。
「さて諸君。これまでの学園生活はどうだったかな?」
そう言って教室全体を見回しました。
「学びを得た者もいるだろう。逆に物足りないと感じた者もいるだろう。あるいは力不足を痛感した者もいるだろう」
ゲラシム先生はコツコツと教壇の上を歩きます。
「そして! 諸君も知ってのとおり、この学園を去ったものもいる」
これはたぶん、バラサさんのことだと思います。
「そんな諸君に最初の試練だ」
ゲラシム先生は鋭い目つきで私たちをじっと見てきます。
「再来週、諸君には魔物討伐演習として森に出てもらう。期間は三日間だ」
ゲラシム先生の言葉に教室が少しざわめきました。
「魔物など見たことがないという諸君が大半だろう。だが、魔物は現実に存在する脅威だ。栄えある魔法学園の一員である以上、魔物の脅威から目を背けることは許されん」
ゲラシム先生は再びコツコツと教壇の上を歩きます。
「諸君は何を求めて魔法学園に入学したのか? それは人それぞれだろう。だが魔法学園の一員である以上、力なき者を守ることは責務だ! そのためにも、魔物の脅威は排除しなければならない!」
ゲラシム先生の力強い言葉に思わず聞き入ってしまいます。
「諸君はこれまで魔術を学んできた。学んだ成果を存分に発揮し、見事乗り越えてくれたまえ」
そう言うとゲラシム先生は教壇の前に戻りました。
「さて、諸君には三つの班に分かれて行動してもらう。班分けは原則としてくじ引きで決めるが、偏りを減らすために成績と属性を考慮して班分けを決定する。これから呼ばれるものは別の班にするので、呼ばれたら前に出てきたまえ。レジーナ・マレスティカ君」
「はい」
いつもの席に座っていたレジーナさんが立ち上がって教壇に上がります。
「続いて、ローザ君」
「え? あ、はい」
ど、どうしてあたしなんでしょうか。
よく分かりませんけど、呼ばれたので前に出ます。
「最後に、リリア君」
「はい」
え? リリアちゃんもですか?
そんな! リリアちゃんと一緒が良かったです。
「レジーナ君については諸君も実力を知っているな。そしてローザ君とリリア君についてだが、二人は諸君も知ってのとおり光属性の使い手だ。彼女たちがいる班は怪我の治療がその場で行えてしまう。そんな二人のどちらかがレジーナ君の班に入った場合、演習の目的を達成できない可能性が高い。よって二人には、レジーナ君とは別の班に入ってもらうこととした」
ゲラシム先生が意図を説明してくれますが、あたしはお話ができる人と一緒がいいです。
「それではまずは女子生徒の諸君、くじを引いてくれたまえ」
そういうとゲラシム先生は中の見えない袋を取り出しました。
するとクラスの女子たちが続々と前にやってきて、袋の中から札を引いてきます。どうやら札に番号が書いてあるようで、一番がレジーナさん、二番があたし、三番がリリアちゃんの班になるようです。
やがてヴィーシャさんの順番になりました。ヴィーシャさんは袋の中に手を入れ、札を引きます。
お願いします! どうか二番を!
心の中でそう願いましたが、札を確認したヴィーシャさんはあたしのほうにごめんねと仕草だけで謝るとレジーナさんのところに行ってしまいました。
ああ、残念です。仲のいい人が一人もいない班で大丈夫なんでしょうか?
そうこうしている間に女子たち全員くじを引き終わりました。どうやら女子の人数が偏らないようにしていたようで、あたしの班には女子が二人割り振られました。
一人は話したことがある人で、レジーナさんといつも一緒にいるロクサーナさんです。たしか、クリステア子爵家のお嬢様だったはずです。
もう一人は話したことがないですけど、たしかベティーナさんという平民の人だったと思います。
「続いて火属性の男子生徒の諸君、くじを引いてくれたまえ」
どうやら属性の偏りも無くすつもりみたいです。男子たちが次々と引いていき、水、風、土と属性ごとに引いて、班分けが決まりました。
「それでは各般の班長を決めてくれたまえ」
ゲラシム先生の言葉にあたしは班の人たちのほうを確認しますが、ほとんどの男子たちにさっと視線をそらされてしまいました。
えっと、そんなにあたしに見られるのはイヤなんでしょうか?
