少年刑事レオンの冒険──犯罪者を出し抜け!

作家志望の怠惰な学生

文字の大きさ
10 / 35
ジェームズトンプソンと深紅の男

完璧な女性との出会い──そして戦闘再び。

しおりを挟む
「失礼しますカーン教授。私は刑事のトンプソン、彼は助手のペレスです」

 ジェームズは愛想のかけらもなく淡々と言い、礼をした。慌てて俺も頭を下げようとしたが、ややタイミングがずれてしまった。

「よしてよぉ、ジェームズ。私たちの他に誰もいないんだから、普通に接してちょうだい」
「うん?」

 拍子抜けして、疑問の声が出てしまった。

「あなた助手をとったんだ。ホントに人付き合いが上手くなったのね」
「──ああ、おかげさまでな」

 状況が一向に理解できなかった──ひょっとして、二人は兄弟だったのか? たとえそうだったとしても、彼のような不愛想な男が、女性に慕われているなんて信じがたい。

「疑問に思うだろうが、何も言うな」

 そう耳打ちされたが、意味もなく動揺していた俺は過呼吸気味になり、つばを飲み込んだ。

「隠さなくたっていいでしょ?」

 彼女は椅子から立ち上がり、愛らしく笑ってこちらを向いた。

「ジェームズの助手になるなんて──彼に脅されでもしたの?」
「えっと──いいえ、かな」

 かすれた声でそう返事した。

「ジェームズがどこまで言ったか知らないけど、わたしはフェリシア。ジェームズとは孤児院で一緒だったんだ」

 孤児院──俺の人生で常連の単語だ。類は友を呼ぶとはこのことか。

「頭が凝り固まってる護衛の人もいなくなったことだし、ちょっと息抜きにみんなで散歩しない?」
「ハッ、ダメに決まっているだろう」

 ジェームズが嫌みたらしい表情で言う。

「ねぇ、わたしを監禁する気?」
「捉えようによっては、そうかもしれないな。守るためだ──我慢しろ」
「大丈夫。俺たちが守ります!」

 緊張しつつ、つい思い切ったことを俺は言ってしまった。ジェームズはあからさまに鼻で笑い、威圧的に注意してきた。

「君は、明らかにこの任務の危険性を舐めている」

 加えて説教しようとするが、教授がそれを遮り、柔らかい笑顔で「ありがとうね、レオン」と返してくれた。俺の胸は今までになく高鳴っていて、心臓が口から飛び出そうだ。 

 背後で、ジェームズが教授──いやフェリシアに「何を考えてるんだ。彼の機嫌を取ってもいいことはないぞ」と小声で言うのが聞こえた。が、振り返ると彼女は真にきょとんとしていて、「えぇ? そんなつもりじゃないけど」と言ってジェームズをいぶかしげに見ていた。言葉に出来ない、すごく爽快な気分でフェリシアをエスコートした。

 彼女は純粋無垢な笑みを浮かべ、クラゲのようにゆったり歩きながら自分のことや、廊下にある肖像画について説明してくれた。

「みんな、私の家族。父親は所属していた研究所の爆発で死んだ」
「それは──気の毒だ」

 気の利いたセリフが思いつかない。俺は一瞬ためらった後、思い切って彼女の手を握ってみた。フェリシアは感慨に浸っているようで、握り返されたりはしなかったが、拒否反応は起きていない。

「わたしは母の手で育てられたんだ──数年前に亡くなっちゃったけど。今でも悲しい。わたしには表面上の友達はいても、相談できるような親友はいない。でも、研究をやってると、いくらか楽になるの」

 それを聞き、対して自分は──と考えてみると、自然と脳裏に彼が現れた。肌が濃く、根暗で意地が悪いように見えて、すごく優しい、仲間想いの──

「──俺が親友になりますよ。親友がいるって、結構いいもんですよ」
「ありがと」

 俺はぎごちない笑顔で彼女と見合いながら歩みを進めた。堅物のジェームズは空気を無視し、「ここからは他の護衛がいる。敬語を使うんだ」と横から威圧的に言ってきた。
 



「リーパー、何か異常があったか?」
「いやぁ、林の中で、どうも不自然な音がするんだよ」
「なら、林に入って正体を確かめればいいだろう」
「いや、ちょっと慎重になって考えを──」
「まさか……怖がっているのか?」

 といった感じで、しばらく前から、ジェームズとリーパー刑事は無線でくだらない問答をしていた。

 俺は「親友」という存在について考えをめぐらし、護衛のこともすっかり忘れ、廊下をフラフラと歩いていた。そのせいで、ふいに窓が割れて何かが投げ込まれてきたとき、いち早く対応できなかった。

「催涙ガスだ!」

 ジェームズが叫んだ。そのタイミングでようやく目の前の事柄に注目した。しかし、いつのまにか辺りに充満していた煙のせいで、ジェームズと教授がどこにいるのか分からない。後ろで何か(おそらく「誰か」だ)が音を立て倒れた。弱く高い悲鳴がその後聞こえたので、フェリシアが襲われているのだろうと思った。だが俺はパニック状態にもかかわらず、声の方へ動くことができなかった。

 やがて煙が晴れてくると、ジェームズが覆面をした、いかにもワルという漢四人と格闘しているのが見えた。彼は素手で二人の漢の攻撃をはたいて交わし、他一人の顎を蹴りつけて仰け反らせて倒し、もう一人の顔面を鷲掴みにして持ち上げ、ぶん投げた。

 フェリシアは──ここにはいない。廊下の窓は開いていて、おそらくそこから残りの犯人は逃げたのだろうと思った。散乱しているとがった破片に気を付けながら、窓から頭を出し林を隅々まで見回した。ひときわ暗い木の陰に、二人の男に気絶させられ、連れていかれる教授が見えた。

「刑事さん、教授が誘拐される──捕まえて!」

 そう叫んでみたが、あろうことか外には誰もいなかった。みんな、廊下での異変を察知して建物に入りジェームズの応援に向かったのだろう──

 俺は考えもないまま、屋根をそろそろと渡っていた。足元のタイルは古く、大きな動きをするとそれがずれて足を滑らせそうだ。自暴自棄になって林を見下ろし、塀へと急ぐ犯人をにらみつけた。

〈さあ、飛びこみだ──〉




 あとがき

 到着早々、アクションが始まりました!ちょっと展開が早すぎるでしょうか。戦闘描写に関してもご意見いただけると嬉しいです!いいねもお待ちしております!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...