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「ハハ、面白え」
「ちょ、アンタ何笑ってんのよ?」
肩の上にいるイチジクを、ファオの肩に預けると、アヒロは剣を構えて静かに目を閉じる。
「アヒロ、何で目なんか瞑って――」
「ちょっと黙っててくれ」
「え……!」
「頼む。奴を倒すために、静かにしてくれ」
アヒロは感覚を研ぎ澄ます。視覚では相手をなかなか捉えられない。なら残された感覚の一つ――聴覚をフル活動するだけ。
ファオも押し黙り、静けさが広がっていく。
数秒後――カッと目を開いたアヒロは、ファオの背後へ素早く移動すると、
「そこだぁぁぁぁっ!」
横薙ぎに剣を一閃。ナイスタイミングで沼から沼蛇が飛び出てきて、見事に頭を落とすことに成功した。
沼蛇の身体がピクピク動き、次第に消失していく。
「うし! 勝ち!」
「……アンタ、一体何したの?」
「あ? 何って、こう耳を澄ませて沼から響く音を聞いたんだよ」
「なるほど。そういう方法があったわね。けどよく思いついたわよ」
「師匠にこんな感じの修練してもらってたからな。ん~と…………お、あったあった」
沼の中に手を入れて探って、《魂晶》を見つけ出した。
「やろうか?」
「う……そんな泥だらけのやつを持ちたくないわ」
「袋に入れるだけなんだし、別にいいと思うんだけどなぁ」
やっぱり女はめんどくせえと思いつつも、自分が腰から下げている袋に《魂晶》を入れた。
「あ、階段があるわよ」
「よっし、んじゃさっさと上に……って、あれ?」
「どうしたのよ?」
「……あれ」
そう指を差す先には、一人の人物が倒れていた。
階段の近くはもう沼ではなく、普通の地面になっており、そこに人らしきものが俯せに倒れている。
慌てて駆けつけてみると、体中が傷だらけで、激しく肩を上下させている男がいた。
「おい、どうしたんだ?」
「うっぐ……き、君たち……は……っ!?」
痛みに顔を歪めながらも、男はアヒロの顔を見て驚いたようなホッとしたような顔をする。
「……アヒロ・エーカー……ッ」
「あれ? オッチャン、オレのこと知ってんの?」
「この人……そうだわ! 五階層でパオルさんと一緒にいた人よ!」
「へ? そうなんか、オッチャン?」
「ぐぅ……っ」
「ちょっと、その前に回復薬を!」
「あっと、そうだったそうだった!」
腰に携帯しているバッグから青い小瓶を取り出して、その中に入っている液体を、彼に飲ませた。
「んぐんぐんぐ…………ふぅ」
乱れていた息も少し安らいでいき、青ざめていた顔も少し良くなってきている。
「オッチャン、パオルの仲間か?」
「……ふぅ。そうだよ。俺は彼と一緒のギルド――〝戦々強々〟のメンバーだ」
「けど何でこんなとこに倒れてたんだ?」
「それは……くそっ! アイツら!」
いきなり地面を力一杯叩き始める男に、目を丸くしてしまう。
「い、一体何があったの?」
ファオが恐る恐る尋ねてみると、彼は歯を食いしばりながらも答えてくれた。
「……実はな――――襲われたんだよ」
「襲われた? モンスターに? けどここらへんのモンスターだったら、パオルさんなら大丈夫でしょ?」
何といっても、彼は十三階まで登った人物なのだから。仲間も一緒なら、なおさら八階層や九階層で何かがあるとは思えない。
しかし彼から発せられた次の言葉に衝撃を受ける。
「…………モンスターじゃねえんだ」
「……! モンスターじゃ……ないですって?」
「ああ……アイツらは俺たちと同じ〝登塔者〟だ! しかも中層レベルのなっ!」
「ちょ、アンタ何笑ってんのよ?」
肩の上にいるイチジクを、ファオの肩に預けると、アヒロは剣を構えて静かに目を閉じる。
「アヒロ、何で目なんか瞑って――」
「ちょっと黙っててくれ」
「え……!」
「頼む。奴を倒すために、静かにしてくれ」
アヒロは感覚を研ぎ澄ます。視覚では相手をなかなか捉えられない。なら残された感覚の一つ――聴覚をフル活動するだけ。
ファオも押し黙り、静けさが広がっていく。
数秒後――カッと目を開いたアヒロは、ファオの背後へ素早く移動すると、
「そこだぁぁぁぁっ!」
横薙ぎに剣を一閃。ナイスタイミングで沼から沼蛇が飛び出てきて、見事に頭を落とすことに成功した。
沼蛇の身体がピクピク動き、次第に消失していく。
「うし! 勝ち!」
「……アンタ、一体何したの?」
「あ? 何って、こう耳を澄ませて沼から響く音を聞いたんだよ」
「なるほど。そういう方法があったわね。けどよく思いついたわよ」
「師匠にこんな感じの修練してもらってたからな。ん~と…………お、あったあった」
沼の中に手を入れて探って、《魂晶》を見つけ出した。
「やろうか?」
「う……そんな泥だらけのやつを持ちたくないわ」
「袋に入れるだけなんだし、別にいいと思うんだけどなぁ」
やっぱり女はめんどくせえと思いつつも、自分が腰から下げている袋に《魂晶》を入れた。
「あ、階段があるわよ」
「よっし、んじゃさっさと上に……って、あれ?」
「どうしたのよ?」
「……あれ」
そう指を差す先には、一人の人物が倒れていた。
階段の近くはもう沼ではなく、普通の地面になっており、そこに人らしきものが俯せに倒れている。
慌てて駆けつけてみると、体中が傷だらけで、激しく肩を上下させている男がいた。
「おい、どうしたんだ?」
「うっぐ……き、君たち……は……っ!?」
痛みに顔を歪めながらも、男はアヒロの顔を見て驚いたようなホッとしたような顔をする。
「……アヒロ・エーカー……ッ」
「あれ? オッチャン、オレのこと知ってんの?」
「この人……そうだわ! 五階層でパオルさんと一緒にいた人よ!」
「へ? そうなんか、オッチャン?」
「ぐぅ……っ」
「ちょっと、その前に回復薬を!」
「あっと、そうだったそうだった!」
腰に携帯しているバッグから青い小瓶を取り出して、その中に入っている液体を、彼に飲ませた。
「んぐんぐんぐ…………ふぅ」
乱れていた息も少し安らいでいき、青ざめていた顔も少し良くなってきている。
「オッチャン、パオルの仲間か?」
「……ふぅ。そうだよ。俺は彼と一緒のギルド――〝戦々強々〟のメンバーだ」
「けど何でこんなとこに倒れてたんだ?」
「それは……くそっ! アイツら!」
いきなり地面を力一杯叩き始める男に、目を丸くしてしまう。
「い、一体何があったの?」
ファオが恐る恐る尋ねてみると、彼は歯を食いしばりながらも答えてくれた。
「……実はな――――襲われたんだよ」
「襲われた? モンスターに? けどここらへんのモンスターだったら、パオルさんなら大丈夫でしょ?」
何といっても、彼は十三階まで登った人物なのだから。仲間も一緒なら、なおさら八階層や九階層で何かがあるとは思えない。
しかし彼から発せられた次の言葉に衝撃を受ける。
「…………モンスターじゃねえんだ」
「……! モンスターじゃ……ないですって?」
「ああ……アイツらは俺たちと同じ〝登塔者〟だ! しかも中層レベルのなっ!」
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