「俺がやる!」
そんな中、一人の男子が手を挙げました。
あれ? この人って確かあたしが火属性の演習を見学していたときに怒ってきた人、ですよね?
あれれ? でもそれ以外にもどこかで声を聞いたような……?
「あら、マリウス様。やってくださるの?」
「ああ。この班ならば俺かクリステア子爵令嬢であるあなたがやるべきだ。ならば、俺がやる」
「そうですわね。それならば、わたくしはマリウス様にお任せしたいと思いますわ」
……あの怒ってきた人、貴族だったんですね。
「異議無いです」
「マリウスさん、よろしくお願いします」
あ、もうみんなこの人にお願いする感じみたいです。
「ローザさん、あなたはマリウス様でいいかしら?」
「え? あ、はい」
この状況で断るなんてできっこありません。
こうしてあたしはリリアちゃんもヴィーシャさんもレジーナさんもいない班で、魔物討伐演習に参加することとなったのでした。
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次回更新は通常どおり、2022/05/21 (土) 20:00 を予定しております。
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学園祭も終わり、冬が近づいてきました。あれからレジーナさんが取り計らってくれたみたいで、クラスの女子たちとも少しずつですけどお話ができるようになってきました。
男子たちは……えっと、はい。よくじろじろ見られています。でもあたしが視線を向けるとさっと目をそらされるので、結局お話はしていません。
それとですね。なんだか最近、教室の外でもずっと誰かに見られている気がするんです。だから、最近はなるべく一人にならないようにしています。
バラサさんに階段から突き落とされたこともありますからね。ちゃんと用心することにしたんです。
そんなわけで、今も一人にはならずにリリアちゃんとヴィーシャさんと並んで座って、教室に先生が入ってくるのを待っています。
えへへ、これは前からずっと一緒ですけどね。
そんなことを考えていると、ようやくゲラシム先生が教室に入ってきました。
「諸君、揃っているかね?」
良く通る声でそう言うと、コツコツと革靴で床を鳴らして教壇の前にやってきました。
「さて諸君。これまでの学園生活はどうだったかな?」
そう言って教室全体を見回しました。
「学びを得た者もいるだろう。逆に物足りないと感じた者もいるだろう。あるいは力不足を痛感した者もいるだろう」
ゲラシム先生はコツコツと教壇の上を歩きます。
「そして! 諸君も知ってのとおり、この学園を去ったものもいる」
これはたぶん、バラサさんのことだと思います。
「そんな諸君に最初の試練だ」
ゲラシム先生は鋭い目つきで私たちをじっと見てきます。
「再来週、諸君には魔物討伐演習として森に出てもらう。期間は三日間だ」
ゲラシム先生の言葉に教室が少しざわめきました。
「魔物など見たことがないという諸君が大半だろう。だが、魔物は現実に存在する脅威だ。栄えある魔法学園の一員である以上、魔物の脅威から目を背けることは許されん」
ゲラシム先生は再びコツコツと教壇の上を歩きます。
「諸君は何を求めて魔法学園に入学したのか? それは人それぞれだろう。だが魔法学園の一員である以上、力なき者を守ることは責務だ! そのためにも、魔物の脅威は排除しなければならない!」
ゲラシム先生の力強い言葉に思わず聞き入ってしまいます。
「諸君はこれまで魔術を学んできた。学んだ成果を存分に発揮し、見事乗り越えてくれたまえ」
そう言うとゲラシム先生は教壇の前に戻りました。
「さて、諸君には三つの班に分かれて行動してもらう。班分けは原則としてくじ引きで決めるが、偏りを減らすために成績と属性を考慮して班分けを決定する。これから呼ばれるものは別の班にするので、呼ばれたら前に出てきたまえ。レジーナ・マレスティカ君」
「はい」
いつもの席に座っていたレジーナさんが立ち上がって教壇に上がります。
「続いて、ローザ君」
「え? あ、はい」
ど、どうしてあたしなんでしょうか。
よく分かりませんけど、呼ばれたので前に出ます。
「最後に、リリア君」
「はい」
え? リリアちゃんもですか?
