厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
50 / 196

50:遠くから。 side:ロブ

しおりを挟む
 


 ピクニックをする湖畔では声が聞こえない程度の距離で護衛をしていた。
 第二王子殿下自身がお強いから、護衛はごく少数で。

 ――――あぁ、また押し倒している。

 敷物の上でいちゃいちゃしていたはずの殿下が、お嬢を抱えて別荘の方に移動を始めたので慌てて追いかけた。
 別荘内に入ると、殿下が辺りを見回し、ギロリと俺を睨んできた。

「こちらから呼ぶまで誰も近づくな。護衛は部屋の外にロブ一人でいい」

 ――――そういう事か。



「…………さ、ま……んぁ…………」
「ミラベル……な……」
「んっ」
 
「はぅ……んっ、あっ!」

「んんっ! ひぁぁぁっ!」
 
 ボソボソと漏れ聞こえる第二王子殿下の声と、淫らで刺激的なお嬢の嬌声。
 五年間、思い続けた相手の、あでやかな声。
 聞こえてしまうから、想像してしまう。

 頬を染め恥ずかしがる顔、潤んだ瞳、柔らかそうな唇、あのたわわな胸が揺れるさま、括れた腰、形のいい臀部、秘められた場所。
 
 想像してしまうと、もう駄目だった。
 中心が熱くなり、いきつ。
 自分の熱棒をお嬢の狭く閉じられた秘所に無理矢理ねじ込む想像をした。
 括れた腰が反り返り、突き立てられた猛りを必死に飲み込む姿が容易に妄想出来る。
 なぜなら、何年も前からそうしたいと願っていたから。

 殿下がお嬢をイかせる声を聞きながら、入りたい、出したい、と訴える下半身の怒張を無視して、永遠とも思える時間をドアの前で過ごした。
 唇を噛み、剣の柄を握りしめて耐え続けた。



 二人が部屋に籠もって何時間か経った頃、呼び出しベルが鳴ったのでドアを開けると、髪を少し乱し、倦怠感を乗せた艶っぽい顔をしたお嬢が目に飛び込んできた。

 ――――あぁ、あれを聞かせ、これを見せたかったのか。

 食事や清掃の指示の後、お嬢が入浴している間に殿下が二人で話したいと言ってきた。

「私はな、お前を排除したい」
「……」

 ――――普通に話せるのかよ。

「だが、ミラベルはお前を気に入っている。気に入っているが、愛や恋の対象ではないのは解っているか?」
「はい」

 解っている。
 解りきっているから、ずっと横に居続ける事しか出来なかった。
 お嬢に愛されているこの人には解らないだろう。
 締め付けられる喉、破裂しそうなほどの心臓、どす黒いものが渦巻く腹、行き場が無くて痛む心。
 この身が焦がれるほどに想っても、絶対に手に入らない人。

 羨ましさと悔しさがぐちゃぐちゃに絡み合う。
 ギリリと手を握り込むと、爪が掌に食い込み、心の痛さを緩和してくれたような気がした。

懸想けそうするなとは言わない。だが、己の内に秘め律しろ。他の者たちと同じ距離を保て。それが出来ないのであれば、私の持てる力を全て使い、二度と会えぬようにする」
「それをお嬢……アップルビー伯爵令嬢が知ったら、どうなるんでしょうね?」

 我ながら最低な事を言っているなと思った。
 王子殿下を脅したんだ、殺されても文句は言えない状況だろう。
 だが、殿下は怒るでもなく、ただ穏やかな顔をしていた。

「言いたければ言えばいい」
「それほど自信がおありですか」
「いや、全くない」
 
 ――――ないのかよ!

「例え嫌われようと、憎まれようと、恨まれようと、絶対に逃さない。ミラベルになら殺されて構わない」
「……承知しました」

 お嬢、貴女の愛した人は、とんでもなく粘着質で、かなり危険な思想の持ち主ですよ。
 でも、きっとお嬢は受け入れてしまうんでしょうね。
 殿下が道を踏み外しそうになったら、いつもの調子で怒って、ぐいぐい引っ張って、自分の道に引きずり込んで、晴れ渡るような笑顔で一緒に進もうとするんでしょうね。
 俺はそれを遠くから見つめる事しか出来なくなったけれど、お嬢の幸せを願っています。

 ――――お嬢、貴女を愛しています。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

処理中です...