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第四章
第四章第62話 また魔物が襲ってきました
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それからしばらくして、ようやくゴブリンが出てこなくなりました。
ふう。これで全部駆除できたでしょうか?
「ミャッ!」
「ピピッ!」
「え?」
ユキとピーちゃんが突然警戒し始めました。
どうしたんでしょう?
キョロキョロとあたりを見回してみます。
えっと、ゴブリンは……いませんね。
……あれ? なんだかあそこの茂みが動いたような?
「ミャー!」
「ピッ! ピピーッ!」
ユキとピーちゃんはあちこちを見ながら警戒しています。
え? これって……あ! 茂みの中からあたしの背丈くらいある大きなオオカミが姿を現しました。
……あれ? なんだか見覚えがあります。
あれってもしかして、授業で習ったマーダーウルフじゃないでしょうか?
たしか群れで人間を襲う魔物で、その姿を見たときにはもう囲まれているって習いました。
ということは、もうあたしたち、取り囲まれているんですよね。
なら、先手必勝です!
狙いをつけて……えい!
えっ!? 嘘!?
あのマーダーウルフ、魔力弾を撃ったのを見てから体を捻って直撃を避けました。眉間を狙ったのに、顔の横にかすっただけになっています。
すると、マーダーウルフはあたしのほうに走り始めました。しかも真っすぐに向かってくるんじゃなくて、斜めに走ってきます。
これじゃあ狙いが付けられないじゃないですか!
えっと、ど、どうすれば……。
「ピピッ!」
ピーちゃんに引っ張られて後ろを見ると、なんと後ろからは三匹のマーダーウルフが来ています。
さらに周りを見ると、なんと左右からも二匹ずつマーダーウルフが来ているじゃないですか!
しかもどのマーダーウルフも斜めに走っていて、ぐるぐるとあたしの周りを回るように走りながら少しずつ距離を詰めてきます。
これじゃあ狙いが……。
「ピッ!」
「ミャッ!」
「ピピッ、ピッ」
「ミャー」
困っていると、ユキがあたしの前に出てきました。
「ユキ?」
「ミャー!」
ユキの体が淡い光を放ち始めました。そして……。
ユキの周りの地面が氷になりました。まるで鏡のようにつるつるの氷です。しかもその範囲はどんどん広がっていって、あっという間にマーダーウルフが走っている地面も氷になりました。
あ……。
なんと走っていたマーダーウルフたちが滑って転んだじゃないですか!
「ピッ! ピピッ!」
「え? あ! い、今がチャンスですね。えい!」
あたしは転んでもがいているマーダーウルフに次々と魔力弾を撃ち込んでいきます。
マーダーウルフたちもすぐに立ち上がりますが、それまでに四匹のマーダーウルフに魔力弾を直撃させることができました。
二匹は多分急所に当たっていそうです。もう二匹もよろめいていますから、そんなに速くは走って来られないはずです。
残りは、えっと……四匹ですね。
「グルルルル」
ううん。あいつら、まだまだやる気みたいです。
群れを半分やっつけたんですから、もうあたしを食べるのは諦めてくれませんか?
「グルルルル」
だ、ダメですか……。
マーダーウルフたちは何回か地面を踏みしめると、また走りだしました。
……今度は転ばないでちゃんと走っています。ただ、さっきみたいに斜めに走るんじゃなくて、あたしのほうに向かって突っ込んできます。
これなら!
あたしは狙いをつけ、魔力弾を撃ちます。
あっ! また避けられた!
なら、もう一回、いえ、もっと速い魔力弾をイメージして……えい! 高速魔力弾!
やりました。直撃です。
えっと、はい。じゃあ、あとはこのイメージで高速魔力弾を……えい!
命中しました。
あと二匹です。
「ミャー!」
ユキがあたしのうしろ回り、大きな声で鳴きました。思わず振り返ると、ユキがものすごい数の尖った氷をマーダーウルフに向けて飛ばしています。
マーダーウルフは避けようとしたようですが、広がって飛んでいく氷はマーダーウルフに次々と突き刺さります。
うぇぇ。なんだかすごいことになりました。
って、あれ? あと一匹はどこに?
キョロキョロと見回してみますが、姿がありません。
えっと、もしかして逃げたんでしょうか?
そう思って少し気を緩めた瞬間、ピーちゃんが鋭い声で鳴きながらあたしを強く横に引っ張りました。
「ピーッ!」
「えっ?」
あたしはそのまま尻もちをついてしまいました。すると一瞬遅れてものすごい速さでマーダーウルフがあたしの立っていた場所を通過していきます。
えっ?
マーダーウルフは空中で器用に体を捻り、あたしのほうをギロリと睨みました。
こ、怖い……。
そして着地して、あたしのほうに方向転換――
「あ……」
滑って転んで、そのままスケートをするみたいに滑っていきます。
えっと……。
「ピピッ」
「あ、そうですね。えい!」
あたしは高速魔力弾で滑っていくマーダーウルフを撃ち抜きました。
えっと、これで全部やっつけました……よね?
いえ、でも、もしかしたらまだどこかに隠れているかもしれません。
あたしはキョロキョロとあたりを見回してみます。
ふう。マーダーウルフの姿はありません。
全部やっつけた……んですよね?
でも、まだいるかもしれません。
緊張しながら周りをキョロキョロと見回していると、なんとマーダーウルフが一匹、ゆっくりと飛びながらこちらに向かって来るのを見つけました。
……えっ!? マーダーウルフって、空を飛ぶんですか!?