そんな! リリアちゃんと一緒が良かったです。
「レジーナ君については諸君も実力を知っているな。そしてローザ君とリリア君についてだが、二人は諸君も知ってのとおり光属性の使い手だ。彼女たちがいる班は怪我の治療がその場で行えてしまう。そんな二人のどちらかがレジーナ君の班に入った場合、演習の目的を達成できない可能性が高い。よって二人には、レジーナ君とは別の班に入ってもらうこととした」
ゲラシム先生が意図を説明してくれますが、あたしはお話ができる人と一緒がいいです。
「それではまずは女子生徒の諸君、くじを引いてくれたまえ」
そういうとゲラシム先生は中の見えない袋を取り出しました。
するとクラスの女子たちが続々と前にやってきて、袋の中から札を引いてきます。どうやら札に番号が書いてあるようで、一番がレジーナさん、二番があたし、三番がリリアちゃんの班になるようです。
やがてヴィーシャさんの順番になりました。ヴィーシャさんは袋の中に手を入れ、札を引きます。
お願いします! どうか二番を!
心の中でそう願いましたが、札を確認したヴィーシャさんはあたしのほうにごめんねと仕草だけで謝るとレジーナさんのところに行ってしまいました。
ああ、残念です。仲のいい人が一人もいない班で大丈夫なんでしょうか?
そうこうしている間に女子たち全員くじを引き終わりました。どうやら女子の人数が偏らないようにしていたようで、あたしの班には女子が二人割り振られました。
一人は話したことがある人で、レジーナさんといつも一緒にいるロクサーナさんです。たしか、クリステア子爵家のお嬢様だったはずです。
もう一人は話したことがないですけど、たしかベティーナさんという平民の人だったと思います。
「続いて火属性の男子生徒の諸君、くじを引いてくれたまえ」
どうやら属性の偏りも無くすつもりみたいです。男子たちが次々と引いていき、水、風、土と属性ごとに引いて、班分けが決まりました。
「それでは各般の班長を決めてくれたまえ」
ゲラシム先生の言葉にあたしは班の人たちのほうを確認しますが、ほとんどの男子たちにさっと視線をそらされてしまいました。
えっと、そんなにあたしに見られるのはイヤなんでしょうか?
「俺がやる!」
そんな中、一人の男子が手を挙げました。
あれ? この人って確かあたしが火属性の演習を見学していたときに怒ってきた人、ですよね?
あれれ? でもそれ以外にもどこかで声を聞いたような……?
「あら、マリウス様。やってくださるの?」
「ああ。この班ならば俺かクリステア子爵令嬢であるあなたがやるべきだ。ならば、俺がやる」
「そうですわね。それならば、わたくしはマリウス様にお任せしたいと思いますわ」
……あの怒ってきた人、貴族だったんですね。
「異議無いです」
「マリウスさん、よろしくお願いします」
あ、もうみんなこの人にお願いする感じみたいです。
「ローザさん、あなたはマリウス様でいいかしら?」
「え? あ、はい」
この状況で断るなんてできっこありません。
こうしてあたしはリリアちゃんもヴィーシャさんもレジーナさんもいない班で、魔物討伐演習に参加することとなったのでした。
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次回更新は通常どおり、2022/05/21 (土) 20:00 を予定しております。
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