================
次回更新は通常どおり、2024/02/10 (土) 18:00 を予定しております。
ふう。これで全部駆除できたでしょうか?
「ミャッ!」
「ピピッ!」
「え?」
ユキとピーちゃんが突然警戒し始めました。
どうしたんでしょう?
キョロキョロとあたりを見回してみます。
えっと、ゴブリンは……いませんね。
……あれ? なんだかあそこの茂みが動いたような?
「ミャー!」
「ピッ! ピピーッ!」
ユキとピーちゃんはあちこちを見ながら警戒しています。
え? これって……あ! 茂みの中からあたしの背丈くらいある大きなオオカミが姿を現しました。
……あれ? なんだか見覚えがあります。
あれってもしかして、授業で習ったマーダーウルフじゃないでしょうか?
たしか群れで人間を襲う魔物で、その姿を見たときにはもう囲まれているって習いました。
ということは、もうあたしたち、取り囲まれているんですよね。
なら、先手必勝です!
狙いをつけて……えい!
えっ!? 嘘!?
あのマーダーウルフ、魔力弾を撃ったのを見てから体を捻って直撃を避けました。眉間を狙ったのに、顔の横にかすっただけになっています。
すると、マーダーウルフはあたしのほうに走り始めました。しかも真っすぐに向かってくるんじゃなくて、斜めに走ってきます。
これじゃあ狙いが付けられないじゃないですか!
えっと、ど、どうすれば……。
「ピピッ!」
ピーちゃんに引っ張られて後ろを見ると、なんと後ろからは三匹のマーダーウルフが来ています。
さらに周りを見ると、なんと左右からも二匹ずつマーダーウルフが来ているじゃないですか!
しかもどのマーダーウルフも斜めに走っていて、ぐるぐるとあたしの周りを回るように走りながら少しずつ距離を詰めてきます。
これじゃあ狙いが……。
「ピッ!」
「ミャッ!」
「ピピッ、ピッ」
「ミャー」
困っていると、ユキがあたしの前に出てきました。
「ユキ?」
「ミャー!」
ユキの体が淡い光を放ち始めました。そして……。
ユキの周りの地面が氷になりました。まるで鏡のようにつるつるの氷です。しかもその範囲はどんどん広がっていって、あっという間にマーダーウルフが走っている地面も氷になりました。
あ……。
なんと走っていたマーダーウルフたちが滑って転んだじゃないですか!
「ピッ! ピピッ!」
「え? あ! い、今がチャンスですね。えい!」
あたしは転んでもがいているマーダーウルフに次々と魔力弾を撃ち込んでいきます。
マーダーウルフたちもすぐに立ち上がりますが、それまでに四匹のマーダーウルフに魔力弾を直撃させることができました。
二匹は多分急所に当たっていそうです。もう二匹もよろめいていますから、そんなに速くは走って来られないはずです。
残りは、えっと……四匹ですね。
「グルルルル」
ううん。あいつら、まだまだやる気みたいです。
群れを半分やっつけたんですから、もうあたしを食べるのは諦めてくれませんか?
「グルルルル」
だ、ダメですか……。
マーダーウルフたちは何回か地面を踏みしめると、また走りだしました。
……今度は転ばないでちゃんと走っています。ただ、さっきみたいに斜めに走るんじゃなくて、あたしのほうに向かって突っ込んできます。
これなら!
あたしは狙いをつけ、魔力弾を撃ちます。
あっ! また避けられた!
なら、もう一回、いえ、もっと速い魔力弾をイメージして……えい! 高速魔力弾!
やりました。直撃です。
えっと、はい。じゃあ、あとはこのイメージで高速魔力弾を……えい!
命中しました。
あと二匹です。
「ミャー!」
ユキがあたしのうしろ回り、大きな声で鳴きました。思わず振り返ると、ユキがものすごい数の尖った氷をマーダーウルフに向けて飛ばしています。
マーダーウルフは避けようとしたようですが、広がって飛んでいく氷はマーダーウルフに次々と突き刺さります。
うぇぇ。なんだかすごいことになりました。
って、あれ? あと一匹はどこに?
キョロキョロと見回してみますが、姿がありません。
えっと、もしかして逃げたんでしょうか?
そう思って少し気を緩めた瞬間、ピーちゃんが鋭い声で鳴きながらあたしを強く横に引っ張りました。
「ピーッ!」
「えっ?」
あたしはそのまま尻もちをついてしまいました。すると一瞬遅れてものすごい速さでマーダーウルフがあたしの立っていた場所を通過していきます。
えっ?
マーダーウルフは空中で器用に体を捻り、あたしのほうをギロリと睨みました。
こ、怖い……。
そして着地して、あたしのほうに方向転換――
「あ……」
滑って転んで、そのままスケートをするみたいに滑っていきます。
えっと……。
「ピピッ」
「あ、そうですね。えい!」
あたしは高速魔力弾で滑っていくマーダーウルフを撃ち抜きました。
えっと、これで全部やっつけました……よね?
いえ、でも、もしかしたらまだどこかに隠れているかもしれません。
あたしはキョロキョロとあたりを見回してみます。
ふう。マーダーウルフの姿はありません。
全部やっつけた……んですよね?
でも、まだいるかもしれません。
緊張しながら周りをキョロキョロと見回していると、なんとマーダーウルフが一匹、ゆっくりと飛びながらこちらに向かって来るのを見つけました。
……えっ!? マーダーウルフって、空を飛ぶんですか!?
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